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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-1(設例1-3)株式の払込金額

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第4版)Ⅱ-1(設例1-3)の解答例を紹介します。

テーマは、株式の払込金額です。

細かい点もありますが重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

   

 

 

 

Q1(⇒の解説も含む)

P社は公開会社なので、取締役会で募集事項を決定すればよい(201条1項)が、199条1項2号で払込金額またはその算定方法を決定しなければならないところ、同号にいう算定方法」は、計算すれば具体的な金額が出てくるものでなければならず(たとえば、閉鎖的な会社で配当還元法の算定式を書く or 一株あたりの純資産額の算定式を書く or 市場終値に一定率を乗じた価額を払込金額とする)、本問における「入札」は算定方法に当たらない。 

 

また、P社株式に市場価格があるのであれば、発行時の市場価格を反映できるように「公正な払込を実現するために適当な払込金額の決定方法」を定めればよい(201条2項)。

具体例としては、ブックビルディング方式(証券会社が機関投資家などの需要を調べて価格を決定するもの)がある。

しかし、入札というだけでは、「公正な払込を実現するために適当な払込金額の決定方法」とはいえない(加えて縁故者を対象にしている点も問題)ので、仮に、P社株式に市場価格があったとしても、201条2項は使えない。

 

Q2

 P社は公開会社であるから、201条3項・4項により新株発行にかかる通知・公告が必要。

なお、201条5項は金融商品取引法上の開示があれば会社法上の通知・公告は不要になるというものであるが、本問では適用がない(問題文に記載されている)。

公告は株主に差止の機会を与えるためになされるところ、本問の「入札による」との公告では入札により決まる価格が公正であるかどうかを判断する材料を株主に提供したことにならず(株主に差止の機会を保障したことにならず)、201条3項・4項において求められる公告に該当しないというべきである。

 

Q3

 本件新株発行には、①差止の機会を与えるだけの公告がないので法令違反(201条3項4項違反)、②払込金額またはその方法を決定していないという法令違反(199条1項2号違反)③なお有利発行なら201条1項199条2項違反という法令違反もある。

 よって、P社株主は210条1号による差止めができる。

 

Q4

公告の欠缺と(公告がないこと以外の)差止事由があれば、新株発行の無効事由となる(最判平成9年1月28日会社法判例百選第4版24事件(第3版27事件))。

最高裁は、本来であれば差止ができたはずなのにその機会が奪われた点を重大な瑕疵と見て、無効事由としている。

本問では、公告の欠缺と上記②の差止事由があるので、新株発行の無効事由がある。

よって、P社の株主は新株発行無効の訴え(828条1項2号)を提起して、本件新株発行の無効を求めることができる。

 

 

 

※第3版までのQ5(この新株発行に疑義を抱くP社の株主は、会社法上、新株発行の効力を争う以外に誰に対してどのような請求を行うことができるか(第4版では削除された設問))の解答例↓

 Aら任務懈怠のある取締役に対して、423条1項の損害賠償責任を株主代表訴訟によって追及する、または、429条1項に基づき損害賠償請求をすることが考えられる。

有利発行によって株主が被った損害が直接損害と解されるなら429条1項、間接損害であると解されるなら423条1項に基づき請求を行うべきことになる。

また、Bら新株の引受人に対して、不足額の支払請求(212条1項)を株主代表訴訟によって行うことも考えられる。この場合、Bらが取締役と通謀して不公正な払込金額で引き受けたことを主張立証する必要がある。

 

 

Q5(第3版まではQ6)

18万円が特に有利な金額でなければ、 小問(3)の修正(最低入札金額を18万円とした入札)によって、本件新株発行は適法になる。

その旨の公告も適法である(最低額が定まっていれば価格の公正性について判断することができる)。

 

※199条5項との関係でも問題とならない。

同項は払込金額(引受人が払い込まなければならない価額として新株の発行決議で定める額(199条1項2号))の均等を求めるが、引受価額(引受人が現実に払い込む金額(104条参照))の均等までは求めていない。

引受価額と払込金額は通常は一致するが、前者が後者を上回ることには問題はない。

 

 

 

設例1-3の解説は、以上です。

今回のテーマは、難解な論点なので、詳しめの教科書・判例百選でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回! 

 

 

 

 

設例1-4の解説はこちらです。

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

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