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会社法事例演習教材の解答例Ⅰ-9(設例9-1後半)発起人の権限

こんにちは、コポローです。

今日は会社法事例演習教材(第4版)Ⅰ-9(設例9-1後半)の解答例を紹介します。

テーマは、発起人の権限です。

重要テーマなので、しっかり勉強しましょう! 

量が多いので、前半と後半の2回に分けて解説します。今回は後半です。

   

 

 

 

 

 

前半の解説はこちらです↓ 

kaishahou.hatenablog.jp

 

前回出てきた発起人の権限についての学説を再掲しておきます

A説会社の設立を直接の目的とした行為(会社の設立に法律上必要な行為)のみが補器人の権限であるとする(定款作成、株式の引受け・払込み、機関の選任など法律で定められいる行為に限定)

B説上記の法律上必要な行為に加え、設立のために経済上必要な行為(設立事務所の賃貸、事務員の雇入れなど)も発起人の権限に含まれるとする

C説:上記の法律上必要な行為・経済上必要な行為に加え、開業準備行為(成立後に予定している事業を円滑に開始するための準備行為。たとえば、事業のための使用人の雇用、広告宣伝がある)も発起人の権限であるとする(法律構成としては、開業準備行為の一種である、財産引受けの規定を開業準備行為一般に類推適用する)。

 

※A説とB説が有力で、C説はほとんど支持されていない

   

 

 

 

 

(1)設立中の会社と発起人の権限(承前)

Q6

古い判例(大判昭和2年7月4日会社法判例百選第4版6事件・第3版7事件)は、法定の要件を充足した設立費用の限度内で発起人のした当該取引の効果は当然に成立後の会社に帰属し、取引の相手方は会社に対して支払いを請求できるとしている。

 

しかし、これに対しては、債務の総額が定款記載の額を超える場合に、どの債権者が会社に請求することができるか(按分なのか、早い者勝ちなのか)という困難な問題が生じるため、学説からはほとんど支持されていない。

 

学説は、定款記載の設立費用は、取引相手方との間での責任負担の問題を扱っているのではなく、設立費用を最終的に発起人と会社とでどう負担するかという問題(Q9~11参照)を扱っていると解する。相手方との間でだれが責任を負うかについて、学説は大きく3つに分かれている。

 

①発起人責任説(上記A説に対応):成立後の会社に帰属するのは、設立に法律上必要な行為のみであり、それ以外の行為に基づく権利義務は、会社が成立しても発起人(組合)に帰属し、発起人は法定の手続を経た額の範囲内で会社に求償できるにすぎない。

→B・Cは発起人Aにしか請求でいない。

 

②会社責任説(上記B説に対応):設立中の会社の概念を基礎に、設立に経済上必要な行為は性質上当然に成立後の会社に帰属し、定款記載の額を超えれば、会社は発起人に対して求償できる。

→B・Cは会社にのみ請求できる。

 

③重畳的責任説(上記B説から派生):相手方は会社と発起人のいずれに対しても請求でき、相手方に支払を行った会社または発起人が定款記載の額を基準に求償を行う。

→B・cはいずれに対しても請求できる。

 

 宣伝費は、開業準備行為に該当し、設立に法律上または経済上必要な費用ではないので、開業準備行為を発起人の権限とする見解(上記C説(少数説))に立たない限り、会社に請求することはできない。

このことは、定款に設立費用の記載があっても変わらない。

   

 

 

(2)設立手続に関する行為の発起人個人への帰属

Q7

上記①説・③説なら請求できる。

 ②説だとできない(すべてP社に請求することになる)。

 

※B説・C説だと、発起人の権限内の行為なので、取引の効果は成立後の会社に帰属する。A説だと、発起人の権限外の行為なので、会社には帰属しない(民法117条1項類推は設立費用のところでは出てこない。会社設立に経済上必要な行為は発起人に帰属するとされる)。

   

 

 

Q8

Aに請求する構成は2つ考えれれる。

①Aは無権代理を行ったとみて、民法117条1項類推適用により、Aに請求する。

ただ、この場合、相手方に悪意・過失があれば、Aは責任を負わない(民117条2項)。判例・通説では、開業準備行為は発起人の権限外であるから、悪意・過失が認められる可能性はある。

 

②発起人A個人が行った取引とみて、直接、Aに履行請求する。

発起人が開業準備行為を個人として行い、会社の成立後に会社にそれを売り渡すなどすることは可能である。

 

→①・②のいずれの構成となるかは、Dと取引した者が、設立中の会社なのかA個人であるのかという事実認定の問題に帰着する。

契約書に「設立中の会社P社の発起人として」などと記載されているときにどう解釈するか(無形代理構成とするか、A個人の行為とするか)は難しい問題である。

利害関係人にとって、適切な解決を導くためには、できるだけA個人の行為とみる(②)のが適切である。

発起人はそもそも設立中の会社のために開業準備行為をする権限がないのだから、原則として発起人個人の行為と解釈することは合理的であろう。

 

※本問については会社法判例百選第4版4事件(第3版5事件)の解説も参照。 

 

 

 

(3)設立費用の記載と求償

Q9

 Q6の②③説からは、定款記載の額を超える部分については、P社に求償可能。

①説からは、P社はAの債務を第三者弁済をしたことになり、求償することができるが、定款記載の額はP社が負担することになっているから、結局、超過分の求償となる。

   

 

 

Q10

Q6の①・③説からは定款記載の額だけ、P社に求償できる。

②説からは、AはP社の債務を第三者弁済したことになるが、定款記載の額を超える部分はAが負担することになるから、結局、定款記載の額だけP社に求償できることになる。

   

 

 

 Q11

通説によれば、開業準備行為は発起人の権限外の行為なので、設立費用として求償することができない。

AP間で新たに契約をしてそれに基づきP社は請求するほかない。

 

設例9-1の後半の解説は、以上です。

   

 

 

 

今回のテーマは、重要かつ難解な論点なので、詳しめの教科書・判例百選でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 設例9-2の解説はこちらです

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