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会社法事例演習教材の解答例Ⅰ-8(設例8-2(下))有利発行・不公正発行と発行後の救済方法

こんにちは、コポローです。

今日は会社法事例演習教材(第4版)Ⅰ-8(設例8-2(下))の解答例を紹介します。

テーマは、有利発行・不公正発行と発行後の救済方法です。

試験に頻出の重要テーマなので、しっかり勉強しましょう! 

量が多いので、上・中・下の3回に分けて解説します。今回は下です。

 

上と中の解説はこちらです↓

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(1)有利発行が行われた場合の関係者の民事責任

Q8

株主総会の決議なしに有利発行を行ったことは、法令違反に該当し、任務懈怠となる。

問題は会社に損害が生じたといえるかどうかであり、見解が分かれている。

 

損害として考えられるのは、公正な払込金額の場合に調達できたであろう金額と、現実に(有利な発行価格によって)調達できた金額との差額である。

有利発行でなければより多額の払込金が会社に入ってきたはずであるから、その差額が会社の損害であるというわけである。

もっとも、①資金調達目的の新株発行の場合、払込金は所与のものであり、有利発行は発行する株式数が多すぎたことが問題となる。この場合、もっと少ない株式数を発行すべきであったということになり(もっと払込金額をふやすべきだったということになり)、会社の損害を観念することは難しい

他方、②業務提携目的の新株発行では、発行株式数が所与のものである場合がありえ、この場合、もっと払込金額を増やすべきであったといえるため、公正な価格と(有利な)発行価格との差額を会社の損害と観念することができる

このように、理論的には、全体の払込金額が少なすぎるとみるか、発行株式数が多すぎるとみるかで、会社に損害があったかどうかが変わる。

また、③そもそも新株発行をするべきではなかったという場合もありえ、その場合も、会社に損害が生じたとは言えない。

 

しかし、裁判例は、そのような思考方法をしておらず、単純に、公正な払込金額での発行によって調達できたはずの金額と、現実の(有利な発行価格での)調達金額との差額を会社の損害とみて、423条1項の責任を認めている。

学説にも、株主に上記①②③を特定させるとは困難であるとして、このような裁判例の傾向を是認する見解がある(田中亘『会社法(第3版)』535頁参照)。

 

 

 

 

 

 

Q9

 上記①および③の場合には、会社に損害が生じないが、株式価値の希釈化によって既存株主に直接損害が生じている。

株主の直接損害について、株主は429条1項・不法行為の責任を追及することができる。もっとも、429条1項では、悪意または重過失による任務懈怠が要件となる。株主総会の決議なしに有利発行を行ったことは、法令違反に該当し、任務懈怠を構成するが、P社取締役に悪意または重過失があったかは問題文からは必ずしも明らかでない。

 

上記②の場合には、会社に損害が生じているため、株主は間接損害を被ったことになる。株主の間接損害については、原則として、429条1項や不法行為にもとづく損害賠償請求をすることができないと考えられている(東京高裁平成17年1月18日会社法判例百選第3版A22事件)。

 

 もっとも、裁判例は、有利発行事例について、①②③を特に区別しておらず、429条1項の責任や不法行為責任を認めている。学説にも、株主に上記①②③を特定させるとは困難であるとして、このような裁判例の傾向を是認する見解がある(田中亘『会社法(第3版)』535頁参照)。

   

 

 

 

Q10

 R社が有利発行について、P社取締役と「通謀」していた場合は、R社は212条1項1号により公正な価格と払込金額の差額を会社に支払う責任を負う。

当該責任は、株主代表訴訟の対象なるので(847条1項)、Qは株主代表訴訟によって、R社の当該責任を追及することができる。

   

 

 

(3)検査役選任請求

Q11

判例(最決平成18年9月28日会社法判例百選第4版57事件・第3版59事件)によれば、 株主が裁判所に検査役選任の申請(358条1項)をした時点で、議決権の3%以上を保有していたとしても、その後、新株発行により、議決権が3%未満となった場合、会社が当該申請を妨害する目的で、新株を発行したなどの特段の事情のない限り、当該申請は、申請人の適格性を欠くものとして、不適法却下となる。

 

募集株式の発行が公募による場合、判例のいう「特段の事情」が当然に否定されるわけではないが、Sも応募することによって議決権比率の低下を小さくすることができることから、会社の妨害目的が(第三者割当の場合と比べて)認定されにくくなる。

 

※公募による新株発行が不公正発行に該当しにくい旨を判示した裁判例として、東京高決平成29年7月19日金判1532号57頁(出光興産事件)がある。

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Q12

本件のように、検査役選任の申立て後に、第三者割当てによる新株発行を行っている場合、妨害目的(同様にQとの関係での支配権維持目的)が推定されよう。

会社は本件新株発行について、業務提携目的を主張すると考えられるが、(元取締役Aによれば会社の説明は虚偽であり)業務提携の協議は突然開始されたものであることから、主要な目的は妨害目的(・支配権維持目的)であったと考えられる。

よって、上記判例のいう特段の事情に該当し、検査役選任請求は却下されない。

 

 

設例8-1(下)の解説は、以上です。

   

 

 

 

今回のテーマは、試験にも出やすい重要論点なので、詳しめの教科書・判例百選でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

   

 

 

設例8-3の解答例はこちらです 

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