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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-3(設例3-1後半)新株予約権の用途

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第4版)Ⅱ-3(設例3-1後半)の解答例を紹介します。

テーマは、新株予約権の用途です。

細かい点もありますが重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

 

 

 

 

 

今回は、長いので、前半と後半の2回に分けて解説しています。今回は後半です。

 

前半の解説はこちら↓

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

(3)敵対的な買収への予防策

Q5

敵対的買収を防止するための新株予約権であり、ポイズン・ピルと呼ばれる。 その効果や狙いは以下の通り。

まず、新株予約権に(d)のような行使条件を付ける。明文の規定はないが、一般に、権利について行使の条件を定めることは可能とされている。

   

 

 

 

⇒1

行使の条件が満たされたとき、経営陣としては、新株予約権が大量に行使されることを望んでいる。そこで、(c)のように行使価格を低くして、多くの人に行使してもらおうとしている(1円で株式が手に入るのであれば、みんな行使するのが普通)。

 

⇒2

本件で新株予約権が全部行使されると、株式総数は3倍になる一方、1株1円で発行するため、会社財産はほとんど増えない。そのため、単純計算で、株式価値は約3分の1にになる(実質1対3で株式分割を行っているようなもの)。さらに、買収者の持株比率も3分の1になる。

このように、大量に新株予約権が行使されると、買収者は買収をあきらめざるを得なくなる。

 

⇒3

敵対的買収者に新株予約権が譲渡されないようにするため(買収者が新株予約権を取得して行使したら上記の効果が弱まる)。

 

会社(経営陣)にとって望ましい買収まで、ポイズン・ピルによって阻止されてしまわないようにするため。好ましい買収者が現れたら、取得条項に基づいて新株予約権を取得して消却する。

※取締役会が適当と認めた場合という取得事由も無効というわけではない。

   

 

 

 

⇒5

理由は大きく3つある。

新株予約権の無償割当て(277)によれば、株主からの申込みを要せずに簡単に新株予約権を無償で割り当てることができる。手続が簡便という利点がある。なお、普通の株主割当てで対価を無償にするのも、実質的には同じだが、これだと株主の申込みが必要になる。

②発行事項の決定を代表取締役の権限とすることもできる(278条3項但書)。これに対し、無償割当て以外の発行だと、少なくとも取締役会決議が必要となる。

③無償割り当て含め、株主割り当ての方法なら、有利発行規制がかからない。

   

 

Q6

敵対的な買収者が現れ支配権争いが具体化した段階(有事の段階)で、支配権の維持・強化を目的として、新株予約権を発行するとき、不公正発行に該当する可能性がある。新株予約権潜在的な株式という点で、新株発行と同様であり、新株発行についての主要目的ルールがここでも該当する。支配権の維持強化を主要な目的とする新株予約権の発行は、不公正発行として、差止の対象になる(247条2号)。

※資金調達のためには、新株予約権よりも新株を発行したほうがよいので、資金調達目的の説得力は相対的に低下する。

 

もっとも、支配権の維持強化が目的でも、例外的に、不公正発行とならない場合もある。

すなわち、買収者が株主共同の利益を害する目的を有する濫用的買収者である場合に、対抗手段として必要性・相当性が認められる場合、支配権維持を主要な目的とした新株予約権の発行も正当なものとして許される。ニッポン放送事件東京高裁決定(東京高決平成17年3月23日会社法判例百選第4版97事件・第3版99事件)を参照。

ニッポン放送事件東京高裁決定は4つの例を挙げているが、その一部については、学説上異論が強い。例外に当たるかについては、慎重に検討すべきであるとされる。

   

 

 

 

⇒1 

不平等な行使条件が付されていることから、株主平等の原則(会社法109条1項)に反するかが問題となる。

このような新株予約権の無償割当てが、 株主平等の原則に違反しないためには、①買収者による会社支配権の取得により株主の共同の利益が害されること、および②当該取り扱いが衡平の理念に反し、相当性を欠くものでないことが必要。

ブルドックソース事件最高裁決定(最決平成19年8月7日(会社法判例百選第4版98事件・第3版100事件)参照

 

取締役会が①の判断をした場合、一般に取締役会には利益相反性があることから、裁判所は厳格な審査を行うことになると考えられる。

ニッポン放送事件でも、主要目的ルールの適用が厳格に行われている。

 

 

⇒2

 株主総会決議で①の判断を行った場合、株主総会の手続に不適正な点があったり、判断の前提となる事実に誤りがあったなど判断の正当性を失わせるような重大な瑕疵がない限り、裁判所は株主総会による判断を尊重することになる(上記ブルドックソース事件最高裁決定)。その理由は、株主共同の利益に反するかどうかを判断する主体としては、株主自身が最も適切だから。

 

ブルドックソース事件では特別決議によって行われたが、最高裁判決の文言からは、普通決議でも足りる可能性がある。(206条の2第4項の決議も普通決議)

 

なお、②の相当性の要件について、ブルドックソース事件では、買収者に新株予約権の取得・譲受けの対価が支払われていたことから、相当性を欠くものではないと判示された。

もっとも、対価を支払うことには、高値買取を狙った濫用的買収者(いわゆるグリーンメーラー)の出現を助長しかねないとして、批判も強い。

対価支払いの要否を含め、相当性の要件の判断については、今後の議論に委ねられている。

   

 

 

 

Q7

平時において、将来の敵対的買収に備えて新株予約権の発行をしておくことが不公正発行にあたるかが問題となる。

主要目的ルール は有事のルールであり、平時には適用されないと考えられている。もし、平時にも適用すると、一般的に行われている安定株主工作も広く違法になってしまう(そのような考え方も理論的にはあり得るが、現在の実務には合わない)。

 

しかし、本件のような新株予約権の発行には、下記の問題があり、主要目的ルールとは別の理由付けで不公正発行とした裁判例がある(東京高決平成17年6月15日判時1900号156頁(ニレコ事件)会社法判例百選第4版A42事件・第3版A38事件)。

 

すなわち、本件の新株予約権の発行は買収と無関係な株主まで損害を被る可能性がある。

割当日後に株式を取得した株主は、新株予約権の割り当てを受けないので、敵対的買収者が出てきたら、3分の1まで、株式価値・持株比率が希釈化されるという損害を被る。

割当日時点の株主(既存株主)も新株予約権に譲渡制限がついており新株予約権を譲渡できないことから、新株予約権発行による株式価値の低下分について、その価値を回収できない。また、敵対的買収者がいつ現れるかはわからないので、当該会社の株式は不安要因を抱え、株価が長期にわたって低迷する可能性がある。

よって、割当日時点の株主(②)も、その後の株主(①)も不利益を被るので、不公正発行に当たるとして差し止められた(247条2号類推) 。

 

※平時に導入可能な防衛策については判例はおろか学説の議論も定まっていない。実務上導入されているものの多くは、事前警告型(買収者に一定の手続に従うことを求め、それに従わないときに対抗措置を採ると警告するもの)というポイズン・ピルに比べると相当穏当なものにとどまっている。

   

 

 

設例3-1後半の解説は、以上です。

今回のテーマは、非常に難解な論点なので、詳しめの教科書と判例百選でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

 

 

 

 

 

設例3-2の解説はこちらです

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