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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-2(設例2-2)累積的優先株式における累積未払金の縮減

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第4版)Ⅱ-2(設例2-2)の解答例を紹介します。

テーマは、累積的優先株式における累積未払金の縮減です。

やや細かいテーマですが、重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

   

 

 

 

 

Q1

 現在の累積配当金の額は定款に記載されない。よって、累積配当金の縮減は定款変更そのものではない。

 

ただ、累積配当金の縮減は、定款で優先株主に付与された権利の縮減であり、実質的に定款変更に近い。

そこで、法的には、定款変更により、優先株式の内容の変更として、累積配当金の縮減ができる(322条1項1号ロ類推適用)と解するのが多数説である。

手続としては、定款変更のための株主総会の特別決議(466条・309条2項11号類推)と損害を受ける優先株主による種類株主総会の特別決議(322条1項1号ロ・324条2項4号類推) が必要である。

 

 すでに発生した社債の利子についても、社債権者集会の特別決議で減免することができる(706条1項1号、724条2項1号)。ただし、この決議が効力を生ずるには、裁判所による認可が必要とされる(734条1項)。

これに対し、優先株主の累積配当金請求権は、債権者の権利ではなく、株主の権利にすぎないため、株主総会と種類株主総会における多数決で縮減することができる。

 

Q2

 もっとも、少数有力説は、上記の方法によっても、累積配当金の縮減をすることはできないとする。

その理由は、発行時に優先株主に期待を持たせておきながら、あとから多数決によってその期待を奪うことは不公正であるためである。 

 

もっとも、会社法の他の手続を利用することで、実質的に、累積配当金の縮減をすることはできる。

すなわち、全部取得条項付種類株式(108条1項7号)の制度を使って、①累積配当金付の優先株式を全部取得条項付種類株式とする定款変更を行い(111条2項1号・324条2項1号)、②この株式を全部取得条項に基づき取得する決議をする(171条・309条2項3号)。このとき取得の対価として、別の(累積配当金の付いていない)優先株式を交付する。

これにより、実質的に累積配当金を縮減することができる。

ここでは、111条2項の定款変更について株式買取請求権が与えられており(116条1項2号)、取得の段階で、取得対価に不満な株主は裁判所に取得価格決定の申立て(172条1項)を行うことができる。

ここがQ1の肯定説(多数説)との実質的な違いである。

   

 

 

 

Q3

Q社は優先株式の種類株主総会において特別利害関係人となる(累積配当金の縮減により、優先株主の不利益のもと、普通株主は利益を受けるからである)。

よって、Q社は種類株主総会において、議決権を行使することはできるが、著しく不当な決議となれば、決議取消事由となる(831条1項3号)。

Q社は議決権を30%有するから、Q社の賛成で特別決議が成立した可能性が高い。

そこで、本件決議の内容が著しく不当なものであるかが問題となる。

普通株主から優先株主への十分な見返り(たとえば、普通株式の無償譲受け)があるならば、著しく不当とはいえないであろう。

本件では、普通株式の株式併合がされているが、これが見返りといえるかが問題となる(Q4で検討)。

 

 

Q4

本件では、非参加的優先株式であるから、優先株主は優先配当額である300万円(300円×1万株)を超えて 配当を受けることができない。

よって、普通株式が併合されても、意味がない。

 したがって、本件では、見返りなしに累積配当金の縮減の決議がなされており、決議内容は優先株主に一方的に不利益であるから、831条1項3号により決議取消事由となる。

 

 ⇒

仮に、優先株式が参加的であれば、優先配当金の支払い後に、通常の配当に参加できるので、普通株式の株式併合があれば、普通株主は不利益と受け、優先株主は利益を受ける。

この見返りが十分であるといえるならば、著しく不当な決議(831条1項3号)とはいえない。

   

 

 

 

 

Q5

資本金は、分配可能額を算定する時の控除項目であって、資本金が減れば、分配可能額が増えて、配当しやすくなるだけであり、その意味で株主の(間接的な)利益になるにすぎない。

結局、資本減少は、どちらの株主の利害にも直接的な影響を与えない。

よって、資本減少は普通株主から優先株主への見返りとはならない。 

 

設例2-2の解説は、以上です。

今回のテーマは、重要かつ難解な論点なので、詳しめの教科書でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

   

 

 

 

 

設例3-1の解説はこちらです。

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