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会社法事例演習教材の解答例Ⅰ-12(設例12-2)事業譲渡と債務の承継

こんにちは、コポローです。

今日は会社法事例演習教材(第4版)Ⅰ-12(設例12-2)の解答例を紹介します。

テーマは、事業譲渡と債務の承継です。

 

会社法総則(商法総則)に関する問題ですが、試験に出やすい重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

 

   

 

 

 

 

(1)事業譲渡における商号等の続用、債務引受けの広告

Q1

①P社からQ社への債務の引受け

② (債務引受けがなかった場合)商号続用者の責任追及(会社22条1項とその類推適用)→Q2~Q3

③(債務引き受けがなかった場合)債務引き受けの広告に基づく責任の追及(会社23条1項)→Q4

 

※まずは①債務引受けがあったかどうかを検討して、なかった場合に、②や③責任を追及することになる。

   

 

 

 

 

Q2

全く同一の商号でなくても、取引通念上、従前の商号と同一の商号を続用したとみられるのであればよい。

ただ、「新」の字を付加することは、取引通念上、継承的字句ではなく、かえって旧会社の債務を承継しないことを示すための字句であるから、商号の続用には当たらないとするのが判例である(最判昭和38年3月1日商判例百選17事件)。もっとも、学説には反対もある。

   

 

 

 

Q3 

最判平成16年2月20日商法判例百選18事件は、

①預託金会員制ゴルフクラブの名称がゴルフ場の営業主体を表示するものとして、用いられている場合で、

②ゴルフ場の営業が譲渡され、譲受人がゴルフクラブの名称を続用しているとき、

③譲受人が譲受後に遅滞なくゴルフクラブ会員によるゴルフ場施設の優先的利用を拒否するなどの特段の事情のない限り、

会社法22条1項の類推適用を認める。

 

その理由は、会員において、同一営業主体による営業が継続していると信じたり、営業主体の変更はあったけれど譲渡人の債務の引き受けがなされたものと信じたりすることは無理からぬものだから、とされている。

ここでは、ゴルフクラブではゴルフクラブの名称で営業主体を認識するのが利用者の考え方であるとされている。

 

※この法理がどこまで及ぶかは問題である。

ただ、22条2項による責任回避のうち、登記は、ゴルフクラブ等において適用できない(ゴルフクラブ続用の登記はできない)。したがって、類推適用の範囲を安易に拡大すると、譲受人にとって不測の不利益を負わせることになるため、問題である。

 

本問でも、①②③の要件は充足されるといえれば、Q社への預託金返還請求が認められる。

    

 

 

 

 

Q4

23条1項の「債務を引き受ける旨の広告」に該当するかが問題となる。該当すれば、Q社に預託金返還請求ができる。

 

・広告といえるか?

→会員全員に出しているので問題ないだろう(新聞などに載せる必要はないだろう)

 

・債務引き受けの公告といえるか?

→かつての判例には、事業譲受けの文字に債務を引き受ける趣旨があるとして、緩やかに23条1項の適用を認めるものもあったが、現在の判例は、単に事業を譲り受けたという内容だけの広告では、債務引き受けの広告に該当しないとしている(最判昭和36年10月13日商判例百選20事件)。

 

本件事例は、微妙で、2通りの解釈(判断)がありうる。

➀施設の利用供与義務の引き受けのみの広告であって、預託金返還債務の引き受けの公告ではないとする解釈

 

②従来通り施設を利用させるということは、従来通り正会員としての地位を認めるということであり、正会員に対する法律関係はすべて承継する旨を意味していることから、預託金返還債務の引き受けの広告に該当するとの解釈

   

 

 

Q5

詐害的事業譲渡において、譲受会社に対し、承継した財産の価額を限度として債務の履行請求ができるとする会社法23条の2が適用される。

※これは、平成26年会社法改正によって導入された規定である(会社分割に関しても同様の規定が設けられた(759条4項等))。

※詐害性の要件は、民法の詐害行為取消権と同様とされている。つまり、預託金返還債務を履行するのに必要な財産がP社から流出したような場合、23条の2が適用される(通常、Q社は但書の善意要件を満たさないであろう)。

※このほか、詐害的な事業譲渡には、詐害行為取消権(民424)、法人格否認の法理を適用することもできる。

   

 

 

 

 

(2)事業譲渡と労働契約関係の承継

Q6

合併などの包括承継では、使用人の個別の同意は不要であるが、事業譲渡は包括承継ではなく、あくまで個別的な権利移転が多数行われているものであり、譲渡される権利義務や契約上の地位の内容は、事業譲渡契約で自由に決めることができる(権利義務や契約上の地位の一部を譲渡の対象としないことも可能である)。 

本件では、B~Gの雇用関係は移転しないこととされているため、B~GはQ社との雇用契約の継続を主張することはできない。

 

なお、大阪高判昭和38年3月26日判時341号37頁(商法判例百選16事件)は、合理的な措置が取られる等、特段の事情がない限り、従前の労働契約が当然に承継される(民625条1項の修正として労働者の同意不要)と判示している。

しかし、これには理論的根拠に乏しいとの批判がある。この裁判例は、労働者保護のために特殊な判断を行った裁判例で、一般の考え方と異なる(当然に雇用契約が移転されるというのは、民法625条に違反する)もので一般化できないと言われている。

→商法判例百選16事件の洲崎博史解説を参照。

   

 

 

Q7

 民商法上の保護は与えられないが、労働法上の保護が与えられる。

 たとえば、不当労働行為(B~Gが労働組合員のためB~Gの労働契約を移転しなかった場合など)や不当解雇の問題として保護されうる。

また、労働委員会は、私法上の権利義務にとらわれることなく、個別具体的な救済措置を与えることができるため、労働委員会による保護もあり得る。

   

 

 

 

 

設例12-2の解説は、以上です。

今回のテーマは、重要な論点なので、詳しめの教科書および判例百選でしっかり復習しましょう!!

 

これで会社法事例演習教材第1部(紛争解決編)の解説は終了です。

 

第2部(紛争予防編)の解答例は下記記事からご覧いただけます。

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