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会社法事例演習教材の解答例Ⅰ-9(設例9-4)設立の無効と設立関与者の責任

こんにちは、コポローです。

今日は会社法事例演習教材(第3版)Ⅰ-9(設例9-4)の解答例を紹介します。

テーマは、設立の無効と設立関与者の責任です。

試験に出やすい重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

 

(1)設立の無効

Q1

 

 

設立に際して出資される財産の最低額(27条4号)である1000万円に相当する出資がないことから、設立無効原因になる。

もっとも、不足額の追完があれば、この瑕疵は治癒され、無効原因が消滅する。

 

Q2

 

Bは失権するため(36条3項)、設立時発行株式を一株も引き受けない発起人がいることになり、設立無効原因となる(25条2項参照)。

これは、他の発起人が追完することはできない。発起人の記載を変更した定款に再度、公証人の 認証を受けて設立手続をする必要がある。

 

(2)設立関与者の責任

Q3

 

 

「著しく」不足する場合(本問では、600万円とされた土地が300万円だったという者であり、会社の規模から考えて、著しい不足といえる)、AはP社に不足額について支払う義務を負う(52条1項)。 

 

なお、本件は、検査役調査を経ていないし、募集設立なので、103条1項で52条2項2号が排除されるから、Aを含め、全員、52条2項による免責の余地はない。

 

また、仮に発起設立であっても、Aは現物出資者であるので、無過失の立証による免責はない(52条2項柱書括弧書き。一種の担保責任)。よって、総株主の同意がなければ免責されない(55条)。

 

 

Q4

 

 

 Aは、Dの後見開始の審判を知っていたことから、Dの出資が取り消され払い込みの欠陥が生じることに少なくとも過失がある。よって、53条1項の任務懈怠責任を負う。

もっとも、損害額については2通りの考えある。

①Dの出資予定だった1000万円全額

②発起人の職務は設立のための最低額の確保であり、その差額200万円が損害。

 

会社法は打切設立を認めており、最低額さえ確保すれば設立できる。このことからすると、②の見解は説得的。

 

※なお、いずれの見解によっても、資金不足で事業に支障が出て会社が被った損害は、別途損害額に算入される。

 

 

Q5

発起人は、発起人として定款に署名押印した者(26条1項2項)であり、これをしていないCは発起人ではないが、株式募集広告文書に発起人の肩書をつけてCの氏名が記載されているため(そして、CはABとともにP社設立を企画していることから当該記載をCは承諾していると考えられる。禁反言)、103条2項により、Cは擬似発起人として、会社に対して、52から56条、103条1項の責任を負う。

よって、Aの現物出資の不足額の支払義務(52条1項。検査役調査を経てないので無過失責任)およびDの出資の取消・Bの出資の不履行について任務懈怠責任(53条1項)を負う。

 

会社法制定前は、擬似発起人は発起人ではないので、任務懈怠責任は負わないと解されていたが、会社法103条2項は擬似発起人も任務懈怠責任を負いうることが、文言上明らかになった。もっとも、擬似発起人の任務とは何か明らかでないとの批判もある。

 

 

Q6

Bは失権しているところ、責任を負うべき発起人に該当するかが問題となる。

①一株以上引き受けていることが発起人の要件であるとすれば、Bは発起人でないことになり、発起人の責任を負わない。

 

②一株以上引き受けることは発起人の要件ではなく、発起人の義務にすぎないとすれば、Bは発起人としての責任を負う。

 

会社法前は、①の見解が有力であったが、議事発起人の責任とのバランスが悪い。会社法制定後は②が多数説と思われる。

 

※本件について言えば、たとえ①説のもとでも、Bは擬似発起人ではあるため、議事発起人の責任を負う(Q5参照)。

 

Q7

弁護士F・不動産鑑定士Gは、Aの現物出資の不足額について、P社に支払義務を負う(52条3項、33条10項3号)。ただし、過失がないことを証明したときは、免責される(53条3項但書)。

 

Q8

設立関与者の責任は、設立無効の訴えが認容され、無効判決が確定した場合であっても、消滅しない。設立無効判決は将来効(839条)であり、会社の設立がはじめからなかったことになるわけではなく、一旦設立された会社が清算されることになる(475条2号)。設立過程・設立後に生じた法律関係はすべて有効であり、設立無効判決で無効になるわけではない。

 

 

 

設例9-4の解説は、以上です。

 

今回のテーマは、重要な論点なので、詳しめの教科書でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

 

 

 

 

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