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会社法事例演習教材の解答例Ⅰ-5(設例5-2)株主総会決議なしに支払われた取締役報酬の効果

こんにちは、コポローです。

今日は会社法事例演習教材(第3版)Ⅰ-5(設例5-2)の解答例を紹介します。

テーマは、 株主総会決議なしに支払われた取締役報酬の効果です。

試験に出やすい重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

 

   

Q1

 取締役の報酬は361条1項により、株主総会決議または定款で定めなければならないが、それに違反して報酬を支払った場合、不当利得として報酬相当額を返還しなければならない。または、会社は、取締役に違法な業務執行(法令違反)があったとして、損害賠償を請求することも可能(423条1項)。

不当利得返還請求権が代表訴訟の対象となるかは、明確ではなく、争いがあるが、判例最判平成21年3月10日・会社法判例百選第3版67事件)は、会社との取引によって負担することとなった債務についても、代表訴訟の対象になると判示しており、契約関係から生じた不当利得返還債務も、これに該当し、株主代表訴訟の対象になると考えられる。

 

最判平成15年2月21日金判1180号29頁(会社法判例百選第3版A17事件)は、任務懈怠による損害賠償請求を行った事案。

 

Q2

株主総会決議や定款で報酬の金額が定められなければ、具体的な報酬請求権は生じない。しかし、株主総会決議にかわる株主全員の同意があれば、報酬請求権は発生する(最判平成15年2月21日金判1180号29頁(会社法判例百選第3版A17事件))。

 

本件では、平成15年から21年は全株主であるABC全員の同意があるので、361条違反はなく、その分の報酬請求権は有効に成立している。しかし、平成22年以降は、全株主の同意があるとはいえず、Aの報酬請求権は発生していない。

 

Q3 

平成15年判決により、①の考え方は否定されている。定款規定や株主総会決議がなければ報酬請求権は発生しないとされている。 

②は学説上有力に主張されており、ありうる考え方である(相殺の抗弁で対応することになる)。しかし、会社側の不当利得の額をどのように立証するかは難しい。類似会社との比較や、適法に報酬を支払っていた従来の慣行をもって立証するほかないであろう。

   

Q4

ある程度の規模の会社であれば、従業員の給与体系が決まっていると考えられる。使用人としての報酬が当該体系に従って、支払われていれば、361条については、使用人分を含まない形で報酬決議をしてもよい(判例・通説)

グッドプラクティスとしては、使用人としての給与も別途支払われていることを明示して決議すべき(もっとも、そうしなかったとしても、決議の瑕疵にはならない)。

 

従業員の給与体系が決まっていない会社では、使用人分も合わせて決議するか、使用人としての給与がいくらであるかを明示して決議する必要がある。

 

Q5

株主総会で事後的に承認することが考えられる。

これにより、支払われた報酬が適法なものとなる。通常の決議と同様、過半数でできる。(Dが反対しても、報酬額が著しく不当なものでなければ、著しく不当な決議とはいえないだろう。)

361条のお手盛り防止の趣旨は、事後的決議であっても、特段の事情のない限り、達成される(平成17年2月15日判時1890号143頁参照)。 

 

 

設例5-2の解説は、以上です。

 

取締役の報酬は、重要なテーマですので、詳しめの教科書・判例百選でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

取締役の報酬については令和元年会社法改正で重要な改正がされていますので、注意してください。

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 設例5-3の解答例はこちらです

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