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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-1(設例1-1)株式の払込債務と会社に対する相殺

こんにちは、コポローです。

会社法事例演習教材(第4版)第Ⅱ部紛争予防編の解答例を連載していきます。

 

今回はⅡ-1(設例1-1)の解答例を紹介します。

テーマは、株式の払込債務と会社に対する相殺です。

やや細かいですが重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

   

 

 

 

(1)会社に対する債権と株式払込債務の相殺

Q1

引受人からの相殺はできない(会社法208条3項)。

理由は、「資本充実の要請」である。

 

Q2

会社側からの相殺の可否については、学説が分かれている。

肯定説:208条3項の反対解釈により、会社側からの相殺や合意による相殺はできる。払込金で弁済しても同じ結果になることから、現物出資規制(207条)に従えば認めてよい。また、引受人が無資力になった場合に、会社が相殺できないとすると、会社は出資の履行を受けられない一方、債務は履行しなければならず、かえって会社財産が減少し、本末転倒だからである(田中亘・会社法第3版509頁)。

 

否定説:資本充実の要請から、現物出資以外は払い込みは払込取扱機関に金銭を全額払い込まなければならないと規定されており(208条1項)、この規定がある以上、会社側からの相殺や合意による相殺も認めることは難しい。登記実務も否定説を採用している(払込を証する書面を提出しないと登記申請を受理してもらえない)。

 

(2)会社に対する債権の現物出資等

 Q3

1億円の金銭債権を現物出資する(その結果、P社において混同(民法520条)が生じ、債権は消滅する)。実質は相殺と同じであるが、現物出資規制が適用され、これが認められることに異論はない。

このように、会社から見て、債務が株式に置き換わることは、デット・エクイティ・スワップ(DES)と呼ばれ、企業再生などで利用されている。

 

Q4(難問)

弁済期未到来の債権の評価として、名目額(券面額)で評価していいのか(券面額説)、弁済可能性を考えて実質的な価値を評価すべき(評価額説)かについて、議論がある。たとえば、田中亘・会社法第3版507~508頁参照。

 

直観的には、評価額説が公正に思えるが、そう単純ではない。この債権を第三者に売るときは10の価値だが、P社に現物出資するときはいくら実質価値が10でも、P社は1000払わないといけない立場にある(券面額を払わないと債務は消滅しない)ので、券面額説も成り立ちうる。

実務は、券面額説に立ってきた。その方が検査役調査において、債権の存在と券面額の確認だけでよく、時間や費用がかからず容易だから。また、Q社以外の債権者にとっても名目額で評価された方が有利。

しかし、券面額説では、実質的な有利発行となって、既存株主の利益が害される恐れがある。

このように、どちらの説も一長一短であるが、少なくとも、P社が債務超過で株式の価値がゼロであれば、株主の利益は害されないから、名目額でよいと考えれている。

 

 ⇒

券面額説からは1000株、評価額説からは10株を割り当てるべきことになる。

 

Q5

 弁済期が到来していれば、検査役調査は不要である(207条9項5号)という違いがある。

これは、デット・エクイティ・スワップを用意にできるように会社法制定時に設けられて規定である。

弁済期が到来していれば、会社は弁済しなければならない額が確定しているから、その名目額以下で評価するなら、問題ないと解された。

 

Q6

期限の利益の放棄をして207条9項5号の要件を満たすという手段もありうるが、期限の利益の放棄が取締役の任務懈怠となりうることから、採用しがたい。

検査役調査を不要にする手段としては、弁護士等による価額の相当性の証明をうけること(207条9項4号)や、発行済株式総数が500万株以上であること(同1号)が考えられれる。

 

 

Q7

 債権を現物出資するにあたって、債権の価額の評価の適正性を担保する制度(過大評価を防ぐ制度)としては、次のものがある(②~④が責任制度である)。

①原則として検査役調査が必要であること(207)

②取締役等の価額填補責任の法定(213条1項2項)

→立証責任の転換された過失責任

③弁護士等の証明(207条9項4号)を利用した場合における証明者の責任(213条3項)

→立証責任の転換された過失責任

④現物出資者の差額支払い義務(212条1項2号)

→無過失責任 

※これらは連帯責任である(213条4項)

 

Q8

 ①Q社がP社に1億円を金銭で払い込んで(払込取扱機関に金銭で払込み)、50万株の発行を受けて、P社はその払込金で1億円の債務を弁済する。

※一旦金銭を払い込んでいるので、相殺ではない。ただし、これだと、P社が弁済をしなかったり、弁済したが、詐害行為取消権で取り消されるリスクをQ社が負うことになる。

 

 ②P社が1億円をQ社に弁済して、その後に弁済金をもって、Q社がP社に1億円の金銭出資をする。

※Q社が出資しないリスクをP社が負う。

 

このように、いずれの場合も、どちらかがリスクを負わなければならない。

また、いずれの場合も、最初に1億円の現金を用意する必要がある。

こうしたデメリットを避けてければ、債権の現物出資(デット・エクイティ・スワップ)によるのが賢明である。

 

 

設例1-1の解説は、以上です。

今回のテーマは、重要かつ難解な論点なので、詳しめの教科書でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

 

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設例1-2の解説はこちらです。

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