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会社法事例演習教材の解答例Ⅰ-8(設例8-1後半)募集株式の発行の差止め

こんにちは、コポローです。

今日は会社法事例演習教材(第4版)Ⅰ-8(設例8-1後半)の解答例を紹介します。

テーマは、 募集株式の発行の差止めです。

試験に出やすい超重要テーマなので、しっかり勉強しましょう!

量が多いので、前半と後半の2回に分けて解説していて、今回は後半です。

   

 

 

前半の解説はこちらです↓ 

kaishahou.hatenablog.jp

   

 



(2)支配権争奪時における募集株式の発行(その1)

Q4

 X社は、本件新株発行は現経営者の支配権維持のなされるものであることから、著しく不公正な方法により行われること(会社法210条2号。いわゆる不公正発行)を主張することになる(※有利発行かどうかも問題となりうるが、一般に5%程度のディスカウントでは有利発行とは解されない。確実に資金を調達するためには、市場価格から多少のディスカウントをする必要があることが少なくない)。

 

これに対して、P社は、本件新株発行が、Q社と共同で事業を立ち上げるための資金調達という正当な目的のためのものであると主張することになる。

 

新株発行に「支配権維持目的」と「資金調達目的などの正当な事業目的」があるとみられるとき、不公正発行に該当するか否かは、いずれの目的が「主要な目的」であるかによって判断される(主要目的ルール)。

 

ニッポン放送事件(東京高決平成17年3月23日会社法判例百選第4版97事件・第3版99事件)では、正面から買収防衛(支配権維持)が新株予約権発行の目的であると主張された点で異なる。

※普通、会社側は、資金調達目的を口実的に主張するが、ニッポン放送事件では買収防衛目的であることが明白であったことから(および買収者であるライブドア社・堀江氏の手法に社会的な批判も少なくなかったこともあって)、正面から買収防衛目的が主張された。このように買収防衛目的が正面から主張されることは珍しいことである。

   

 

 

 

Q5

判例においては、支配権維持目的があっても、 資金調達の必要性があれば、支配権維持目的が主要な目的であるとは認められにくい。

たとえば、東京高決平成16年8月4日会社法判例百選第4版96事件・第3版98事件(ベルシステム24事件)が、限界事例として有名である。

これは、経営陣と40%の反対派株主が対立していた中、別の会社との提携のために倍額の増資をした事件であり、裁判所は急に用意された事業目的(事業計画)ではあったが、一応合理的な目的が提示されたため、それを主要な目的として認めた。

裁判所の結論には、学説から批判も少なくない(このような事案に対処するため、平成26年会社法改正により、会社法206条の2が新設された)。

 

もっとも、最近では、事業目的の合理性・資金使途の実体を慎重・厳格に審査する下級審裁判例が増えてきている(会社法判例百選第4版96事件・第3版98事件の松中学解説を参照)。

 

本件では、Xの持株比率が小さく、相手方も従来からの取引相手であり、株式数の増加率も20%のため、ベルシステム24事件もよりもいっそう不公正発行となりにくい。共同事業立ち上げ目的のほうが主要な目的と認定されそうである。

   

 

 

 

(3)支配権争奪時における募集株式の発行(その2)

Q6

ここでも、 主要目的ルールによって、不公正発行かどうかが判断される。

本件では、互いに新株を発行しあっているので、資金が実質的に入ってこない点が重要である。

企業提携のための新株発行の意味は、①資金調達および②事業提携の担保。本件では、資金が実質的に入ってこないので、①の意味がなく、②の効果も弱い。

このことから、業務提携目的は口実的なものであり、支配権維持目的が主要な目的であると認められやすい。

 

東京地決平成元年7月25日判時1317号28頁・会社法判例百選初版31事件(忠実屋・いなげや事件)参照。

※なお、この裁判例は、主要目的ルールを会社側に厳格に解釈・適用しているが、他の裁判例の傾向からみて異質であり、あまり一般化できない。 

   

 

 

 

 

(4)支配権争奪時における募集株式の発行(その3)

Q7

 本件でも、不公正発行が問題となる(210条2号)。

そして、本件は、資金調達目的ではなく、買収防衛目的(支配権維持目的)であり、原則として、不公正発行となる。

しかし、支配権維持目的による新株発行であっても、株主全体の利益保護の観点から、新株発行が正当化される特段の事情があれば、例外的に、不公正発行とはならない(東京高決平成17年3月23日会社法判例百選第4版97事件・第3版99事件)。

当該裁判所例は、4つの類型(①グリーンメーラーへの対抗、②買収者による資産流用のおそれ、③買収者による焦土化経営の恐れ、④一時的な高配当で売り抜けようとする買収者への対抗)を挙げるが、その中には批判の多いもの(とくに④)もあり、特段の事情の認定は慎重になされるべきである。

 

本件では、グリーンメーラー(株式を買い集めて会社関係者に買い取らせようとする者)への対抗策として、新株発行がなされるため、例外的に、不公正発行とならない可能性がある。

 

今回は非常に重要なテーマ・判例を取り上げました。詳しめの教科書・百選解説でしっかり復習しましょう。 

 

 

 

※買収防衛策については、令和3年に重要な裁判例が複数出ていますので、ご注意ください(もっとも、これまでの裁判例の延長線上にあるものなので、上記解答例には大きな修正点等はありません)。最新の裁判例については、いずれ解説記事を書きたいと思います。

 

それでは、また次回! 

   

 

 

 

設例8-2の解説はこちら

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