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会社法事例演習教材の解答例Ⅰ-2(設例2-2)決議取消訴訟における訴えの利益

こんにちは、コポローです。

今日は会社法事例演習教材(第3版)Ⅰ-2(設例2-2)の解答例を紹介します。

テーマは、 株主総会決議取消訴訟における訴えの利益です。

会社法を勉強する上での重要テーマですので、頑張って学習しましょう!

 

Q1

  決議取消しの訴えは、形成訴訟であり、実体法において明文で定められている場合にのみ提起できる。実体法において定められた要件が充足されるときは、原則として、訴えの利益が認められる。しかし、例外的に、形成判決を下しても実益がない場合には、訴えの利益は否定される

 他方、 決議の無効や不存在の確認の訴えは、確認訴訟であり、実体法上明文の規定がなくても、訴えの利益があれば提起できる。確認訴訟において、訴えの利益の有無は個々の事案ごとに判断される。

 

※本問は民事訴訟法にも関係するため、民事訴訟法の教科書(「訴訟の種類」や「訴えの利益」の項目)も読んで復習しましょう。

読みやすくて、おすすめの教科書です↓ 

 

 

Q2

 第一決議で選任されたC・D・Eは、任期満了で退任しており、特段の事情のない限り、決議を取消す実益はなく、訴えの利益は消滅する(最判昭和45年4月2日民集24巻4号223頁会社法判例百選第3版38事件)。

 

Q3

報酬の返還の必要性が、 上記昭和45年最判の「特段の事情」に当たるかどうかという問題であるが、下級審裁判例は分かれている。

もっとも、訴えの利益を認めた裁判例は報酬の額や支払い方が不当であった事例に関するもので、通常の事例では、報酬の返還の必要性は特段の事情に当たらないと考えられている。

一般論として、取締役には報酬が支払われるのが通常であるから、報酬の返還の必要性を主張するだけで、「特段の事情」が認められるとすれば、ほとんど常に訴えの利益が認められることになり、昭和45年最判の趣旨に反するであろう。

   

Q4

 代表取締役でない取締役が取締役会決議に基づかずに株主総会を招集した場合、決議は不存在となる(最判昭和45年8月20日判時607号79頁)。

 

 ※手続的瑕疵が著しい場合、決議取消事由にとどまらず、決議不存在事由となる。どのような場合に決議不存在となるかは、明確な線引きがない。詳しめの教科書等で事例を覚えるのが望ましい。

 

 

 

 

Q5

 判例法理(最判平成2年4月17日民集44巻3号526頁会社法判例百選第3版41事件最判平成11年3月25日民集53巻3号580頁)によれば、第一決議が不存在であれば、それを前提とするそれ以降の決議も、(全員出席総会であったなどの特段の事情のない限り)連鎖的に不存在になる

なぜなら、第一決議が不存在であれば、C・D・Eは取締役出ないことになり、Cらによって構成された違法な取締役会によって代表取締役に選定された者も法的には代表取締役といえないことになり、これらの者が招集した後の株主総会も手続の著しい瑕疵があるものと評価され、不存在となるからである。

第一決議の不存在が確認されれば、(全員出席総会などでない限り第二決議も不存在となるため)紛争解決に役立つことから、訴えの利益は失われない(上記平成11年最判参照)。

また、第一決議が不存在であれば、346条1項・351条1項により、AやBが、(後任者が選任されるまでの間)取締役・代表取締役の権利義務を有することになる。このように、誰が取締役・代表取締役の権利義務を有するかを明らかにするという点でも実益があるため、第一決議の訴えの利益は認められる。

 

※なお、Q2で訴えの利益が失われることとの整合性については議論がある。

「決議取消しの場合は不存在と違って、取り消されるまでは決議は有効なので、当時適法な状態にあった取締役会が代表取締役を選定し、その代表取締役によって株主総会が招集された場合、その瑕疵の程度は決議を不存在と評価するほど著しいものではないということができる」とする学説もあったが、最判令和2年9月3日により、先行決議が取り消された場合も瑕疵連鎖が生じることが明らかにされた。

先行決議の効力が後行決議の効力に影響する場合は、昭和45年判決の「特段の事情」として、訴えの利益を認めることになろう。

(なお、論究会社法5頁以下で、田中亘教授が瑕疵連鎖に関する一連の裁判例について分析され、昭和45年判決の判例変更の必要性を指摘されています。)

 

令和2年判例の解説はこちら

kaishahou.hatenablog.jp

 

論究会社法の紹介はこちら

kaishahou.hatenablog.jp

 

※実務上、取締役の地位に関する訴え(選任決議取消しや解任の訴え)を提起するとき、取締役の職務執行を停止し、職務代行者を選任する申立てを裁判所にする(会社法352条・民保23条2項・24条・56条参照)ということが行われている。そのような代行者が行う行為は基本的に有効であり、その者が株主総会の招集手続にかかわっても、手続状の瑕疵は生じない。

 

「決議の瑕疵の連鎖」は、難しいテーマなので、教科書や百選の解説で復習しておきましょう。

 

 

 

それでは、また次回!

 

 設例2-3の解説はこちらです↓

kaishahou.hatenablog.jp

 

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