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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-1(設例1-4)失権株の処理

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第4版)Ⅱ-1(設例1-4)の解答例を紹介します。

テーマは、失権株の処理です。

細かい点もありますが重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

 

 

 

 

 

(1)失権株への対処

Q1

 可能である。失権株を放置してのいわゆる「打切り発行」が認められている(本件では、払込みのあった1万5000株についてのみ新株発行が行われる)。

募集のときは208条5項、株主割当てのときは204条4項が根拠条文となる(本件は後者)。

 

 ⇒

設立時も打切り発行はできるが、出資される財産の最低限度額(27条4号)は必要になる。

また、発起人は一株は引き受けないといけない(25条2項)。

これらを満たさない場合、設立無効事由となる。

 

※なお、打ち切り発行のときも、会社は必要な資金を調達したいので、失権株について

再募集を行うことが現実には多い。

 

Q2

失権分の新株発行は株主割り当てではなく、第三者割当であり、P社は公開会はなので、有利発行でなければ取締役会で取締役会で発行してもよい(201条)。

しかし、本件では、有利発行に該当するので、株主総会の特別決議と有利発行の必要性の説明が必要(199条2項・3項)である。

本件では、それらの手続を行っていないので、本件新株発行は違法である。

 

 

(2)違法な新株発行に対する措置

Q3

有利発行であるのに、株主総会決議を欠くというだけでは、新株発行の無効事由にはならない(最判昭和46年7月16日会社法判例百選第4版22事件・第3版24事件)。

公示の欠缺により差止の機会が保障されていない場合に初めて無効事由となる(最判平成9年1月28日会社法判例百選第4版24事件・第3版28事件)。

本件では、公告があったかは不明であるが、仮にあったとしても、2週間の期間の要件が満たされないので、差止の機会が十分に保障されていなかったとして、無効事由が認められる。

 

 

Q4(⇒の解説を含む)

本件新株発行には199条2項3項違反という具体的法令違反があり、善管注意義務違反の有無を問わず任務懈怠要件が充足される(二元説)。

もっとも、有利発行の場合に、会社に損害があるかは問題である。

会社はもともと1000円で2万株発行するつもりだったのだから、失権株分をAに1000円で発行しても会社に損害があるとは言えないという考え方もある。この場合、株主Bが被った損害は直接損害であり、Bは423条1項により責任追及することはできないが、429条1項に基づき、損害賠償請求をすることができる。

 

しかし、失権株が生じた段階で取締役会は打切発行をするという選択をできたにもかかわらず、そうせずにあえて再募集を選択した以上は、公正な価格で発行するか、有利発行なら、株主総会特別決議を経るべきであったともいえる。

このように考えると、公正な価格との差は会社の損害ということになろう。この場合、株主Bは、423条1項に基づく損害賠償責任を株主代表訴訟により追及することになる。他方、株主Bは間接損害を被ったに過ぎないから、通説によれば429条1項の損害賠償請求をすることはできない。

  

Q5

BはAに対して、通謀引受人の責任(212条1項1号)を株主代表訴訟(847)により追及することができる。

AはP社の代表取締役であるところ、自己と通謀した(引受人としてのAと代表取締役としてのAが通謀した)といえる。

   

 

 

 

 

(3)払込金額が公正な価額である場合 

Q6

公正な価額による発行の場合、201条1項により取締役会によって発行することが可能である。

ただし、201条3項4項で募集事項の通知または公告が必要となる(株主総会が開催されない場合、株主が新株発行があったことを知る機会がないため、このような通知・公告が要求されている)。

 

Q7

本件新株発行は公示を欠く(たとえ公告をしていても期間不足(201条3項))ので、法令違反として差止の対象になる。

しかし、公示欠缺以外の差止事由がないので、無効事由にはならない。

 

Q8

 公正な価額であれば会社・株主に損害はないので、取締役の責任(423条1項・429条1項)や通謀引受人の責任(212条1項1号)は生じない。

 

 

設例1-4の解説は、以上です。

今回のテーマは、難解な論点なので、詳しめの教科書・判例百選でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

 

設例1-5の解説はこちらです

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