司法試験・予備試験・ロー入試に向けた会社法

司法試験上位合格者が会社法についてわかりやすく解説します

法学部・ロースクール時代に買ってよかったもの8選(教科書等以外)

 

 

こんにちは、コポローです。

新学期シーズンになりました!

そこで今回は、私が法学部・ロースクール時代に買ってよかったものを8つ厳選して紹介します!!

何か少しでも参考になればと思います。

   

(1)スタンディングデスク

法律学の勉強をしていると、どうしても長時間座りがちですが、座りすぎで寿命が縮むというエビデンスがたくさんあります。

わたしもそれを知って、スタンディングデスクを購入し、ときどき立って勉強するようになりました。

今では、立って勉強するほうが集中できるので、基本は立って勉強や仕事をし、疲れたら座るようにしています。

 

私が使用している物です(簡単に昇降できます)↓

 

 アマゾンでは他にもいろいろあるので、比較検討してみてください。

 

(2)オカムラの椅子

昔は安物の椅子を使っていましたが、ロースクール時代に腰が痛くなってきたので、思い切って高品質なオカムラの椅子を買いました。

椅子は姿勢に影響し、疲れやすさにも大きく関係するので、とても重要です。

最近、在宅時間が非常に長くなり、座る時間も多くなりましたが、椅子のおかげで快適です。

少し高くても、投資だと思ってよいものを購入することをお勧めします!

椅子などの家具は長期間使うので、十分ペイしますよ!

 

私が使っているシリーズです↓

(当時としては超思い切った投資でしたが買ってよかったです)

 

 

 

(3)ルンバ

ロースクール時代は忙しく、掃除する時間的余裕がありませんでした。

しかし、喘息持ちなので、掃除はどうしてもかかせません。そこで、ここでも思い切って、お掃除ロボットのルンバを購入してみました。

その結果、掃除の時間が大きく削減され、時間の余裕ができました。

ルンバは、今までで買ったなかで最もコスパの良い買い物であったといっても過言ではありません。

 

私が使っているものです↓

 

 

(4)ボイスレコーダー

法学部やロースクールの授業では、教授の話すスピードが速く、ノートを授業時間内にとりきれません。また、集中力が途切れて聞き逃してしまうことも多くありました。

そこで、ボイスレコーダーで授業を録音して、復習に役立てていました(京大法学部・京大ローではボイスレコーダー所持率が高かったです)。

私は、ボイスレコーダーを使うようになってから、成績が急激に伸びました。

通学中や散歩中も聴けるという点も、便利です

 

私はオリンパス製を使っていました↓

 

 機種によっては、音楽のデータも取り込んで再生できます。

 

 

(5)常備おやつ(チョコレート効果&ミックスナッツ)

勉強をしていると、おなかがすきますよね。

私は健康を非常に重視しているので、健康的なおやつを常備していました。

こちらの記事でも紹介しているとおり、おすすめは高カカオチョコレートとミックスナッツです。

kaishahou.hatenablog.jp

 

私は下記のものを常備しています(笑)

 

チョコレート効果は、72%がほろ苦でおいしいです。慣れると86%の強苦もおいしく感じます。95%は、非常に苦いので、初心者にはおすすめしません。

 

(6)マルチビタミン&ミネラルのサプリ

健康つながりで、おすすめなのが、マルチビタミン&ミネラルのサプリです。

これをとるようになってから、風邪などで体調を崩さないようになりました。 

体調を崩すと、しんどいですし、学習にも大ブレーキなので、体調管理はしっかりしましょう!

 

いろいろなブランドがありますが、私はネイチャーメイドを今も愛用しています。 

 

 

 

(7)ステッパー

法学部・ロースクール時代は、どうしても運動不足気味になってしまいました。

そこで、ステッパーを買って、勉強しながら運動できるようにしてみました。

意外と、なかなか良い運動になりますよ。

また、これを使うと血行が良くなり、学習効果も高まるように感じます。

 

今もこれ(↓)を踏みながら本記事を書いています(笑) 

 

 

 

(8)ノースフェイスのリュック

法学部生・ロースクール生は、教科書や六法で荷物が多くなりがちなので、持ち運び用のバッグ選びは重要です。

6年間いろいろなバッグを試したところ、ノースフェイスの四角いリュックが、収納しやすく、最も便利でした!

肩への負担も比較的少ないです。

 

カラーバリエーションも豊富です!

 

 

以上、私が買ってよかったもの8選でした。

少しでも参考になれば幸いです。

それではまた! 

 

   

勉強のためのシンプルな環境&習慣づくり(時間と意志力の節約)

 

 

こんにちは、コポローです。

 

 

法律学の勉強には、多くの時間と意志力(脳の認知リソース)が必要です。

しかし、悲しいことに、現代の社会は、時間と意志力を奪うものにあふれています。

 

そこで、環境や生活のあり方をシンプルにして、時間と意志力(脳の認知資源)の消耗を避け、それらをガッツリ勉強に充てることが超重要です!!

 

今回は、私が実践してきたことも含め、勉強のための時間と意志力(認知資源)を確保するためのシンプルな生活術と環境設計について紹介します。

 

※下記記事が好評だったので、姉妹編として、本記事を書きました!

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

今回のキーワードは時間と認知リソースの節約です。

ぜひ、実際に試してみて、よいと思ったものは習慣化していってください

 

なお、本記事の執筆にあたっては、何冊かの本を参考にしています。本ブログ末尾に掲載していますので、興味のある方は一読してみてください。各種試験だけでなく、今後の人生においても大変役立つと思います(現に、私は現在の仕事において大いに役に立っています)。

   

 (1)モノの断捨離

①まず、モノが多いと、脳の認知リソースが消費されます(シンプルなお部屋・環境であるほど脳は疲れません)。

 

たとえば、服が多いと毎日着る服に迷ってしまい、意志力(認知資源)を浪費してしまいます(スティーブ・ジョブズやマークザッカーバーグなどの一流の経営者は着る服を固定化し、意志力の消耗を抑えていたことで有名です)。

 

②また、モノが多いと探し物によって浪費される時間も多くなります。

 

③さらに、必要以上に買い物をする人は、その分、買い物の時間も余計にかかってしまいます。

 

④なお、必要以上に買い物が多いと、お金も減ります。

お金が減って生活の不安が出てくると、脳の認知資源がさらに消費されてしまいます。

 

※実際に、金銭的ストレスにより、IQを下げるという実験結果が複数存在します。

 

お金の余裕は、脳や心の余裕につながっています。

脳をしっかり働かせる観点からは、一定程度の貯蓄をするなどして、金銭的なストレスをなくしましょう。

 

 

 

そこで、具体的には、1)不要なものは捨てる、2)不要なものは買わないことを心がけましょう。

 

1)は全部やろうとすると莫大な時間がかかるので、日々少しずつコツコツ続けましょう(勉強の休憩がてら毎日少しずつ行うのもおすすめです)。

 

まずは、お財布の中身、引き出しなど小さい範囲から断捨離を始めると、すぐに達成感を感じられるのでおすすめです!!

 

 

2)に関しては、いますぐに始められます。

モノを1つ買ったら、1つ捨てる(さらには2つ捨てる)などのルール(1イン1アウトルール、1イン2アウトルール等)を設けるのも非常におすすめです。

この作戦は、とくに衣類や靴に有効です。


 

 

 

(2)デジタル面での断捨離

 断捨離は、スマホやパソコンなどのデジタル機器においても、超重要です。

そこで、不要なアプリ、写真、データ、文書ファイルなどは削除しましょう。

 

必要なデータもフォルダに整理するなどして、分かりやすく管理しましょう。

これらを行えば、ホーム画面・デスクトップ画面、フォルダの中身がすっきりし脳の認知リソースの節約になりますし、スマホやパソコンのスピードも上がって快適です!!


 

(3)情報・ニュースの断捨離

デジタルの断捨離にも関連しますが、テレビのニュースやニュースアプリの情報は思っている以上に必要ではありません。なくても生活に大きな支障はありません。

 

ニュースを見る時間は無駄ですし、認知資源の浪費にもつながります。

とくに、朝は、睡眠後の整理された脳に、不要な情報を入れることにもなる(その結果、午前中の効率的な勉強が阻害される)ので、朝にニュースを見ることはやめましょう!

 

また、寝る前は、記憶のゴールデンタイムなので、ニュースではなく、内容を記憶したい本などを読みましょう!!

 
 

 

 

(4)ルーティーンを決める

日々の生活での意思決定を減らすと、意志力(認知資源)が節約され、そのぶん勉強に向けることができます。

そこで、日々の生活はルーティーン化・習慣化することが重要です。

 

とくに、認知資源の節約という観点から、朝の行動はとても重要なので、まずは朝の行動のルーティーン化から始めるとよいです

 

・私の朝のルーティーンを以下に挙げておきます(何か参考になれば幸いです)。

①いつも決まった時間に起きる

②カーテンを開けて朝日を浴びる(重要。朝の光で脳は目覚め、体内時計もリセットされます)

③口をゆすぎ、常温の水を飲む

④決まった朝食メニュー(バナナ・ヨーグルト・ナッツ・野菜ジュース)を食べる

⑤着替え(服は数着でほぼ固定)

⑥朝散歩(保育園への子供の送迎)

⑦コーヒーを淹れる(※起床直後のコーヒーは脳によくないため、起床90分後以降に飲みます)

⑧仕事(在宅勤務の場合)に取り掛かる(※集中力を要する重要な仕事からとりかかります。メールチェックなどの非集中仕事は、脳が疲れてきた午後に行います。)

 

ルーティーンをこなしてから勉強をするようにすると、しだいに脳の回路が形成され、ルーティーン後には集中して勉強を始めることができるようになります。

 

 

今回の記事は以上ですが、このほかにも、時間と意志力(認知資源)を節約するためにできることは多々ありますので、本記事は随時更新していきたいと思います。

 本記事が少しでもみなさんの参考になれば幸いです!

それではまた!!

【今回の参考文献(いずれも超おすすめの本です)】

 ミニマリストの入門書として最適です。

 

 

ミニマリストYouTuberの書籍です。

考え方の参考になります。

 

 

デジタル断捨離についてはこちらがおすすめです。  

 

 

 

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勉強の継続力を高める方法

 

こんにちは、コポローです。

「継続は力なり」といいますが、各種試験のための学習も長期間にわたるため「継続力」が極めて重要です

 

今日は、私が実践してきたものを中心に、継続力を高める方法を紹介します。

なお、今回の参考文献は本記事の末尾に掲載していますので、興味のある方はご参照ください。 

 

 

 

①生活リズムをみださない

まず、重要なのは、規則正しい生活を送ることです。

寝不足などで生活が乱れると、意志力が弱まり、勉強の継続が難しくなります(勉強できたとしても集中力は低下します)。

生活リズムの乱れにより、風邪をひくなど体調まで悪化すれば、さらに勉強の継続は困難になります。

なので、まずは、規則正しい健康的な生活を心がけてましょう!!

 

参考となる記事を掲載しておきます。

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②やる気がなくてもやる!少しでもいいからやる!とくかく手を付けてみる!

受験勉強は長期間に及ぶため、やる気が出ない日も当然あります。私も週に1~2日くらいありました。

そんなときでも、まずは、勉強に取り掛かることが重要です。

少しでもいいので、とにかく勉強にとりかかりましょう!!

教科書を1ページ読むとか、短答の問題を1問解くとか、判例百選を1つつぶすとかどんな小さなことでもいいので、手を付けましょう!

やる気は後から出てくることも多々あります。

 

 

③記録をつける

カレンダーや手帳・日記などをつかって、日々の勉強の記録をつけましょう。

勉強できたかどうかや、勉強時間などの簡単な記録で十分です。とにかく継続できることが大事です。

これらの記録が蓄積されていくことが徐々に快感になってきます。

いまはスマホアプリなどでも便利なものがありますので、いろいろ試して、各自でやりやすい方法を見つけてみてください。

例えば、「○時間(比較的達成しやすい時間)以上、勉強した日にはカレンダーに大きくバツ印とつける」といったものがシンプルでやりやすいです。バツが鎖のようにつながっていくと、「途切れさせたくない」という心理がはたらき、モチベーションがアップします。

もし、達成できない日が出てきたら、その原因(体調不良・急用etc)を考えて、今後の改善・対策につなげていきましょう!

 

 

④周りに宣言する

人間は弱い生き物で、自分に甘くなりがちです。

そこで、周りの目を利用することが効果的になります。

家族や友人に「毎日○時間勉強する」などと宣言しましょう。

SNSで宣言したり、(③の観点も含めて)日々の学習時間を発信したりするのも効果的です!(一緒に努力できる友人・よきライバルも見つかるかもしれません)

 

 

⑤習慣化する

多少苦しいことも、習慣化されれば、自然に、容易にできるようになります。

というか、就寝前の歯磨きなどのように「やらないことが気落ち悪く」すらなります。

 

習慣化するための方法3選

 

①勉強の場所や時間帯をなるべく固定して、脳に「この場所・この時間では勉強する」ということを覚えさせましょう!

 

②勉強に取り掛かりやすい環境を作りましょう(翌日朝、勉強したい教材を机の上に置いて寝るなど)

 

③誘惑の多い状況には、なるべく身を置かないようにしましょう(マンガやゲームは捨てる・売る・押入れの奥へ片付ける、ゲームアプリや動画アプリは削除など)

 

 

参考となる記事を掲載しておきます 

kaishahou.hatenablog.jp

 

   

今回の記事は以上です。

「継続力の高め方」「よい習慣の作り方」といったテーマは私自身、非常に興味があるので、今後も勉強し、随時、本記事の内容をアップデートしたいと思います!

 

なお、今回の参考文献はこちらの2冊です。

試験勉強以外(ダイエットなど)においても役立ちます!!

 

 

今回の記事が少しでもみなさんの参考になれば幸いです。

それではまた!!

 

判例解説・最高裁令和3年7月19日(監査役・会計限定監査役の任務)

こんにちは、コポローです。

本ブログでは、「最近の会社法関係の重要判例について、学習者向けに要点を分かりやすく解説する」記事を連載しています。

最近の予備試験や司法試験では、裁判例を題材(元ネタ)の一部とした出題が散見されます。

そこで、重要判例解説や商事法務掲載の解説などを参考に、各種試験との関係で重要な裁判例をピックアップし、要点を分かりやすく解説していきたいと思います。

「最近の判例」の基準は、今回から、会社法判例百選第4版に掲載されていない新判例となります。

 

なお、会社法判例百選第3版から第4版までの重要判例については下記記事にまとめています。

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

今回の判例は、最判令和3年7月19日会計限定監査役は、計算書類及びその附属明細書の監査を行うに当たり、当該計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認しさえすれば、常にその任務を尽くしたといえるものではないとされた事例)です。

 

(事案の概要)

①X社では、経理担当職員Aが10年近くにわたり同社の銀行預金から金銭を横領していた(以下「本件各横領行為」という)。

②X社は、会計限定監査役であったY(公認会計士・税理士)に対して、在任中の毎年の監査において預金の実在性確認を怠ったとして、会社法423条1項に基づき損害賠償請求をした。

③第1審(千葉地判平成31年2月21日金判1579号29頁)は、Yおよびその補助者がAに銀行預金の残高証明書の原本等の提示を求めることが容易であるにもかかわらず、これを怠り、漫然と残高証明書の写しを実査する方法のみで預金の実在性を監査してきたことから任務懈怠を認め、請求を一部認容した。

④他方、控訴審(東京高判令和元年8月21日金判1579号18頁)は、次のように述べて、Yの任務懈怠を否定した。

「会計限定監査役が……監査を行う場合においては,会計帳簿の信頼性欠如が会計限定監査役に容易に判明可能であったなどの特段の事情のない限り,会社(取締役又はその指示を受けた使用人)作成の会計帳簿(会社法432条1項)の記載内容を信頼して,会社作成の貸借対照表損益計算書その他の計算関係書類等を監査すれば足りる。会計限定監査役は,前記のような特段の事情がないときには,会社作成の会計帳簿に不適正な記載があることを,会計帳簿の裏付資料(証憑)を直接確認するなどして積極的に調査発見すべき義務を負うものではない。」

 

(判旨)

最高裁は、次のように述べて、原判決を破棄差戻しとした。

監査役設置会社(会計限定監査役を置く株式会社を含む。)において,監査役は,計算書類等につき,これに表示された情報と表示すべき情報との合致の程度を確かめるなどして監査を行い,会社の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示しているかどうかについての意見等を内容とする監査報告を作成しなければならないとされている(会社法436条1項,会社計算規則121条2項,122条1項2号)。この監査は,取締役等から独立した地位にある監査役に担わせることによって,会社の財産及び損益の状況に関する情報を提供する役割を果たす計算書類等につき(会社法437条,440条,442条参照),上記情報が適正に表示されていることを一定の範囲で担保し,その信頼性を高めるために実施されるものと解される。

  そうすると,計算書類等が各事業年度に係る会計帳簿に基づき作成されるものであり(会社計算規則59条3項),会計帳簿は取締役等の責任の下で正確に作成されるべきものであるとはいえ(会社法432条1項参照),監査役は,会計帳簿の内容が正確であることを当然の前提として計算書類等の監査を行ってよいものではない。監査役は,会計帳簿が信頼性を欠くものであることが明らかでなくとも,計算書類等が会社の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示しているかどうかを確認するため,会計帳簿の作成状況等につき取締役等に報告を求め,又はその基礎資料を確かめるなどすべき場合があるというべきである。そして,会計限定監査役にも,取締役等に対して会計に関する報告を求め,会社の財産の状況等を調査する権限が与えられていること(会社法389条4項,5項)などに照らせば,以上のことは会計限定監査役についても異なるものではない。

  そうすると,会計限定監査役は,計算書類等の監査を行うに当たり,会計帳簿が信頼性を欠くものであることが明らかでない場合であっても,計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認しさえすれば,常にその任務を尽くしたといえるものではない。

 これと異なる見解に立って,Yはその任務を怠ってはいないとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,Yが任務を怠ったと認められるか否かについては,X社における本件口座に係る預金の重要性の程度,その管理状況等の諸事情に照らしてYが適切な方法により監査を行ったといえるか否かにつき更に審理を尽くして判断する必要があり,また,任務を怠ったと認められる場合にはそのことと相当因果関係のある損害の有無等についても審理をする必要があるから,本件を原審に差し戻すこととする。」

 

 裁判官草野耕一の補足意見

「私は法廷意見の理由及び結論に賛成であるが,審理を原審に差し戻した趣旨につき思うところを述べておきたい。

  差戻審がYが任務を怠ったか否かを検討するに当たっては,次の点に留意すべきと考える。

 まず,会計限定監査役は,公認会計士又は監査法人であることが会社法上求められていない以上,Yが公認会計士資格を有していたとしても,X社の監査に当たりYにその専門的知見に基づく公認会計士法2条1項に規定する監査を実施すべき義務があったとは解し得ないという点である(会社計算規則121条2項が同法2条1項に規定する監査以外の手続による監査を容認しているのはこの趣旨によるものであろう。)。次に,監査役の職務は法定のものである以上,会社と監査役の間において監査役の責任を加重する旨の特段の合意が認定される場合は格別,そうでない限り,監査役の属性によって監査役の職務内容が変わるものではないという点である。Yの具体的任務を検討するに当たっては,上記の各点を踏まえ,本件口座の実際の残高と会計帳簿上の残高の相違を発見し得たと思われる具体的行為(例えば,本件口座がインターネット口座であることに照らせば,Yが本件口座の残高の推移記録を示したインターネット上の映像の閲覧を要求することが考えられる。なお,会計限定監査役にはその要求を行う権限が与えられているように思われる(会社法389条4項2号,同法施行規則226条22号参照)。)を想定し,本件口座の管理状況についてX社から受けていた報告内容等の諸事情に照らして,当該行為を行うことが通常の会計限定監査役に対して合理的に期待できるものか否かを見極めた上で判断すべきであると思われる。

  なお,平成19年5月期の監査の際にYに提供された本件口座の残高証明書は本件従業員によりカラーコピーで偽造されたものであり,平成20年5月期以後の監査の際にYに提供された残高証明書は本件従業員により白黒コピーで偽造された写しであったとの原審認定を前提とすると,平成20年5月期以後の監査の際にYは本件口座の残高証明書の原本等の提示を求めるべきであったといえるか否かについても検討を要すると思われるが,その際には,平成19年5月期の監査の際に提供された残高証明書につき,Yがこれをどのようなものとして認識したか,これと平成20年5月期以後の監査の際に提供された上記写しとの形状・様式・内容の相違の有無・程度,Yの会計管理システムの仕組みや態勢,上記のカラーコピーの残高証明書と同様の形状・様式・内容を備えた残高証明書の作成の難易等を考慮して,上記の提示の求めが本件口座の実際の残高と会計帳簿上の残高の相違を発見し得たと思われる行為といえるか否かについて慎重に判断する必要があると思われる。」

 

(解説)

原判決は、監査役が計算書類等の監査を行う際に、特に疑わしい事情のない限り、会計帳簿の記載内容が正確であることを信頼してよいとして、いわゆる信頼の原則・信頼の権利を妥当させました。

 

しかし、最高裁も述べるように、法律の条文では、

監査役は,計算書類等につき,これに表示された情報と表示すべき情報との合致の程度を確かめるなどして監査を行い,会社の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示しているかどうかについての意見等を内容とする監査報告を作成しなければならないとされている(会社法436条1項,会社計算規則121条2項,122条1項2号)」

とされています。

 

こうした法律の条文と原判決の上記判示は整合的でなく、原判決に対しては強い批判がありました(弥永真生・ジュリ1541号3頁等)。よって、最高裁が原判決を破棄した点は妥当と思われます(弥永真生・ジュリ1563号3頁)。

 

ただ、監査役が具体的にどのような調査をすべきかは、事案ごとに異なるため、難しい問題です(最高裁もさらなる審理が必要であるとして、事件を差し戻しました)。今後の議論の発展が待たれます。

なお、草野裁判官(もともと企業法務に詳しい弁護士)の補足意見は、監査役・会計限定監査役の任務懈怠を判断するに際しての考慮要素などを詳細に述べており、参考になります。

 

 

 

(参考文献)

弥永真生「本判決評釈」ジュリスト1563号2頁

 

企業法務に詳しい川井弁護士のコメントも参考になります。

会計限定監査役の任務懈怠責任に関する最高裁判決(最判令和3年7月19日)について、第1審、控訴審、最高裁判決を読んでのコメント - 弁護士川井信之の企業法務(ビジネス・ロー)ノート (livedoor.jp)

 

今回の記事は以上です。

少しでもみなさんの参考になれば幸いです!!

それではまた!!!

  

 

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令和元年会社法改正に関する知識をアップデートしたい方にはこちらがおすすめです↓

 


 

集中力を高めて勉強するための生活習慣(食事・睡眠・運動)

 

 

こんにちは、コポローです。

勉強は集中力をもって効率よく行うことが重要です。集中力のない状態でだらだら長時間勉強していても、身になりませんし、余暇や睡眠のための時間も減ってしまいます

 

今回は、私が実践してきたことも含め、集中力を高めて勉強するための生活習慣について解説したいと思います。ぜひ、実際に試してみて、良いものは習慣化していってください

   

 

なお、本記事の執筆にあたっては、何冊かの本を参考にしています。本ブログ末尾に掲載していますので、興味のある方は一読してみてください。各種試験だけでなく、今後の人生においても大変役立つと思います(現に、私は現在の仕事において大いに役に立っています)。

 

1 食事

①脳に良い食品を増やす

私たちの体は食べたものでできており、食事の内容で体調や脳のパフォーマンスも左右されます。

 

脳に良い食べ物とは、具体的には、以下の通りです。

全粒穀物(玄米など。≒茶色い淡水化物)

野菜(特に、葉物野菜)

果物(リンゴ、ミカン、キウイなど)

魚介類(特に、サバやイワシなどの青魚)

鶏肉

豆類(とくに大豆。納豆は最高の健康食品)

ベリー類(冷凍のものをヨーグルトに入れると手軽でおいしい)

ナッツ類(くるみ、アーモンドなど。無塩がよい)

オリーブオイル

高カカオチョコ(チョコレート効果

 

→ おやつは高カカオチョコとミックスナッツ(無塩・無添加)がおすすめです。

私は下記のものを常備しています(笑)

 

チョコレート効果は、72%がほろ苦でおいしいです。慣れると86%の強苦もおいしく感じます。だが、95%、てめえはだめだ。は、非常に苦いので、初心者にはおすすめしません。

 

 

②脳に悪い食品を減らす

脳に悪い食品は以下の通りです。

バター・マーガリ

ファストフード

お菓子・菓子パン

加工肉(ハム・ソーセージ等)

揚げ物

アルコール

これらの食品は(良質なバターを除き)健康にも悪いので、控えましょう。

  

 

③カフェインの効果的な利用

コーヒーや緑茶などに含まれるカフェインは、眠気を覚まし、注意力や集中力を高めてくれます。

ただし、とりすぎるとソワソワ落ち着かなくなったり、焦りを感じる原因にもなるので注意が必要です。

また、起床後90分以内はコーヒーを控えましょう(覚醒ホルモンであるコルチゾールの分泌をさまたげるためです)。

 

パソコンや参考書に向かって目の神経ばかり酷使しているときには、嗅覚や味覚をつかうことが気分転換にもなり、コーヒーブレイク後の勉強の効率を上げる効果も期待できます。

空腹時のブラックコーヒーは胃に負担がかかるため、ミルクを入れて胃への負担を軽減しましょう(脳の活動に必要なエネルギーや勉強中のイライラに効果的なカルシウムも一緒に摂取できます)

 

   

2 睡眠

睡眠は健康にとって非常に重要で、日中の集中力も大きく左右します。

また、暗記(記憶)の観点からも、睡眠をしっかりとった方が、記憶が整理・定着してよいことが各種実験で判明しています。

 

とはいえ、私も、試験前は不安で夜遅くまで勉強しがちでした(とくに学部時代)。

法科大学院のころからは、試験前はしっかり寝るようになり、成績も良くなりました。こうした実体験からも、しっかりと睡眠をとった方が試験の成績が良くなると思います。

 

また、睡眠不足だと、風邪をひくなど、体調が悪化しやすくなります(そして、風邪などによる頭痛・鼻水・寒気・だるさetcは、ダイレクトに勉強の障害となります)。

 

ぜひ「寝る勇気」をもって、しっかり睡眠をとってください。

 

睡眠中に、脳や体の疲労回復、記憶の整理・定着がしっかりなされるためには、睡眠の量と質が大事です。

 

量については、個人差があり、多くの人は7~9時間必要です。

 

また、質については、「良質な」睡眠であればあるほど良いです。「良質な」睡眠をとるためには、下記のことを心がけてください。

①朝にカーテンを開けてしっかり朝日を浴びる

②15時以降はコーヒーなどのカフェインを飲まない

③夕食は20時までに済ませる

④寝る前に強い光(明るい蛍光灯、コンビニの光など)を避ける、特に寝る1時間前からはパソコンやスマホをなるべく見ない(見るとしても夜間モードにしたり、ブルーライトカット眼鏡をつける)

⑤アルコールは睡眠の「質」を下げる ので控える

⑥就寝・起床時間は一定に。休日も!(寝だめは逆効果)

⑦部屋はできるだけ暗くして寝る(真っ暗がベスト。難しければアイマスクをしましょう)

⑧部屋の温度や湿度を適切に設定する(とくに湿度が低いと風邪をひきやすいです。加湿器がなければ、洗濯物や濡れタオルを干すなどしましょう)温度は少し涼しい程度が眠りやすくてよいとされています

⑨音が気になる場合は耳栓をしましょう

⑩寝る前は興奮系の娯楽(ゲーム、マンガ、アニメなど)を避ける

 

   

 

3 運動

適度な運動は、勉強にプラスの効果が大きいことが各種実験でわかっています。

運動の種類には、大きく分けて、①有酸素運動、②筋トレ、③ストレッチ・ヨガの3つがあります。

 

有酸素運動

有酸素運動は、健康と脳のはたらきに非常に良い効果があります。

とくに朝のウォーキングがおススメで、通学等の機会を利用して、歩きましょう(15分くらいで十分です)。

また、お昼や夕方に休憩がてら散歩やジョギングをするのもおススメです。 リフレッシュ効果が高いです。

ウォーキングやジョギングの際に、自然に触れると、より効果的です。公園や河川敷などに行ってみるとよいでしょう。

 

②筋トレ

また、筋トレも、自信や自己肯定感を高め、ストレスに強くなるので有益です。短時間でスッキリ気分転換できる点もおすすめポイントです。勉強の合間にスクワットや腕立てをしてみましょう!

 

③ストレッチ・ヨガ

ストレッチやヨガは筋肉の凝りをほぐすため、リラックス効果が高く、メンタルの安定にも役立ちます。

目を閉じて瞑想しながら行うとより効果的です。

勉強の合間のほか、寝る前におすすめです。

 

 

今回の記事は以上です。

各項目は小さいことかもしれませんが、食事・睡眠・運動は相互に作用しており、ひとつ生活習慣を良いものにするだけで、波及効果が大きいです。

例えば、健康に良い食事は、睡眠にもよく、メンタルを整え、運動するモチベーションを高める(運動によりさらに睡眠の質が上がり、メンタルも安定する・・・)などです。

 

本記事で書いたことを少しでもぜひ習慣として生活に取り入れてもらえればと思います。

それではまた! 

 

【参考文献(いずれも超おすすめの本です)】

 エビデンスに基づいた「集中力にまつわるライフハック」がまとめられています。

 

 

 

 

健康な人生を送るための方法(エビデンスに基づくもの)がたくさん書かれています。

 

 

【厳選】商法(会社法)のおすすめ教科書・演習書・判例集リスト

 

こんにちは、コポローです。

今回は商法のおすすめの教科書・演習書・判例集を厳選して紹介します。

 

〇最もおすすめの会社法の教科書です。

わかりやすい上に、執筆者は司法試験・予備試験の考査委員です。 

 

 

 

〇中級者~上級者のための辞書です。実務に出てからも重宝します。

 

 

 〇田中亘先生の教科書(中級者以上におすすめ)。先端的です。

 

 

 〇令和元年会社法改正の理解に最適です。

 

 

〇商法総則・商行為の教科書としてはこちらがおすすめ。平易で分かりやすいです。

 

 

 

〇中堅研究者が会社法判例について的確に解説しています。

 

 

 

〇演習書として最適です。重要論点の多くがカバーできます。

 

なお、解答例が載ってないのが弱点ですが、本ブログにて解答例を紹介しています↓↓

kaishahou.hatenablog.jp

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

〇商法全体の重要判例がカバーできます。

掲載判例が多く、あてはめまで載っているものが多いです。

 

 

〇定番の判例集です。会社法判例百選は解説も良質との定評があります。

 

2021年9月に第4版が出ました(5年ごとに改訂されます)。

 

なお、百選第3版以降の重要判例は、下記記事でまとめています。

よろしければ参考にしてみてください。

kaishahou.hatenablog.jp

 

今回の記事は以上です。

本記事は随時更新していく予定です。

それではまた!

 

   

会社法判例百選第4版で追加された判例15件のまとめ

 

こんにちは、コポローです。

会社法判例百選第4版が刊行されました!

第3版から5年が経っており、15件の新判例が追加されました(判例の差替えを含みます)。

 

 

 

そこで、今回は、第3版から追加された判例15件を簡単に紹介します。

追加された判例の多くは、本ブログで過去に解説しておりますので、その解説記事も併せて紹介させていただきます。

本ブログでまだ解説していない判例で各種試験において重要なものについては、随時、解説していきたいと思います。

 

   

 

第4版で新たに追加された判例は下記のとおりです。

 

28事件「株主提案権の濫用」

東京高判平成27年5月19日

(※第3版31事件・東京高判平成24年5月31日から差替え)

解説は酒井太郎(一橋大教授)

 

→本判例HOYA事件として有名な判例で、株主提案権の行使が権利濫用に当たると認定した初めての裁判例です。

事例判断で、一般論は述べていないため、本ブログでも解説しておりません。百選4版の解説でも、令和元年会社法改正の際の議論を含め、学説の議論について紙面が割かれています。

 

なお、令和元年会社法改正における株主提案権制度の改正については下記記事で解説しています。

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

35事件「議案を否決する株主総会決議の取消し」

最判平成28年3月4日

解説は高橋陽一(京都大准教授)

 

→本判決については本ブログでも解説しています。

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

41事件「株主総会決議により代表取締役を選定する旨の定款の効力」

最決平成29年2月21日

解説は三宅新(北海道大准教授)

 

→本判例についても本ブログで解説しています。

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

78事件「退社した無限責任社員の負担すべき損失の額」

最判令和元年12月24日

解説は荒達也(九州大准教授)

 

持分会社は試験にほとんど出ないため、本ブログでは解説していません。

本判決の要点は以下の通りです。

持分会社の社員が退社する場合、持分の計算が行われ(会社法611条2項)、退社する社員が積極持分(プラスの持分)を有する場合は払戻しを受けることができる(同条1項)。他方、退社する社員が消極持分(マイナスの持分)を有する無限責任社員である場合は、明文の定めはないが、通説によれば、会社にこれを払い込む債務を負うと解されている。本判決は、最高裁として初めて、通説と同旨の判示をした。

 

念のため、最高裁の判決文も掲載しておきます↓↓

無限責任社員合資会社を退社した場合には,退社の時における当該会社の財産の状況に従って当該社員と当該会社との間の計算がされ(会社法611条2項),その結果,当該社員が負担すべき損失の額が当該社員の出資の価額を下回るときには,当該社員は,その持分の払戻しを受けることができる(同条1項)。一方,上記計算がされた結果,当該社員が負担すべき損失の額が当該社員の出資の価額を超えるときには,定款に別段の定めがあるなどの特段の事情のない限り,当該社員は,当該会社に対してその超過額を支払わなければならないと解するのが相当である。このように解することが,合資会社の設立及び存続のために無限責任社員の存在が必要とされていること(同法576条3項,638条2項2号,639条2項),各社員の出資の価額に応じた割合等により損益を各社員に分配するものとされていること(同法622条)などの合資会社の制度の仕組みに沿い,合資会社の社員間の公平にもかなうというべきである。」

 

 

83事件「株式売渡請求にかかる価格決定申立てができる株主の範囲」

最決平成29年8月30日

解説は伊藤吉洋(関西大学准教授)

 

→本判例は本ブログで解説しております。

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

90事件「吸収分割承継会社が承継する債務の範囲」

最決平成29年12月19日

解説は原弘明(関西大学教授)

 

→本判例も下記記事で解説しております。

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

93事件「株式会社の解散判決における業務執行上の著しい難局」

東京地判平成28年2月1日

(※第3版95事件・東京地判平成元年7月18日から差替え)

解説は宍戸善一(武蔵野大教授)

 

→公刊判例集未掲載の判例であることもあり、本ブログでは紹介していません。(試験にも出にくいテーマです。)

 

 

Appendix2事件「振替株式の共同相続」

最決平成31年1月23日

解説は脇田将典(金沢大学講師)

 

→主として、民事執行法の問題が扱われており、本ブログでは紹介しませんでした。

評釈も、民訴学者の者が多いです。

判例は、次の4点を判示しています。

①振替株式は相続開始とともに当然に相続人に承継される。

②口座開設者としての地位も相続人に相続される。

③よって名義が異なっていても振替株式の共有持分を差押さえることは可能。

④当該共有持分の譲渡命令も可能。

 

 

Appendix9事件「株主総会への『出席』と書面投票の効力、株主総会決議の成立時期」

東京高判令和元年10月17日

解説は行岡睦彦(神戸大准教授)

 

→本判例については下記記事で解説しています。

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

Appendix14事件「役員選任決議取消しの訴え――役員退任の場合に訴えの利益が認められる場合」

最判令和2年9月3日

解説は行岡睦彦(神戸大准教授)

 

→本判例についても本ブログで解説しています。

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

Appendix16事件「正当理由のない取締役の解任と損害賠償」

東京地判平成27年6月29日

解説は南健悟(日本大学教授)

 

→本判例は本ブログで紹介していません。

判例は、任期を短縮する定款変更により任期満了で退任する取締役に会社法339条2項の類推適用を認めたものです。

最近の類似判例として、名古屋地判令和元年10月31日金判1588号36頁があります(解説として、伊藤雄司・法教478号138頁、仲卓真・私法判例リマークス62号88頁参照)。

 

 

Appendix17事件「特別利害関係人が参加した決議の効力」

最判平成28年1月22日

解説は温笑侗(東北大学教授)

 

→漁業協同組合の事件ですが、会社法369条2項(利害関係取締役の議決権排除規定)と同様の規定の解釈が問題となっており、会社法369条2項にもその射程が及ぶと考えられています。

本判決は、特別利害関係を有する理事が加わった理事会決議であっても、当該理事を除外してもなお必要な多数が存するときは当該決議の効力は否定されないと判示しています。

 

判決文の要旨は下記の通りです。

水産業協同組合法37条2項が,漁業協同組合の理事会の議決について特別の利害関係を有する理事が議決に加わることはできない旨を定めているのは,理事会の議決の公正を図り,漁業協同組合の利益を保護するためであると解されるから,漁業協同組合の理事会において,議決について特別の利害関係を有する理事が議決権を行使した場合であっても,その議決権の行使により議決の結果に変動が生ずることがないときは,そのことをもって,議決の効力が失われるものではないというべきである。

 そうすると,漁業協同組合の理事会の議決が,当該議決について特別の利害関係を有する理事が加わってされたものであっても,当該理事を除外してもなお議決の成立に必要な多数が存するときは,その効力は否定されるものではないと解するのが相当である最高裁昭和54年2月23日第二小法廷判決・民集33巻1号125頁参照)。」

 

 

Appendix33事件「資本減少における債権者を害するおそれ」

阪高判平成29年4月27日

解説は温笑侗(東北大学教授)

 

→本判例については下記記事で解説しています。

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

Appendix34事件「新株予約権社債の有利発行」

東京高判令和元年7月17日

(※第3版A32事件・東京地決平成19年11月12日から差替え)

解説は永江亘(南山大学准教授)

 

新株予約権社債の価値について、新株予約権の価値と社債の価値とに分離して評価するという、従来の裁判例(3版A32事件参照)を踏襲するものです。

また、ブックビルディングを経たことをもって「客観的な資料に基づく一応合理的な算定方法」による決定であると認定した点も注目されます。

 

 

Appendix35事件「社債に対する利息制限法の適用」

最判令和3年1月26日

解説は永江亘(南山大学准教授)

 

→本判例については下記記事で解説しています。

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

Appendix36事件「サムライ債の債券管理者の原告適格

最判平成28年6月2日

解説は行岡睦彦(神戸大学准教授)

 

→外国が日本で発行した円建て債券の債券管理会社が、当該債券の償還等請求訴訟において、任意的訴訟担当として原告適格を有することを認めた判例です。

基本的に民事訴訟法の問題なので本ブログでは解説していません。評釈類も民訴法学者によるものが多いです。

 

 

Appendix41事件「公募増資と不公正発行」

東京高決平成29年7月19日

解説は永江亘(南山大学准教授)

 

→出光興産事件です。本判例については下記記事で解説しています。

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

今回の記事は以上です。

百選第4版では、令和元年会社法改正や他の新しい裁判例も踏まえて解説もアップデートされていますので、購入をおすすめします!

 

 

 

 

※以下では、おまけとして、おすすめの会社法の教科書・演習書等を紹介します。

 

〇最もおすすめの教科書。わかりやすい上に、執筆者は司法試験・予備試験の考査委員。 

 

 

〇中級者~上級者のための辞書です。実務に出てからも重宝します。

 

 

 〇田中亘先生の教科書(中級者以上におすすめ)。先端的です。

 

 

 〇令和元年会社法改正の理解に最適です。

 

 

〇商法総則・商行為の教科書としてはこちらがおすすめ。平易で分かりやすいです。

 

 

〇中堅研究者が会社法判例について的確に解説しています。

 

 

〇演習書として最適です。重要論点の多くがカバーできます。

なお、解答例が載ってないのが弱点ですが、本ブログにて解答例を紹介しています↓↓

kaishahou.hatenablog.jp

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〇商法全体の重要判例がカバーできます。

掲載判例が多く、あてはめまで載っているものが多いです。

 

 

 

 

   

会社法事例演習教材(第3版)の解答例・第2部紛争予防編まとめ

 

 

こんにちは、コポローです。

京大をはじめとする一流ロースクールの授業で使われている演習書に『会社法例演習教材(第3版)』があります。

この演習本は、基本から応用まで、各種試験で問われる重要な論点について、網羅的に取り扱っており、非常におすすめの教材です。私も受験生時代とてもお世話になりました!私が上位合格できたのはこの本のおかげといっても過言ではありません。

 

ただ、この本は、解答例が掲載されていない点が大きな欠点で、自習用として使いにくくなっています。

そこで、本ブログでは、私が受験生時代に作成したノートをベースに、新しい判例・法改正にも対応した解答例を連載しました(今後も版の改訂はもちろん、新しい判例や法改正にも、記事の更新によって対応していきます)。

   

 

 

本記事は、読者の参照の便宜のために、第2部紛争予防編の記事をまとめたものです。

 

 

 

 

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第2部の解答例は以上です。

少しでも読者の方の参考になれば幸いです 。

それではまた!


第1部(紛争解決編)の解答例のまとめはこちらです↓

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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-4(設例4-3)株式併合と資本減少

dこんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第3版)Ⅱ-4(設例4-3)の解答例を紹介します。

テーマは、株式併合と資本減少です。

細かい点もありますが重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

   

 

Q1

会社法の下では、株式の消却は保有する自己株式についてのみ、認められている(178条1項)。

よって、本件では、まず、自己株式の取得が必要になる。

 

しかし、本問では、P社は経営不振になっており、自己株式の取得は分配可能額の範囲で行わなければならないという財源規制(461条1項2号・3号、2項)に違反する可能性がある。

資本金の額の減少により、分配可能額を作り出すことも考えられるが、多額の分配可能額を作り出すような資本金の額の減少には、債権者が異議を述べる可能性もある(会社法449条1項)。

よって、株式の消却は現実的ではなく、別の方法により発行株式済数を減らす必要がある。

 

※実際に、資本金の額の減少に債権者が異議を申し立てて、資本金の額の減少が債権者を害するおそれがあるか否かが争われた近時の裁判例として、阪高判平成29年4月27日判タ1446号142頁(会社法判例百選第4版A33事件)がある。

本判決の解説はこちら↓

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Q2

平成13年改正前商法では、額面株式制度があり、発行済株式総数と資本金の額との間には一定の連動関係があったが、平成13年商法改正で、額面株式制度は廃止され、現在では、発行済株式総数と資本金の額との関係は当然に連動したものとはなっていない。

したがって、発行済株式数を増減させたからといって、当然に資本金の額も増減するわけではない(各制度ごとに見ていく必要がある)。

 

募集株式の発行の場合、発行済株式総数が増加し、原則として、払込みまたは給付された財産の額だけ資本金の額が増加するが(445条1項)、2分の1を超えない額は資本金として計上せずに資本準備金として計上することができる(同条2項・3項)。

 

合併における存続会社の株式発行の場合、発行済株式総数が増加し、原則として、当該株式の時価に相当する額が資本金・資本準備金として計上される(445条5項、施行規則116条9号、計算規則35条・45~48条)。

これはパーチェス法という考え方に基づくものである。詳細は、詳しめの教科書(田中亘『会社法(第3版)』696頁、リーガルクエス会社法第4版430頁など)を参照。

 

株式分割の場合、発行済株式総数が増加し、資本金の額は増減しない(会社財産も増減しない)。

株式併合の場合、発行済株式総数が減少し、資本金の額は増減しない(会社財産も増減しない)。

 

Q3

 180条4項の場合を含め、一般に、株主総会で説明される理由に客観的な合理性がある必要性はないと解されている(内容の合理性・当否の判断は株主に委ねられている)。これは有利発行(199条3項)のときも同じである。

これに対して、理由の説明が全くない場合や、虚偽の事実が示された場合は、決議方法の法令違反として、株主総会決議の取消事由となる(831条1項3号)。

 

本問でどう考えるべきであるかは、微妙な問題である。

 本問では、資本金の額の減少を行うために株式数を減らす必要は法律上ないのに、誤った法解釈に基づいてそのような理由が説明されている。これをおよそ意味のある説明がされているとはいえないとして、説明がなかったものと評価するのであれば、上記のように取消事由となろう。

ただ、説明に客観的な合理性を欠く場合にすぎないとして、取消事由とならないとする評価もありうる。

 

Q4

資本金の額が減少すると、資本金は剰余金の控除項目であるので、分配可能額が増え、配当がしやすくなる。

したがって、株主は不利益を特に受けない(むしろ利益になる)。

 

Q5

 株式数が減少しても、会社財産が減少するわけではないので、株式数に比例して、一株の価値は高くなる。

よって、債権者との関係で、株主に不利益が生じるわけではない。

 

Q6

Q4・Q5でみたように、P社の再建策はP社株主の不利益とならないので、Q銀行の要望に沿ったものではない。 

それなのに、要望に沿ったものと誤解して、債務免除に応じると、Q銀行の取締役は善管注意義務違反となる可能性がある。

十分な資料を収集せず、経営判断の前提となる状況を正しく理解しないまま経営判断を行ったといえるのであれば、経営判断の過程に著しく不合理な点があるとして、経営判断原則を適用したとしても、善管注意義務違反が認められうる。

 

経営判断原則については、最判平成22年7月15日(会社法判例百選第4版48事件・第3版50事件)を参照。

 

設例4-3の解説は、以上です。

今回のテーマも、難解な論点なので、詳しめの教科書等でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

 

 

 

設例4-4の解説はこちらです↓

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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-4(設例4-2)種類株式と単元株制度

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第3版)Ⅱ-4(設例4-2)の解答例を紹介します。

テーマは、種類株式と単元株制度です。

重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

   

 

Q1

P社は非公開会社であるから、クラスa株式は譲渡制限付株式(107条1項1号参照)である(会社法2条5号の公開会社の定義を参照)。 

クラスb株式を上場する場合、クラスa株式と異なり、譲渡制限のない株式とする必要がある((1)・(2)の方法に共通して必要)。

 

(1)完全無議決権株式の発行による支配権の維持

Q2

115条に違反するため、そのような方法による発行はできない。

 

Q3

 クラスb株式を非参加的な優先株式とすればよい。非参加型にすれば、優先株式の株価は、普通株式の株価には連動せず、金利に連動する。

このような社債優先株式時価金利と優先配当金額によって決定される(Ⅱ-2(設例2-1前半)Q2の解答例を参照)。

よって、一株の払込金額を30万円程度としたければ、現在の金利の下で、そのようになるように優先配当金額を定めればよい。

 

クラスbの剰余金配当と残余財産分配は、クラスaの3倍にする旨を定款で定めればよい。議決権がないので、クラスaよりも少し安くなるが、理論上は、クラスbの株価はクラスaの3倍近くになる。 このような定めも、108条1項1号2号における、剰余金配当・残余財産分配についての異なる定めとして可能である。

 

Q4

Q3⇒のように クラスb株式を設計した場合、会社法115条の潜脱ではないかとの問題が生じる。

発行株式数の点では、クラスaもクラスbも1万株なので、形式上115条に違反しないが、出資額をみれば、議決権制限株式(クラスb)により議決権株式(クラスa)の3倍もの資金調達をしていることになるので、115条違反であるとする見解はありうる。

仮に、115条に違反しないとしても、取引所がこのような議決権制限株式の上場を認めない可能性もあり、最終的にAの希望が満たされるかは明らかでない。

 

(2)議決権に制限のない株式の発行による支配権の維持

Q5

一単元の株式数を種類ごとに決めることができる(188条3項)ので、普通株式には1株を1単元、優先株式には(例えば)10株を1単元と定めればよい。

そうすると、議決権は3000個となるので、Aらは全体の13分の9の議決権を有することになり、Aらの希望にかなう。

 

ただ、188条3項は、各種類の株式の市場価値に差がある場合のように、単元株式数を種類ごとに変えることに合理的なケースがあることから、導入された規定である。

たとえば、優先株が1万円、普通株式が1000円のときに、一株一議決権のままだと、出資額と議決権のバランスを欠くので、出資額と議決権のバランスをとるために、単元株制度を使って、優先株式を1株1単元、普通株式を10株1単元にすることで、議決権1個当たりの出資額が大きく異ならないようにすることが、188条3項の利用方法として想定されていた。

 

これとは反対に、本問のように、出資額当たりの議決権を種類株式間で異ならせるために、188条3項を使うことは、文言の上では排除されていないが、実質的には、会社法上許容されていない複数議決権株式を認めることと同じことになるため、違法ではないかという問題がある。

神田秀樹教授はこれを認めるが、異論があるところである。

もっとも、かりに、会社法上は違法とはいえないとしても、上記のような問題意識から、証券取引所がこのような株式の上場を認めない可能性もあり、最終的にAの希望が満たされるかは明らかでない。

 

設例4-2の解説は、以上です。

今回のテーマは、重要かつ難解な論点なので、詳しめの教科書でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

   

 

設例4-3の解説はこちらです

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-4(設例4-1)株式単位の引上げ

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第3版)Ⅱ-4(設例4-1)の解答例を紹介します。

テーマは、株式単位の引上げです。

細かい点もありますが、重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

   

Q1

株式単位の引き上げの方法としては、2つの方法がある。

①株式併合(180条以下)を利用する。

設例では、100株を1株に併合すれば、株式価値も100倍になり、1株10万円程度になる。

180条2項・309条2項4号に基づき、株式総会の特別決議が必要。その際に理由の説明も必要(180条3項)。

 

②単元株制度(188条以下)を使用して、100株を一単元とするように定款変更すればよい。

手続としては、定款変更のための株主総会特別決議が必要(188条1項、466条、309条2項11号)。また、190条により、取締役は単元株制度を必要とする理由を説明しなければならない。

 

P社は株券不発行会社である。

P社株式は上場されているとあるところ、上場企業の株券は電子化されており、すべて株券不発行会社となっている。その結果、株式の譲渡は、株式振替制度の下で、振替口座簿の記録によって行われる。

 

Q2

(a)株主総会特別決議のコスト

どちらの方法でも、株主総会の特別決議が必要となり、理由も説明しなければならないから、コストに違いはない。

 

(b)端数処理のコスト

株式併合では、端数が生じる。端数の合計数に相当する数の株式を競売して、その代金を端数に応じて分配する必要がある(235条1項)。

ただ、本件では、株式が上場されており、株式に市場価格があるため、市場価格で売却することや会社が買い取ることも可能(235条2項、234条2項3項)。

なお、端数が大量に生じる場合に、それをまとめて市場で売ると、株価が大きく下がる要因になる。

いずれにせよ、株式併合では、端数処理のコストが生じる。

 

他方、単元株制度を利用する場合、端数は生じず、端数処理のコストもかからない。ただし、単元未満株式の買取りに応じなければならないコストとはある。

 

 

(c) 通知・公告のコスト

株式併合では、181条で効力発生の2週間前までに株主への通知または公告が必要。

単元株制度の場合、株主への通知や公告は不要。

 

⇒株券発行会社であった場合

株式併合では、新しい株券と交換するため、株券提出手続が必要になり(219条1項2号)、これには大きなコストがかかる

単元株制度では、株券提出手続は不要。なので、コストは低い。

 

Q3

(a)株主総会の招集通知のコスト

株式併合→従来の100株未満の株主は、株主ではなくなる(端数は発生後ただちに金銭処理される)ので、この者に株主総会の招集通知を送ることは不要となり、コストが安くなる。

 

単元株制度→100株未満の株主は単元未満株主となり、議決権を有さない(189条1項)ので、招集通知は不要となる(298条2項括弧書き、299条1項)。よって、こちらでもコストが安くなる。

 

結論として、いずれにおいても、コストは同程度に軽減される。

 

(b)配当金の支払いコスト(振込手数料等)

株式併合→従来の100株未満の株主は、株主ではなくなる(前述のとおり、端数は発生後ただちに金銭処理される)ので、この者に配当を支払う必要はない。そのため、配当金の支払いのコストも安くなる。

 

 単元株制度→単元未満株主も剰余金配当請求権がある(189条2項6号。施行規則35条1項6号二により定款で制限することはできない)。

よって、単元未満株については、配当金の振込手数料等のコストが生じる。

 

結論として、株式併合においてのみ、コストが削減される。

 

Q4

(a)株主権

株式併合→端数は金銭処理されて、株主の地位を失う。よって、株主の利益に重大な影響を及ぼす。

 

単元株制度→単元未満株主は議決権とそれを前提とする共益権(※場合によっては株主優待をもらう権利も)を失うが、それ以外の権利は原則として認められている。

しかし、一定の範囲で定款自治により権利の制限ができる(189条2項各号の権利以外は定款で制限できる)。

 

(b)投下資本の回収

 

 株式併合→端数は発生すると直ちに金銭処理されるので(235条)、それにより(強制的にではなるが)投下資本の回収ができる。

 

 単元株制度→単元未満株式の譲渡はできるが、189条2項により、単元未満株式について名義書換請求権(133条1項)を奪うことができる(会社からすると、単元未満株式の譲渡がされるとコストがかかるので、制限したい)。そうすると、単元未満株式は事実上譲渡できなくなる。

 

そこで、会社法は、単元未満株式の買取請求(192条・193条)により、投下資本の回収の機会を保障している(定款で名義書換請求が否定されているか否かに関わらず認められている。また、財源規制もない)。

 

 ※また、売渡請求制度(194条)が定款で導入されていれば、売渡請求をして、単元株式にしてから、譲渡することで投下資本の回収をすることもできる。

 

株券発行会社では、単元未満株式に係る株券を発行しない旨を定款で定めることができる(189条3項)。これによっても、譲渡による投下資本の回収は難しくなる。

もっとも、単元未満株式の買取請求は可能で、請求があった場合、会社は株券と引き換えに代金を支払うことになっている(193条7項)。

 

設例4-1の解説は、以上です。

今回のテーマは、重要ですが、細かい論点もあるので、詳しめの教科書でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

   

 

 

 

設例4-2の解説はこちらです↓↓

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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-3(設例3-2)新株予約権の譲渡

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第3版)Ⅱ-3(設例3-2)の解答例を紹介します。

テーマは、新株予約権の譲渡です。

重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

 

   

(1)ストックオプションの付与における異なる行使期間の定め

Q1

使用人に対するストックオプションの発行においては、報酬規制(361条)がかからないので、新株予約権の発行手続のみでよい。

ここでは、取締役の場合(設例3-1(1)参照)と同じように、対価として労務提供があるため、有利発行にはならない。よって、公開会社では、取締役会決議で発行できる(240条1項)。

 

 

Q2

発行条件の均等を要求する238条5項に違反しないかが問題となる。

会社法制定前は、株主総会の特別決議を経れば、発行条件を均等にしなくてよいとの規定があったが、会社法では削除された。)

もっとも、行使期間の異なる新株予約権はそれぞれ別個の新株予約権と考えることができ、238条は募集ごとに均等であればよいと定めているだけであり、別個の新株予約権の発行について同項は問題とならない。

 

※このような解釈は、新株発行の場合(199条5項)と同じである(設例1-2のQ6参照)

 

(2)譲渡制限の設定等

Q3

発行決議で新株予約権の内容として、譲渡制限を設けることができる(236条1項6号、238条1項1号)。

会社は発行決議ごとに、譲渡制限の有無を決定することができる(たとえば、資金調達目的のときは譲渡制限を付けず(譲渡制限があると金融商品としての魅力が乏しくなるので)、ストックオプションとして発行するときは譲渡制限を付けるなど)。

 

新株予約権は用途が多様であるところ、発行ごとに譲渡制限の有無を決定できて便利(株式と異なる点の一つである)。

 

 株式と異なり定款で譲渡制限の有無を定めなくてよいのは、新株予約権に譲渡制限があっても、行使して株式にしてから株式譲渡することで投下資本を回収することができるので、株式の譲渡制限ほどに、株主や新株予約権者に重大な影響を与えないから。

※一般に、定款とは、株主の利益に重大な影響が生じることについて定めるものである。

 

Q4

「同一部門の従業員以外の者に譲渡する際に、会社の承認を要する」というような譲渡制限を付ければよい。

これは、譲渡制限がかかる範囲を狭くしているだけであり、236条1項6号を根拠に行うことができる。

 

※株式については、明文の規定がある。すなわち、107条2項1号ロの譲渡制限株式の内容として定めることができる。例えば、すでに株主である者に対する譲渡は、承認したものとみなすという、「みなし承諾」条項を定めることが考えられる。

新株予約権の譲渡制限にはこのような明文規定はないが、解釈によってこのような譲渡制限を禁じる理由はない(承認が必要となる場面を狭くしているだけなので)。

 

Q5

2つの方法がある。

①その部門に属していることを行使の条件とすればよい。明文規定はないが、行使に条件を付けることはできると解されている。

②移動・退職の場合を取得事由とする取得条項を定めておけばよい(236条1項7号イ)。これにより、当該新株予約権は、取得条項付き新株予約権となる(273条1項)。

 

(3)株式との比較

Q6

株式の場合は、140条で株式買取請求をすることができる。会社が譲渡を承認しなければ、会社または指定買取人が買い取る。

これに対し、新株予約権では、これに相当する規定がなく、会社は承認しなくても、自ら買い取ったり、指定買取人を指名する必要がない。

この結果、会社が承認しなければ、(会社との関係では)有効に譲渡することができない。この点で、株式の場合よりも、譲渡制限が強力である。

 

その理由は、2つある。

新株予約権の用途によっては誰に譲渡されようが、会社が困る場合がある。典型例はストックオプションである(役員や従業員に保有・行使してもらわないと、インセンティブ報酬としての意義がなくなる)。このため、強力な譲渡制限を認める必要性がある。

②前述(Q3⇒参照)のように、新株予約権を行使して、株式にしてから、株式を譲渡すればよいから、強力な譲渡制限を認めても、新株予約権者の不利益は限定的である。

 

 

設例3-2の解説は、以上です。

今回のテーマは、重要かつ難解な論点なので、詳しめの教科書でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

 

   

設例4-1の解説はこちらです↓↓

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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-3(設例3-1後半)新株予約権の用途

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第3版)Ⅱ-3(設例3-1後半)の解答例を紹介します。

テーマは、新株予約権の用途です。

細かい点もありますが重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

 

 

今回は、長いので、前半と後半の2回に分けて解説しています。今回は後半です。

 

前半の解説はこちら↓

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(3)敵対的な買収への予防策

Q6

敵対的買収を防止するための新株予約権であり、ポイズン・ピルと呼ばれる。 その効果や狙いは以下の通り。

まず、新株予約権に(d)のような行使条件を付ける。明文の規定はないが、一般に、権利について行使の条件を定めることは可能とされている。

 

⇒1

行使の条件が満たされたとき、経営陣としては、新株予約権が大量に行使されることを望んでいる。そこで、(c)のように行使価格を低くして、多くの人に行使してもらおうとしている(1円で株式が手に入るのであれば、みんな行使するのが普通)。

 

⇒2

本件で新株予約権が全部行使されると、株式総数は3倍になる一方、1株1円で発行するため、会社財産はほとんど増えない。そのため、単純計算で、株式価値は約3分の1にになる(実質1対3で株式分割を行っているようなもの)。さらに、買収者の持株比率も3分の1になる。

このように、大量に新株予約権が行使されると、買収者は買収をあきらめざるを得なくなる。

 

⇒3

敵対的買収者に新株予約権が譲渡されないようにするため(買収者が新株予約権を取得して行使したら上記の効果が弱まる)。

 

会社(経営陣)にとって望ましい買収まで、ポイズン・ピルによって阻止されてしまわないようにするため。好ましい買収者が現れたら、取得条項に基づいて新株予約権を取得して消却する。

※取締役会が適当と認めた場合という取得事由も無効というわけではない。

 

⇒5

理由は大きく3つある。

新株予約権の無償割当て(277)によれば、株主からの申込みを要せずに簡単に新株予約権を無償で割り当てることができる。手続が簡便という利点がある。なお、普通の株主割当てで対価を無償にするのも、実質的には同じだが、これだと株主の申込みが必要になる。

②発行事項の決定を代表取締役の権限とすることもできる(278条3項但書)。これに対し、無償割当て以外の発行だと、少なくとも取締役会決議が必要となる。

③無償割り当て含め、株主割り当ての方法なら、有利発行規制がかからない。

 

Q7

敵対的な買収者が現れ支配権争いが具体化した段階(有事の段階)で、支配権の維持・強化を目的として、新株予約権を発行するとき、不公正発行に該当する可能性がある。新株予約権潜在的な株式という点で、新株発行と同様であり、新株発行についての主要目的ルールがここでも該当する。支配権の維持強化を主要な目的とする新株予約権の発行は、不公正発行として、差止の対象になる(247条2号)。

※資金調達のためには、新株予約権よりも新株を発行したほうがよいので、資金調達目的の説得力は相対的に低下する。

 

もっとも、支配権の維持強化が目的でも、例外的に、不公正発行とならない場合もある。

すなわち、買収者が株主共同の利益を害する目的を有する濫用的買収者である場合に、対抗手段として必要性・相当性が認められる場合、支配権維持を主要な目的とした新株予約権の発行も正当なものとして許される。ニッポン放送事件東京高裁決定(東京高決平成17年3月23日会社法判例百選第4版97事件・第3版99事件)を参照。

ニッポン放送事件東京高裁決定は4つの例を挙げているが、その一部については、学説上異論が強い。例外に当たるかについては、慎重に検討すべきであるとされる。

 

⇒1 

不平等な行使条件が付されていることから、株主平等の原則(会社法109条1項)に反するかが問題となる。

このような新株予約権の無償割当てが、 株主平等の原則に違反しないためには、①買収者による会社支配権の取得により株主の共同の利益が害されること、および②当該取り扱いが衡平の理念に反し、相当性を欠くものでないことが必要。

ブルドックソース事件最高裁決定(最決平成19年8月7日(会社法判例百選第4版98事件・第3版100事件)参照

 

取締役会が①の判断をした場合、一般に取締役会には利益相反性があることから、裁判所は厳格な審査を行うことになると考えられる。

ニッポン放送事件でも、主要目的ルールの適用が厳格に行われている。

 

⇒2

 株主総会決議で①の判断を行った場合、株主総会の手続に不適正な点があったり、判断の前提となる事実に誤りがあったなど判断の正当性を失わせるような重大な瑕疵がない限り、裁判所は株主総会による判断を尊重することになる(上記ブルドックソース事件最高裁決定)。その理由は、株主共同の利益に反するかどうかを判断する主体としては、株主自身が最も適切だから。

 

ブルドックソース事件では特別決議によって行われたが、最高裁判決の文言からは、普通決議でも足りる可能性がある。(206条の2第4項の決議も普通決議)

 

なお、②の相当性の要件について、ブルドックソース事件では、買収者に新株予約権の取得・譲受けの対価が支払われていたことから、相当性を欠くものではないと判示された。

もっとも、対価を支払うことには、高値買取を狙った濫用的買収者(いわゆるグリーンメーラー)の出現を助長しかねないとして、批判も強い。

対価支払いの要否を含め、相当性の要件の判断については、今後の議論に委ねられている。

 

 

Q8

平時において、将来の敵対的買収に備えて新株予約権の発行をしておくことが不公正発行にあたるかが問題となる。

主要目的ルール は有事のルールであり、平時には適用されないと考えられている。もし、平時にも適用すると、一般的に行われている安定株主工作も広く違法になってしまう(そのような考え方も理論的にはあり得るが、現在の実務には合わない)。

 

しかし、本件のような新株予約権の発行には、下記の問題があり、主要目的ルールとは別の理由付けで不公正発行とした裁判例がある(東京高決平成17年6月15日判時1900号156頁(ニレコ事件)会社法判例百選第4版A42事件・第3版A38事件)。

 

すなわち、本件の新株予約権の発行は買収と無関係な株主まで損害を被る可能性がある。

割当日後に株式を取得した株主は、新株予約権の割り当てを受けないので、敵対的買収者が出てきたら、3分の1まで、株式価値・持株比率が希釈化されるという損害を被る。

割当日時点の株主(既存株主)も新株予約権に譲渡制限がついており新株予約権を譲渡できないことから、新株予約権発行による株式価値の低下分について、その価値を回収できない。また、敵対的買収者がいつ現れるかはわからないので、当該会社の株式は不安要因を抱え、株価が長期にわたって低迷する可能性がある。

よって、割当日時点の株主(②)も、その後の株主(①)も不利益を被るので、不公正発行に当たるとして差し止められた(247条2号類推) 。

 

※平時に導入可能な防衛策については判例はおろか学説の議論も定まっていない。実務上導入されているものの多くは、事前警告型(買収者に一定の手続に従うことを求め、それに従わないときに対抗措置を採ると警告するもの)というポイズン・ピルに比べると相当穏当なものにとどまっている。

 

 

設例3-1後半の解説は、以上です。

今回のテーマは、非常に難解な論点なので、詳しめの教科書と判例百選でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

 

 

 

   

設例3-2の解説はこちらです

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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-3(設例3-1前半)新株予約権の用途

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第3版)Ⅱ-3(設例3-1前半)の解答例を紹介します。

テーマは、新株予約権の用途です。

細かい点もありますが非常に重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

今回は設問が多いので、前半と後半の2回に分けて解説します。 

 

   

(1)ストックオプション

Q1

インセンティブ報酬の趣旨で取締役に付与する新株予約権ストックオプションという。ストックオプションの発行には、報酬規制(361条)と新株予約権規制(236条以下)の両方の手続が必要になる。 

 

Q2

令和元年改正前は、361条1項1号と3号に該当した。新株予約権の評価額は算定できるので「額が確定している」ので、1号に当たり、金銭でもないので、3号にも該当した。 

 

令和元年会社法改正の下では、直接ストックオプションを発行する場合は361条1項1号と4号に当たり、一旦金銭を支払う場合は361条1項1号と5号ロに該当する。

 

なお、いずれにせよ株主総会での説明は必要である(361条4項)。

 

Q3

取締役報酬として定款または株主総会決議で額(361条1項1号)および上限等(4号または5号ロ)が定められているところ、その範囲内での新株予約権の発行であれば、有利発行とはならない。(たとえば、1000万円の報酬額および100個の上限が定められているときに、評価額1000万円・100個以下の新株予約権の発行は有利発行とはならない。)

定款または株主総会決議で定められた額については、報酬の対価にあたる労務を会社に提供していると評価されるので、報酬規制の範囲内での発行であれば、有利発行とはないされない。

有利発行でない限り、公開会社では、取締役会決議でストックオプションを発行することはできる(240条1項)。

 

金銭による払込みがなされる場合、当該払込金額が、発行時点における新株予約権の公正な評価額(ブラックショールズモデルなど合理的な評価方法に基づく金銭的評価額)を著しく下回る場合に有利発行となる。

 

新株予約権の価値を算定するオプション評価モデルには、ブラックショールズモデルなど様々なものがある(数式は極めて難しいが、計算ソフトがあり、変数を入力すると評価額が算出される)。

評価モデルにおいて用いられる変数として、①行使価額、②株式の時価、③ボラティリティ、④行使期間、⑤金利がある。

新株予約権の価値は、②③④に比例し、①と⑤に反比例する。

 

Q4

 監査役は、主として、効率性ではなく、適法性の観点から監査をしていることから、ストックオプションの形で報酬を与えると、監査役に効率性を優先させるインセンティブが生じ、適法性監査に悪影響が生じることがありうるという問題がある。

 

(2)現物の給付

Q5

不要(246条2項)。発行のときの払込みは現物給付でもよい 。

新株予約権が有償で発行されるときは、発行時と行使時の2回の払い込みがある。

 

⇒1

発行時の払込みに係る現物給付については、 検査役調査は不要。検査役調査を要求する条文がないため。

 

⇒2

 新株予約権行使時の払込みも、(新株予約権の内容としてそのように定めていれば)現物給付が可能(236条1項3号、281条2項)。ただ、この場合は検査役調査が必要(284条1項)。

 

※発行時と行使時とで、現物調査の要否に違いがある理由として、会社法の立案担当者は、発行時の払込みは株式発行の払込みとはいえないが、行使時は株式発行の払込みといえるからであるとする(同じような説明は、相殺の可否について新株予約権と株式とで異なることの理由においてもなされている)。

しかし、説得力はない。たとえば、行使金額3万円の新株予約権を7万円で発行するとき、実質は、株式を10万円で発行するのと同じであり、10万円すべてについて現物出資すれば、そのすべてについて検査役調査が必要であるのに、新株予約権を使って2回に払い込みを分ければ、行使段階でしか現物出資規制がかからないのは整合的でない。

 

※なお、資本充実の点でも違いはない。新株予約権を発行したときは、発行価格と行使価格の全額を資本金と資本準備金に振り分けるので、この点も株式の場合と同じである。

よって、現物出資規制や相殺の可否について株式と新株予約権とで違いがあるのは、不整合であり、立法論的には疑問が呈されている。

 

設例3-1前半の解説は、以上です。

今回のテーマは、難解な論点なので、詳しめの教科書でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

 

 

設例3-1後半の解説はこちらです

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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-2(設例2-2)累積的優先株式における累積未払金の縮減

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第3版)Ⅱ-2(設例2-2)の解答例を紹介します。

テーマは、累積的優先株式における累積未払金の縮減です。

やや細かいテーマですが、重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

   

 

Q1

 現在の累積配当金の額は定款に記載されない。よって、累積配当金の縮減は定款変更そのものではない。

ただ、累積配当金の縮減は、定款で優先株主に付与された権利の縮減であり、実質的に定款変更に近い。そこで、法的には、定款変更により、優先株式の内容の変更として、累積配当金の縮減ができる(322条1項1号ロ類推適用)と解するのが多数説である。

手続としては、定款変更のための株主総会の特別決議(466条・309条2項11号類推)と損害を受ける優先株主による種類株主総会の特別決議(322条1項1号ロ・324条2項4号類推) が必要。

 

 すでに発生した社債の利子についても、社債権者集会の特別決議で減免することができる(706条1項1号、724条2項1号)。ただし、この決議が効力を生ずるには、裁判所による認可が必要(734条1項)。

これに対し、優先株主の累積配当金請求権は、債権者の権利ではなく、株主の権利にすぎないため、株主総会と種類株主総会における多数決で縮減することができる。

 

Q2

 もっとも、少数有力説は、上記の方法によっても、累積配当金の縮減をすることはできないとする。

その理由は、発行時に優先株主に期待を持たせておきながら、あとから多数決によってその期待を奪うことは不公正であるためである。 

 

もっとも、会社法の他の手続を利用することで、実質的に、累積配当金の縮減をすることはできる。

すなわち、全部取得条項付種類株式(108条1項7号)の制度を使って、①累積配当金付の優先株式を全部取得条項付種類株式とする定款変更を行い(111条2項1号・324条2項1号)、②この株式を全部取得条項に基づき取得する決議をする(171条・309条2項3号)。このとき取得の対価として、別の(累積配当金の付いていない)優先株式を交付する。

これにより、実質的に累積配当金を縮減することができる。

ここでは、111条2項の定款変更について株式買取請求権が与えられており(116条1項2号)、取得の段階で、取得対価に不満な株主は裁判所に取得価格決定の申立て(172条1項)を行うことができる。ここがQ1の肯定説(多数説)との実質的な違いである。

 

Q3

Q社は優先株式の種類株主総会において特別利害関係人となる(累積配当金の縮減により、優先株主の不利益のもと、普通株主は利益を受けるからである)。

よって、Q社は種類株主総会において、議決権を行使することはできるが、著しく不当な決議となれば、決議取消事由となる(831条1項3号)

Q社は議決権を30%有するから、Q社の賛成で特別決議が成立した可能性が高い。

そこで、本件決議の内容が著しく不当なものであるかが問題となる。

普通株主から優先株主への十分な見返り(たとえば、普通株式の無償譲受け)があるならば、著しく不当とはいえないであろう。

本件では、普通株式の株式併合がされているが、これが見返りといえるかが問題となる(Q4で検討)。

 

Q4

本件では、非参加的優先株式であるから、優先株主は優先配当額である300万円(300円×1万株)を超えて 配当を受けることができない。よって、普通株式が併合されても、意味がない。

 よって、本件では、見返りなしに累積配当金の縮減の決議がなされており、決議内容は優先株主に一方的に不利益であるから、831条1項3号により決議取消事由となる。

 

 ⇒

仮に、優先株式が参加的であれば、優先配当金の支払い後に、通常の配当に参加できるので、普通株式の株式併合があれば、普通株主は不利益と受け、優先株主は利益を受ける。この見返りが十分であるといえるならば、著しく不当な決議(831条1項3号)とはいえない。

 

Q5

資本金は、分配可能額を算定する時の控除項目であって、資本金が減れば、分配可能額が増えて、配当しやすくなるだけであり、その意味で株主の(間接的な)利益になるにすぎない。

結局、資本減少は、どちらの株主の利害にも直接的な影響を与えない。

よって、資本減少は普通株主から優先株主への見返りとはならない。 

 

設例2-2の解説は、以上です。

今回のテーマは、重要かつ難解な論点なので、詳しめの教科書でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

   

 

 

設例3-1の解説はこちらです。

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