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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-1(設例1-5)社債の発行・社債管理者

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第4版)Ⅱ-1(設例1-5)の解答例を紹介します。

テーマは、社債の発行・社債管理者です。

重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

   

 

 

 

 

(1)社債の発行と社債管理者設置義務

Q1

 (a)経営参与権の有無

株主 → あり

(株主には議決権などの共益権がある。無議決権株式でも、議決権と議決権を前提とする権利以外の共益権(株主代表訴訟提起権など)はある。)

 

社債権者 → なし

 (社債権者は社債権者集会の議決権を有する(723条1項)が、716条で社債権者集会の権限は法定の事項と社債権者の利害に関する事項に限定されており、経営参与権があるとは言えない)

 

(b)会社から受ける経済的利益と分配可能額の関係

株主→不確定額(株主総会決議等で決める)の配当(ただし分配可能額の範囲でしか会社は配当できない。会社法461条1項8号)

社債権者→確定額の利息(分配可能額がなくても会社は利息を支払う義務を負う)

 

(c)清算時の優劣

 株主→社債権者を含む債権者に劣後する(会社法502条)

 社債権者→他の債権者と同様の地位に立ち、株主に優先する

 

(d)会社に投資(出資)した財産の返還

株主→原則として、返還されない(株式を第三者に譲渡して元本を回収するほかない)

例外として、会社が自己株式を取得することもあるが、分配可能額規制がかかる(461条1項1~7号・170条5項など)。

社債権者→社債の満期が来たら元本が償還される(分配可能額の有無にはかかわらない)

 

Q2

取締役会(会社法362条4項5号)。

募集事項に加えて、募集社債の総額や利率の上限などの重要事項を取締役会にて決定しなければならない(施行規則99条)。

それ以外の事項は、代表取締役に委任してもよい。

   

 

 

 

Q3

新株発行では、差止めの制度(210条)と無効の訴えの制度(828条1項2号)があり、新株予約権社債についても差止めの制度(247)・無効の訴えの制度(828条1項4号)があるが、社債一般についてはこれらの制度がない。

これは、社債の発行は借財(借入れ)にすぎないので、新株発行のように、株式価値や持株比率に直接影響を与えるわけではないからである。

 

社債成立前において、違法な社債の発行に対しては、一般の差止制度(360条・385条)によらなければならない。これだと、会社に損害が生じることが要件となる。

 

また、社債成立後においては、無効の訴えの制度がないことから、一般原則どおり、いつでも誰でもどのような方法でも社債発行の無効を主張することができる。

(無効の訴えの制度は無効主張の主体・時期・方法を制限する制度であることに注意)

 

もっとも、取引安全への配慮の必要性は社債であっても同じであるから、無効事由は限定的に解するべきであるとされている。募集事項等の決定について取締役会決議を経ていないという法令違反(362条4項5号違反)があるとしても、無効事由になるとは解すべきでないとされている(江頭)。

 

 

Q4

社債管理者を置かなくてよい場合とその理由は、次のとおり。

社債の最低券面額が1億円以上であるとき(会社法702条但し書き)

理由は、大口の社債を取得する者は自己の利益を守ることのできる者(機関投資家などの専門家)であろうから

 

②50口未満の社債を発行するとき(=社債発行の相手方が50人未満)(会社法規則169条)

理由は、一般公衆向けの発行ではないから(社債権者全員が専門家であり、社債権者集会の開催も比較的容易であるので、自己の利益を守ることができる)。

 

社債管理者は、多数・小口の社債権者が存在するときに、自衛が困難であることから、設置が強制されている。①②の場合は、プロ向けの社債であるといえ(金商法の私募に相当する)、社債管理者の設置が強制されない。実務上は①②のいずれかになるようにして、社債管理者を置かないことが多い(不設置債という)。

 

※なお、令和元年会社法改正で、社債管理補助者の制度(714条の2以下)ができた。

社債管理補助者は、権限が必要最小限または比較的弱いものにとどめられ、コストや責任も小さく、使いやすい制度として、創設された。

 

有効 (Q3で述べた通り、無効事由は限定的に解されている(江頭)。

 

なお、714条1項2項類推で2カ月以内に対処しないと、期限の利益が喪失する。

また、過料の制裁がある(976条33号)。

   

 

 

 

 

(2)社債管理者の義務と責任

Q5

 公平誠実義務(704条1項)と善管注意義務(704条2項)

 

社債管理者は社債発行会社との間に契約関係を有し、本来は社債権者との間に直接的な法律関係を有さないところ、会社法社債権者保護のために強行法的にこれらの義務を課している。この2つの義務は、取締役の会社に対する忠実義務・善管注意義務とパラレルであると考えられている。

 

Q6

P社の財産状態が悪化しているのに(社債の弁済ができない危険があるのに)、R銀行はメインバンクの地位を利用して自己の債権を優先的に回収し、社債については放置して回収不能にしていることことから、704条1項・2項違反であり、社債権者は 損害賠償請求をできる(710条1項)

 

Q7

担保提供と支払い停止との間の期間が3か月以内であることから、 710条2項1号に基づき、緩和された要件のもと、損害賠償請求ができる。

 社債権者は、①誠実義務違反がなかったこと、または②損害との間の因果関係がないことについて、証明しない限り、責任を免れられない(710条2項但し書き)。

本件では、R銀行はメインバンクとしてP社の経営状況を把握していたのに、社債管理者としての権限行使を怠ったのであるから、少なくとも①の証明はできない。

   

 

 

 

設例1-5の解説は、以上です。

今回のテーマは、難解かつ重要な論点なので、詳しめの教科書でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

 

   

 

 

 

 

 

 

設例2-1の解答はこちらです

kaishahou.hatenablog.jp

 

社債については、最近出た、下記最高裁判決が注目されています。

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