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会社法事例演習教材の解答例Ⅰ-1(設例1-1前半)名書換未了の場合の譲渡株主の権利行使

こんにちは、コポローです。

京大をはじめとする一流ロースクールの授業で使われている演習書『会社法事例演習教材(第4版)』の解答例を連載します!

この演習本は、基本から応用まで、各種試験で問われる重要な論点について、網羅的に取り扱っており、非常におすすめの教材です。私も受験生時代とてもお世話になりました!私が上位合格できたのはこの本のおかげといっても過言ではありません。

 

 

ただ、この本は、解答例が掲載されていない点が大きな欠点で、自習用として使いにくくなっています。そこで、本ブログでは、私が受験生時代に作成したノートをベースに、解答例を掲載します。

 

今後、版の改訂はもちろん、新しい判例や法改正にも、記事の更新によって対応していきます。

授業の予習・復習や自習の際に、参考にしていただければと思います。

 

 さっそく、第1回として、Ⅰ-1(設例1-1)の解答例をお示しします(原則として、毎回読み切りで連載しますが、この設例は、長いため、前半と後半に分けさせていただきます)。今回のテーマは、名義書換未了の場合の譲渡株主の権利行使です。

 

Q1 

公開会社(会社法2条5号)

一部の株式だけに譲渡制限がなくても「公開会社」である(2条5号参照)。なぜなら、株式の一部であっても、譲渡制限がない以上、株主の緊密性が保たれないからである。

 

Q2  

株券発行会社の株式は株券の交付により譲渡の効力が発生するが(会社法128条1項)、株主名簿の名義書換えがされていなければ、株式会社に譲渡の効力を対抗することはできない(130条1項・2項)。

⇒1

 株券発行会社の定義は、会社法117条7項にある。株券発行会社とは、「その株式(種類株式発行会社にあたっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨の定款の定めがある会社」という。よって、本設例のP社は、株券発行会社である。

⇒2

 株券発行会社でない場合、株式の譲渡は合意(振替株式については口座への記録(社債、株式等の振替に関する法律140条))によって効力が生じるが、株主名簿の名義書換えがなければ、株式会社その他第三者に対抗することができない点は同じ(会社法130条1項)。

 

Q3 

判例最判昭和30年10月20日民集9巻11号1657頁)・通説によれば、P社はAが株主であることを否定することができる。

その根拠は、①条文上、株主名簿の名義書換えは、対抗要件(株主側から会社に譲渡の有効性を主張する際に必要となるもの)とされており、会社の側から譲渡を認めることまでは否定されていないこと

②株主名簿制度は集団的法律関係を画一的に処理するという会社の便宜のための制度であり、会社側がその便宜を放棄することは可能であると解されることである。

 なお、少数反対説は、①会社が譲渡人・譲受人のいずれも株主と認めないことで、株主の地位に空白が生じかねないこと、②会社が恣意的に株主を選ぶことになるとして、株主名簿上に株主として記載されている者を株主として扱わなければならないとする。(これらの点に対する通説からの対応は、Q6、Q7で扱います。)

 

Q4

 Aの原告適格が問題となる。つまり、会社法831条1項の「株主等」に当たるかどうかという問題である。これは、Q3の結論による。P社がAを株主でないと扱うことができるならば、Aは「株主等」でないとして、訴え却下となる。

なお、仮にAが少しでもP社株式を保有していれば、「株主等」には該当するが、上記通説によれば、株主総会の手続に法令・定款違反は認められないので、請求棄却となる。

ただ、Aを株主と認めない場合、P社はBを株主と扱わなければならないQ6・Q7参照)。そして、Bを株主として扱うまでは、Aが株主である。よって、Bに招集通知を送っていなければ、Aが株主ということになり、原告適格が認められる。もっとも、この後、会社が何らかの場面でBを株主として認めた場合、訴訟の途中でAの原告適格が失われ、訴え却下となる(Aの原告適格が訴訟の最後まで認められれば、請求は認容されるだろう)。


 

Q5

譲渡が基準日後であれば、P社は、基準日時点に株主であったAを株主として扱わなければならない。基準日制度は、基準日時点の(名簿上の)株主に権利行使させるという趣旨の制度であり、ここでは、P社はAを株主として扱わなければならない。

 

 ⇒

124条4項は、基準日後に新たに株主となった者に議決権を認めることを会社に認めている。

もっとも、これは、当該株主が新株発行や合併等により新たに株主となった場合(基準日株主がいない場合)を想定した規定であり、株式譲渡の場合は、基準日後の株主に議決権を認めると、基準日株主の権利を害することになるため、許されない(124条4項但書)。

なお、124条4項が「全部または一部」と規定しているのは、たとえば、新株発行と合併が行われたとき、合併によって新たに株主となった者についてのみ議決権を認めることができるという趣旨である。

 

Q6 

通説(江頭など)は、できないと解している(判例もそこまでは認めていないと考えられる)。

なぜなら、株主の権利の空白を生じるからである。

つまり、一方の権利行使を拒むなら、他方の権利行使は認めなければならない。

 

Q7 

会社は恣意的に権利行使者を選択することはできないと解されている(一種の権利濫用といえるし、恣意的な取り扱いは、株主平等原則(109条1項)に違反するといえる)。

もし、このような恣意的な権利行使者の選択がなされた場合、株主総会の招集手続および決議方法の著しい不公正があったとして、決議取消事由になる(831条1項1号)。

 

以上の理由から、会社は、名簿上の株主と実質株主のうち、いずれに議決権行使させるかについて、恣意的ではなく、統一的に扱わなければならない。

つまり、Bを株主として扱うなら、すべての実質株主を株主として扱い、Aを株主として扱うなら、すべての名簿上の株主を株主として扱わなければならない。

しかし、株主数が多く、会社がすべての株式譲渡を把握できないような場合、会社が実質株主をすべて把握できていないことになる。

よって、このような会社においては、名簿上の株主に議決権行使をさせるという選択をせざるを得ない。

 

Q8以降は、後半の記事に続きます↓↓

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