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会社法事例演習教材の解答例Ⅰ-9(設例9-1前半)発起人の権限

こんにちは、コポローです。

今日は会社法事例演習教材(第4版)Ⅰ-9(設例9-1前半)の解答例を紹介します。

テーマは、発起人の権限です。

重要テーマなので、しっかり勉強しましょう! 

量が多いので、前半と後半の2回に分けて解説します。今回は前半です。

 
 

 

 

 

 

(1)設立中の会社と発起人の権限

Q1

 設立中の会社という概念を用いて、次のような理論的説明がなされている。

 

①会社の設立前においても、一定段階からは、営利社団としての実体(会社の胎児のようなもの)が認められる。それは「設立中の会社」と呼ばれ、法的には、権利能力なき社団(法人格なき社団)に該当する。

 

②発起人は、設立中の会社の執行機関であり、発起人が権限の範囲内で行った行為の効果は、設立中の会社に実質的に帰属する(形式的には、発起人(組合)に帰属する)。

 

③設立登記により成立した会社は、設立中の会社と同一の存在であるから(同一性説)、設立中の会社に実質的に帰属していた法律関係が特別の移転行為なしに当然に成立後の会社に形式的にも帰属する。

   

 

 

 

Q2

上述のように、発起人が権限の範囲内でした行為が成立後の会社に帰属するところ、発起人の権限の範囲については、大きく3つの見解がある。学説では、A説またはB説が有力である。

 

A説:会社の設立を直接の目的とした行為(会社の設立に法律上必要な行為)のみが補器人の権限であるとする

 →定款作成、株式の引受け・払込み、機関の選任など法律で定められいる行為に限定

 

B説:上記の法律上必要な行為に加え、設立のために経済上必要な行為(設立事務所の賃貸、事務員の雇入れなど)も発起人の権限に含まれるとする

 

C説:上記の法律上必要な行為・経済上必要な行為に加え、開業準備行為(成立後に予定している事業を円滑に開始するための準備行為。例えば、事業のための使用人の雇用、広告宣伝がある)も発起人の権限であるとする

法律構成としては、開業準備行為の一種である、財産引受けの規定を開業準備行為一般に類推適用する。

   

 

 

 

 

⇒1

判例最判昭和38年12月24日民集17巻12号1744頁および最判昭和33年10月24日会社法判例百選第4版4事件・第3版5事件)は、開業準備行為は発起人の権限ではないとしているので、C説には立っていないが、A説・B説どちらかは不明。

 

⇒2

学説でも、C説はほとんど支持されておらず、A説かB説が有力。

 

開業準備行為まで、発起人の権限であるとして、成立後の会社にその効果を帰属させると、会社が成立した直後から会社が多額の負債を負うことになりかねず、好ましくないと考えれている。 

 

※A説とB説のいずれがよいかについて、学説は拮抗しているような状態である。

A説は、成立後の会社に帰属する法律上関係を小さくして、成立後の会社の財産状態を健全なものとすることを重視している。

B説は、設立中の会社という権利能力なき社団を認めるのであれば、それに応じた実体を与えるべきであるとして、特に設立中の会社と取引する相手方は、成立後の会社が債務を履行してくれることを信頼するであろうから、そのような相手方の信頼を保護する必要があると考える。

→A説とB説のいずれがよいかは、いずれも目的を重視すべきか次第である。 

   

 

 

 

Q3

設立事務所の借り入れは、設立に経済上必要な行為であり、A説によれば発起人の権限に含まれないが、B説・C説によれは発起人の権限に含まれる。

 

Q4

設立事務を行う事務員の雇用も、経済上必要な行為であり、Q3と同じ結論になる。

   

 

 

 

 

Q5

商品の宣伝の請負契約は、開業準備行為にあたり、A説・B説からは発起人の権限の範囲外となる。C説によれば発起人の権限に含まれる。

 

A説やB説であっても、この場合はP社に帰属させてよいとする見解がある。

理論構成としては、成立後の会社が契約をし直したという構成や、禁反言により支払い拒絶が許されないとする構成がある。

 

   

 

 

 

設例9-1の前半の解説は、以上です。

 

今回のテーマは、重要な論点なので、詳しめの教科書・判例百選でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

   

 

 

 

設例9-1後半の解説はこちら 

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