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会社法事例演習教材の解答例Ⅰ-8(設例8-1前半)募集株式の発行の差止め

こんにちは、コポローです。

今日は会社法事例演習教材(第4版)Ⅰ-8(設例8-1前半)の解答例を紹介します。

テーマは、募集株式の発行の差止めです。

試験に頻出の重要テーマなので、しっかり勉強しましょう! 

量が多いので、前半と後半の2回に分けて解説します。今回は前半です。

 
 

 

 

 

 

(1)企業提携による株価上昇と有利発行

Q1

 株主総会の特別決議なしに有利発行にあたる新株発行を行った(会社法199条1項・2項、201条1項、199条2項・309条2項5号)という、当該株式の発行の法令違反(会社法210条1号)。

※条文は、できるだけ詳細・正確に、示しましょう!

 

P社は上場会社であり、公開会社である。公開会社では、有利発行の場合、取締役による理由説明の上(199条3項)、株主総会特別決議が必要となる(会社法199条1項・2項、201条1項、199条2項(309条2項5号))。

 

本件募集株式の発行前にQ社がP社株式を1株でも保有していた場合、本件募集株式の発行により、Q社の議決権比率が50%超となることから、206条の2第1項が適用される。

この結果、206条の2が定める手続が必要となり、当該手続を遵守しない場合、法令違反として、差止事由となる(210条1号)。

 

※206条の2は平成26年会社法改正で導入された制度で、まだ学説や判例の蓄積も少ないですが、最近1つ裁判例が出て、令和3年度の重要判例解説に掲載されました!

下記記事で簡単に紹介しています。

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

 

 

Q2

大きく2つの見解がある。

①株価が異常に高騰しても市場価格を公正な価格の基準とするべきであるとする見解

→本件は有利発行にあたる

②高騰前の株価を公正な価格の基準とするべきであるとする見解

→本件は有利発行に当たらない

 

本件のように、企業提携による株価の急騰があった場合に、公正な価格をどのように設定するかは、企業提携によるシナジー企業価値の向上部分≒株価の上昇分)をどう分配するかという問題につながる

 

上記①だとシナジーはすべてP社の既存株主に帰属し、②だとシナジーはP社の既存株主と提携先(Q社)に持株数に応じて比例分配される。

 

 学説多数(江頭など)および裁判例(東京高判昭和48年7月27日会社法判例百選第4版95事件・第3版97事件〔ソニー・アイワ事件〕)は、企業提携による株価高騰の場合は、②のような考え方(シナジーの比例分配)が合理的であると考える

 

※この論点については、会社法判例百選第4版95事件・第3版97事件の仮屋解説で復習してください。

 

※飯田秀総ほか『会社法判例の読み方』83頁以下の解説も、「図表」入りで、分かりやすくておすすめです。

 

※この本は優秀な若手研究者が重要判例を「分かりやすく+深く」解説した本で、非常におすすめです。

※レビュー抜粋↓

川出先生の「判例講座刑事訴訟法会社法版を有斐閣が出したという感じ。大変分かりやすく、論点の流れ、事実認定のポイント、学説、射程が上手にまとめられています。百選より図表が多用されていて、判例の内在的な理解が可能です。各種資格試験にももってこいの隠れた?名著です。

 

 

 

Q3

特定の者の株式買占めに対抗するための新株発行における公正な価格をどう考えるかについては、見解が分かれている。

 

①買占めている者は、独自の目的をもって株を買おうとしているので、株価が上がっても買い続けることが多く(それに便乗する投機家も現れることがあり)、株価が急騰する。そのようにして人為的に作られた株価は、企業の実体的価値を反映していないので、急騰前の株価を公正な価格の基準とすべきとする見解(江頭・古い裁判例(大阪地決昭和62年11月18日判時1290号144頁)など)。

 

②買い占めによって株価が急騰しても、原則として、新株発行前の市場価格を基準に公正な価格が決定されるべきであるとする見解(ただ、異常な投機によって、一時的に株価が急騰した場合は別であるとする)。高い株価が一定期間続いていれば、買い占めであっても、市場における株式価値・企業価値の評価が上がっていると解さざるをえないので、新株発行前の市場価格が基準となると解する(近時の裁判例。たとえば、東京地判平成16年6月1日会社法判例百選第4版20事件・第3版22事件(宮入バルブ事件))。

最近の学説は②を支持する傾向にある。

 

※この論点については、会社法判例百選第4版20事件第3版22事件の田中亘解説を復習してください。

 

 

 

 

 

設例8-1の前半の解説は、以上です。

 

今回のテーマは、重要かつ難しい論点なので、詳しめの教科書・判例百選でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

 

 

 

 

設例 8-1の解説の後半はこちら

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