司法試験・予備試験・ロー入試に向けた会社法

司法試験上位合格者が会社法についてわかりやすく解説します

会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-3(設例3-1前半)新株予約権の用途

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第4版)Ⅱ-3(設例3-1前半)の解答例を紹介します。

テーマは、新株予約権の用途です。

細かい点もありますが非常に重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

今回は設問が多いので、前半と後半の2回に分けて解説します。 

   

 

 

 

(1)ストックオプション

Q1

インセンティブ報酬の趣旨で取締役に付与する新株予約権ストックオプションという。

ストックオプションの発行には、報酬規制(361条)と新株予約権規制(236条以下)の両方の手続が必要になる。 

 

 

※第3版までのQ2では、「報酬規制として、ストック・オプションは会社法361条1項の度の報酬に当たるか?」という設問があった。その解答は、以下の通り。

令和元年改正前は、361条1項1号と3号に該当した。新株予約権の評価額は算定できるので「額が確定している」ので、1号に当たり、金銭でもないので、3号にも該当した。 

令和元年会社法改正の下では、直接ストックオプションを発行する場合は361条1項1号と4号に当たり、一旦金銭を支払う場合は361条1項1号と5号ロに該当する。

なお、いずれにせよ株主総会での説明は必要である(361条4項)。

   

 

 

 

 

 

株式そのものを報酬として付与することはできる(会社法361条1項3号。202条の2(いずれも令和元年会社法改正で設けられた規定))。

 

令和元年会社法改正前は、取締役の報酬として、金銭報酬のみを定めて、金銭報酬請求権(債権)を募集株式の払込みにあてる(現物出資方式と相殺方式がある)という実務が行われていた(改正前会社法では、金銭の払込みを要せずに新株を発行することを認める明文規定がなく、は有利発行にも該当すると考えられていた。)。

このように実務では、実質的には株式が報酬となっているのに、形式上は金銭報酬として扱われていた。

そこで、令和元年改正では、報酬の実態にあわせるための規制、つまり実質的に株式を報酬とする場合についての明文の定めを設けた。

 

詳細は下記の記事を参照

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

 

Q2

取締役報酬として定款または株主総会決議で額(361条1項1号)および上限等(4号または5号ロ)が定められているところ、その範囲内での新株予約権の発行であれば、有利発行とはならない。(たとえば、1000万円の報酬額および100個の上限が定められているときに、評価額1000万円・100個以下の新株予約権の発行は有利発行とはならない。)

定款または株主総会決議で定められた額については、報酬の対価にあたる労務を会社に提供していると評価されるので、報酬規制の範囲内での発行であれば、有利発行とはないされない。

有利発行でない限り、公開会社では、取締役会決議でストックオプションを発行することはできる(240条1項)。

   

 

 

 

金銭による払込みがなされる場合、当該払込金額が、発行時点における新株予約権の公正な評価額(ブラックショールズモデルなど合理的な評価方法に基づく金銭的評価額)を著しく下回る場合に有利発行となる。

 

新株予約権の価値を算定するオプション評価モデルには、ブラックショールズモデルなど様々なものがある(数式は極めて難しいが、計算ソフトがあり、変数を入力すると評価額が算出される)。

評価モデルにおいて用いられる変数として、①行使価額、②株式の時価、③ボラティリティ、④行使期間、⑤金利がある。

新株予約権の価値は、②③④に比例し、①と⑤に反比例する。

 

   

 

 

 

Q3

 監査役は、主として、効率性ではなく、適法性の観点から監査をしていることから、ストックオプションの形で報酬を与えると、監査役に効率性を優先させるインセンティブが生じ、適法性監査に悪影響が生じることがありうるという問題がある。

   

 

 

 

(2)現物の給付

Q4

不要(246条2項)。発行のときの払込みは現物給付でもよい 。

新株予約権が有償で発行されるときは、発行時と行使時の2回の払い込みがある。

 

⇒1

発行時の払込みに係る現物給付については、 検査役調査は不要。検査役調査を要求する条文がないため。

   

⇒2

 新株予約権行使時の払込みも、(新株予約権の内容としてそのように定めていれば)現物給付が可能(236条1項3号、281条2項)。ただ、この場合は検査役調査が必要(284条1項)。

 

※発行時と行使時とで、現物調査の要否に違いがある理由として、会社法の立案担当者は、発行時の払込みは株式発行の払込みとはいえないが、行使時は株式発行の払込みといえるからであるとする(同じような説明は、相殺の可否について新株予約権と株式とで異なることの理由においてもなされている)。

しかし、説得力はない。たとえば、行使金額3万円の新株予約権を7万円で発行するとき、実質は、株式を10万円で発行するのと同じであり、10万円すべてについて現物出資すれば、そのすべてについて検査役調査が必要であるのに、新株予約権を使って2回に払い込みを分ければ、行使段階でしか現物出資規制がかからないのは整合的でない。

 

※なお、資本充実の点でも違いはない。新株予約権を発行したときは、発行価格と行使価格の全額を資本金と資本準備金に振り分けるので、この点も株式の場合と同じである。

よって、現物出資規制や相殺の可否について株式と新株予約権とで違いがあるのは、不整合であり、立法論的には疑問が呈されている。

   

 

 

設例3-1前半の解説は、以上です。

今回のテーマは、難解な論点なので、詳しめの教科書でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

設例3-1後半の解説はこちらです

kaishahou.hatenablog.jp

   

 

 

 

 

kaishahou.hatenablog.jp

kaishahou.hatenablog.jp