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会社法事例演習教材の解答例Ⅰ-8(設例8-2(上))有利発行・不公正発行と発行後の救済方法

こんにちは、コポローです。

今日は会社法事例演習教材(第4版)Ⅰ-8(設例8-2(上))の解答例を紹介します。

テーマは、有利発行・不公正発行と発行後の救済方法です。

試験に頻出の重要テーマなので、しっかり勉強しましょう! 

量が多いので、上・中・下の3回に分けて解説します。今回は上です。 

   

 

 

 

 

(1)有利発行・不公正発行等と新株発行無効事由

Q1

公開会社において、取締役会で募集事項を決定する場合、株主に当該募集事項を通知するか公告するかしなければならないが(会社法201条3項・4項)、金融商品取引法4条1項の規定に基づく届出(有価証券届出書の提出)をしている場合、株主に対する通知または公告は不要となる(会社法201条5項)。

有価証券届出書には募集事項と同内容の事項が記載され、その内容は、EDINETにより公衆の縦覧に供されるためである。

 

 

Q2

10%程度のディスカウントは一般的であるが(日本証券業協会の自主規制参照)、特段の理由がないにもかかわらず、20%のディスカウントをすることは有利発行となる可能性が高い。

特段の理由の一例として、業務提携によるシナジー効果が期待できる場合、既存株主はその恩恵を受けることになるから、ディスカウントを大きくしても、有利発行と評価されにくくなる。

 

しかし、設例8-1(1)の事例と異なり、市場がシナジー効果を評価していない場合(シナジー効果の存在が経営陣・取締役会の主観に過ぎない場合)には、シナジーを考慮して大きくディスカウントすることは許されるべきでない。

取締役会としては、有利発行をする理由(199条3項)として、シナジー効果が期待できることを説明することが許されるにとどまり、その是非は、株主総会の判断に委ねられるべきである。

 

設例8-1のQ2の解説も参照↓

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

Q3

 支配権維持目的であるとみるべきである。

理由は、①新株発行に至る時系列的経緯(Q社による株式の買集めを知ってすぐに新株発行が検討されたこと)、②定時株主総会の議決権行使の基準日後の発行であったにもかかわらず議決権を与えていること、③資本業務提携の検討が突如開始されたこと、④③についてP社の説明が虚偽であったことが、挙げられる。

 

支配権維持目的で行われた新株発行は、原則として不公正発行に該当する(取締役が新株発行権限を自己保身目的で濫用していると評価することができるからである)。

 

例外として、株主の共同の利益を害する者による買収等への対抗策など、株主の共同の利益に資する場合は、不公正発行に該当しない(東京高決平成17年3月23日会社法判例百選第4版97事件・第3版99事件)

当該裁判所例は、4つの類型(①グリーンメーラーへの対抗、②買収者による資産流用のおそれ、③買収者による焦土化経営の恐れ、④一時的な高配当で売り抜けようとする買収者への対抗)を挙げるが、その中には批判の多いもの(とくに④)もあり、特段の事情の認定は慎重になされるべきである。

 

本件では、これらの事情はなく、支配権維持目的での発行であると認定されれば、不公正発行に該当すると考えられる。

   

 

 

 

Q4

判例によれば、公開会社において、新株発行が有利発行や不公正発行に該当するだけでは、当該新株発行の無効事由とはならない(最判平成6年7月14日会社法判例百選第4版100事件・第3版102事件)。

募集事項の公示(株主に対する通知や公告(201条3項・4項)およびそれに代わる金商法4条1項に基づく届け出(201条5項))を欠いていたなど、株主に新株発行の差止の機会が保障されなかったという事情が必要である(最判平成9年1月28日会社法判例百選第4版24事件・第3版27事件)。

 

判例は、新株発行の効力をめぐる争いは、原則として、事前の差止め段階において争われるべきであり、事後的に無効訴訟で争うことは法的安定性を害するため好ましくない(差止請求ができなかった場合にのみ無効の訴えが認められるべきである)と考えているようである。

 

 

設例8-2(上)の解説は、以上です。

 

今回のテーマは、試験に頻出の重要論点なので、詳しめの教科書・判例百選でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

   

 

設例8-2(中)の解説はこちら

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