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会社法事例演習教材の解答例Ⅰ-12(設例12-1)支店長名義での取引と名板貸責任

こんにちは、コポローです。

今日は会社法事例演習教材(第3版)Ⅰ-12(設例12-1)の解答例を紹介します。

テーマは、支店長名義での取引と名板貸責任です。

 

会社法総則(商法総則)に関する問題ですが、試験に出やすい重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 


 

 

(1)B個人の責任

Q1

 本件では、Bは自己に効果が帰属する取引として本件取引を行っており、P社に効果を帰属させようとしているわけではない(したがって、無権代理(民117)ではない)。建材の売買契約はCとBとの間で有効に成立しており、当該売買契約に基づいて、CはBに代金を請求することができる。

 

Cが取引相手をP社と誤認していても、結論に影響はない。名板貸人に関する会社法9条は、名板貸人は名板借人と連帯して責任を負うとしている。相手方が誤認していても、契約は名板借人との間で成立し、効果が名板借人に帰属していることを前提としている。

 

(2)P社の責任

Q2

BはP社とは別個独立の事業を行っており、P社の指揮監督を受けていない。よって、Bは、P社の使用人ではないため、表見支配人に関する会社法13条を適用することはできない。 (仙台高判昭和61年10月23日判タ624号218頁参照)

 

※13条はあくまで、「使用人」に適用される。使用人以外の者に類推適用することもできるが、その場合でも、鳥取支店が支店(営業所)としての実質を備えていなければならない(最判昭和37年5月1日商判例百選23事件・通説)。本件では、支店の実質がないので、13条の類推適用も認められない。

 

 

(3)借入れ後の退任

Q3 

下記で検討する通り、CはP社に名板貸し人の連帯責任を追及できる。

 

⇒1

商号に 支店や出張所などの語を付加して使用することを許諾した場合にも、名板貸人の責任が認められる最判昭和33・2・21民集21巻2号282頁(出張所を付加した場合について肯定した))。

 

※なお、商号以外のものを提供したときは、名板貸人の規定ではなく、民法109条の問題となる。

 

 

⇒2

公共工事の受注は、これ自体 が土木建設業であり、P社の事業の一環である。よって、本件では、事業に関して商号を使用することを許諾しているといえる。

 

※なお、名板貸しは危険性が高いため、重要な業務執行の決定として取締役会の決議事項となりうる。もっとも、取締役会決議を欠く業務執行は、相手方が善意無過失なら有効なので(最判昭和40年9月22日会社法判例百選第3版64事件)、問題は少ない。

 

⇒3

Cは 営業主体が異なることについて善意無重過失であればよい。

 ※判例上、重過失は悪意と同様に取り扱われる(最判昭和41年1月27日商判例百選12事件)。

 

CはBが支配人と信じて取引を行っていることから善意であるといえ、極めて疑わしい事情がない限り重過失があったともいえない。よって、Cの主観的要件は充足される。

 

Q4

 P社代表取締役AがBにP社鳥取支店支店長の名義を与え、Bがそれを名乗ってCと取引していることから、P社はCに代理権授与表示を行ったといえる。よって、Cに過失がなければ、Cは表見代理民法109)に基づき、P社に責任を追及できる。

本問でCに過失があったかどうかは不明。

 

 

※Q1で述べたように、Bは代理している意思がなく無権代理ではないため、民法109条・会社法13条が適用されるか疑問もあるが、これらの規定は第三者保護のために適用ないし類推適用できると考えられている(最判昭和35・10・21民集14巻12号2661頁東京地裁厚生部事件))

 

⇒ 

会社法13条は民法9条の特則「的」な規定。要件を満たす限り、いずれの規定も適用できる。

主観的要件の面で、表見支配人の規定の方が有利なので、表見支配人の要件が満たされる場合、民法109条を主張する実益はない。しかし、本件のように(Q2参照)、表見支配人の要件が満たされない場合、民法109条を適用する実益がある。

 

Q5

下記のとおり、登記のないことはP社が責任を負うべきとの結論に影響を与えない。 

 

⇒1

会社法911条3項3号に基づき、 本店所在地にて(同1項)、支店の所在場所についての登記がなされ、918条に基づき、支配人の登記がなされる。

 

加えて、支店の所在地において、商号・本店の所在場所・支店の所在場所の登記がなされる(930条2項3項)。  → 令和元年会社法改正で、支店の所在地における登記の制度は廃止され、これらの規定は削除された。 

※法改正の経緯

会社法制定により、本店の所在地に登記が集中され、支店の所在地における登記は、商号、本店の所在場所、支店の所在場所のみとなった(令和元年改正前会社930条2項)。支配人の登記は、本店所在地の登記所のみになされる。これは、オンライン化により、本店の登記を簡単に見ることができるようになったためである。その後、オンライン化がさらに進み、支店の所在地における登記は必要ないとされ、令和元年会社法改正により廃止された。

 

⇒2

908条2項に基づき、P社は善意のCに対して、P社鳥取支店が「支店」ではないこと、および Bが同支店の支配人ではないことを対抗することができなくなり、そのことを前提に責任を負わなければならなくなる。よって、責任追及は容易になる。

 

⇒3

登記を見ていれば、鳥取支店の不存在に気づくはずで、重過失があるとして名板貸人の責任が否定されうるか問題となる。

しかし、一般に取引をするのに逐一登記を見なければならないとはされておらず、見なかったことが重過失になるわけではない。特に怪しい事情がない限り、登記を見ることは要求されない。

 

※なお、同様のことは、表見支配人に関する会社法13条においても問題となる。

すなわち、支店長をやめたのに支店長として行動していたことを会社が黙認していた(会社13条)が、退任登記はしていた(908条1項により第三者に対抗できる)場合に、13条と908条1項のいずれが優先するかという問題で、会社法13条が優先すると解されており、かつ、ここでも登記を見なかったことが重過失に当たるとは解されていない。 

 

⇒4

 軽過失のある相手方も会社法9条の保護をうけることができる。もっとも、重過失は保護されないので、本件では、重過失があったかどうかが問題となる。

支店は登記しないといけないが、登記しないからといって、支店でないということにはならない(登記の有無は支店の有効性を左右しない。登記しないと過料に処せられるだけ)。

Bではなく本店に問い合わせるべきであったかもしれないが、Bの解答は一応合理的なものであり、さらなる調査をしなかったことをもって重過失があったとはいえない。

 

 

設例12-1の解説は、以上です。

   

今回のテーマは、重要な論点なので、詳しめの教科書および判例百選でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

 

 

 

設例12-2の解説はこちらです

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

 

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