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会社法事例演習教材の解答例Ⅰ-10(設例10-1)株主代表訴訟により追及することのできる責任

 

こんにちは、コポローです。

今日は会社法事例演習教材(第4版)Ⅰ-10(設例10-1)の解答例を紹介します。

テーマは、株主代表訴訟により追及することのできる責任です。

試験に出やすい重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

   

 

 

(1)Aの責任

Q1

判例によれば、請求できる。

代表訴訟で追及可能な責任の範囲(847条1項)については、学説上議論があったが、判例は、会社法上の責任(任務懈怠責任など)のほか、取締役が会社との取引によって負担することとなった債務も、代表訴訟によって追及可能と判示した(最判平成21年3月10日会社法判例百選第4版64事件・第3版67事件)

その理由は、①提訴懈怠の可能性があること、②取締役は取引上の債務についても忠実に履行する義務を負うこと、③平成17年改正前商法266条1項3号の責任との均衡が挙げられる。

 

※上記判例は、平成17年商法改正前の事案に関するものであり、会社法の下では、上記③の理由は当てはまらない。①・②の理由は、取引上の債務以外にも当てはまり、全債務が代表訴訟の対象となるとする全債務説のほうが説得的であるとの指摘も有力である(田中亘『会社法第3版』353頁参照)。

 

※なお、少数説として、代表訴訟の対象となるのは、会社法上の責任に限られるとする見解もある(江頭)。取引債務の履行請求をするかは、経営判断の問題として、取締役に委ねられるべきであることを理由とする。

 

 

Aの任務懈怠責任を請求することも可能であるが、会社が被った損害額が問題である。

会社はAに対して貸付債権を有し続けており、当該債権の額が直ちに損害になるわけではない。

返済が遅れたことによる遅延損害金や運転資金不足で会社が被った損害などが、任務懈怠責任における賠償額となろう。

 

なお、Aへの貸付けは利益相反取引(直接取引)であり、会社に損害がある場合、Aの任務懈怠が推定され(423条3項1号)、Aは無過失責任を負う(428条1項)。

   

 

 

 

(2)就任前の借り入れ

Q2

判例はこの点について明言していないが、提訴懈怠の可能性がある点や、取締役が忠実義務に基づき履行しなければならない点は、就任前の借入金であっても同様であるから、上記判例の理由づけからは、含まれると考えられる。

 

 

(3)借入れ後の退任

Q3

退任後も 代表訴訟は可能である(通説)。

退任後も提訴懈怠の可能性は残りうるし、退任後は代表訴訟ができないとすると、代表訴訟がされそうになったら、辞任して責任追及を回避すればよいことになってしまう。

   

 

 

 

(4)借入金債務の免除

Q4

 免除が無効であれば、代表訴訟は影響なく続けられる。

免除が有効であれば、訴訟物である債権が存在しなくなり、請求棄却となる。

 

⇒1

免除は単独行為であるが、356条1項2号が適用される(通説)。

よって、同号及び365条1項 により、取締役会決議の承認がなければ免除は無効である(承認のない取引の効力については相対的無効説がとられているが、Aは通常は悪意であると考えられる)。

   

 

 

 

 

⇒2

債務免除をしたことが取締役らの任務懈怠であるとして、代表訴訟により損害賠償請求をすることが考えられる。

なお、任務懈怠が推定される(423条3項各号。ただし、Aについては、免除はP社の単独行為であるとして、同1号の推定は働かない可能性もある)。

Aについては428条1項の適用もありえ(解釈論上明確でない。単独行為は自己が取引しているわけでないので適用されない可能性もあろう)、その場合、無過失の抗弁ができなくなる。

 

 

設例10-1の解説は、以上です。

   

 

 

 

今回のテーマは、重要な論点なので、詳しめの教科書および判例百選でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

 

設例10-2の解説はこちら

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