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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-4(設例4-1)株式単位の引上げ

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第3版)Ⅱ-4(設例4-1)の解答例を紹介します。

テーマは、株式単位の引上げです。

細かい点もありますが、重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

 

 

Q1

株式単位の引き上げの方法としては、2つの方法がある。

①株式併合(180条以下)を利用する。

設例では、100株を1株に併合すれば、株式価値も100倍になり、1株10万円程度になる。

180条2項・309条2項4号に基づき、株式総会の特別決議が必要。その際に理由の説明も必要(180条3項)。

 

②単元株制度(188条以下)を使用して、100株を一単元とするように定款変更すればよい。

手続としては、定款変更のための株主総会特別決議が必要(188条1項、466条、309条2項11号)。また、190条により、取締役は単元株制度を必要とする理由を説明しなければならない。

 

P社は株券不発行会社である。

P社株式は上場されているとあるところ、上場企業の株券は電子化されており、すべて株券不発行会社となっている。その結果、株式の譲渡は、株式振替制度の下で、振替口座簿の記録によって行われる。

 

Q2

(a)株主総会特別決議のコスト

どちらの方法でも、株主総会の特別決議が必要となり、理由も説明しなければならないから、コストに違いはない。

 

(b)端数処理のコスト

株式併合では、端数が生じる。端数の合計数に相当する数の株式を競売して、その代金を端数に応じて分配する必要がある(235条1項)。ただ、本件では、株式が上場されており、株式に市場価格があるため、市場価格で売却することや会社が買い取ることも可能(235条2項、234条2項3項)。なお、端数が大量に生じる場合に、それをまとめて市場で売ると、株価が大きく下がる要因になる。

いずれにせよ、株式併合では、端数処理のコストが生じる。

 

他方、単元株制度を利用する場合、端数は生じず、端数処理のコストもかからない。ただし、単元未満株式の買取りに応じなければならないコストとはある。

 

 

(c) 通知・公告のコスト

株式併合では、181条で効力発生の2週間前までに株主への通知または公告が必要。

単元株制度の場合、株主への通知や公告は不要。

 

⇒株券発行会社であった場合

株式併合では、新しい株券と交換するため、株券提出手続が必要になり(219条1項2号)、これには大きなコストがかかる

単元株制度では、株券提出手続は不要。なので、コストは低い。

 

Q3

(a)株主総会の招集通知のコスト

株式併合→従来の100株未満の株主は、株主ではなくなる(端数は発生後ただちに金銭処理される)ので、この者に株主総会の招集通知を送ることは不要となり、コストが安くなる。

 

単元株制度→100株未満の株主は単元未満株主となり、議決権を有さない(189条1項)ので、招集通知は不要となる(298条2項括弧書き、299条1項)。よって、こちらでもコストが安くなる。

 

結論として、いずれにおいても、コストは同程度に軽減される。

 

(b)配当金の支払いコスト(振込手数料等)

株式併合→従来の100株未満の株主は、株主ではなくなる(前述のとおり、端数は発生後ただちに金銭処理される)ので、この者に配当を支払う必要はない。そのため、配当金の支払いのコストも安くなる。

 

 単元株制度→単元未満株主も剰余金配当請求権がある(189条2項6号。施行規則35条1項6号二により定款で制限することはできない)。よって、単元未満株については、配当金の振込手数料等のコストが生じる。

 

結論として、株式併合においてのみ、コストが削減される。

 

Q4

(a)株主権

株式併合→端数は金銭処理されて、株主の地位を失う。よって、株主の利益に重大な影響を及ぼす。

 

単元株制度→単元未満株主は議決権とそれを前提とする共益権(※場合によっては株主優待をもらう権利も)を失うが、それ以外の権利は原則として認められている。しかし、一定の範囲で定款自治により権利の制限ができる(189条2項各号の権利以外は定款で制限できる)。

 

(b)投下資本の回収

 

 株式併合→端数は発生すると直ちに金銭処理されるので(235条)、それにより(強制的にではなるが)投下資本の回収ができる。

 

 単元株制度→単元未満株式の譲渡はできるが、189条2項により、単元未満株式について名義書換請求権(133条1項)を奪うことができる(会社からすると、単元未満株式の譲渡がされるとコストがかかるので、制限したい)。そうすると、単元未満株式は事実上譲渡できなくなる。

そこで、会社法は、単元未満株式の買取請求(192条・193条)により、投下資本の回収の機会を保障している(定款で名義書換請求が否定されているか否かに関わらず認められている。また、財源規制もない)。

 ※また、売渡請求制度(194条)が定款で導入されていれば、売渡請求をして、単元株式にしてから、譲渡することで投下資本の回収をすることもできる。

 

株券発行会社では、単元未満株式に係る株券を発行しない旨を定款で定めることができる(189条3項)。これによっても、譲渡による投下資本の回収は難しくなる。

もっとも、単元未満株式の買取請求は可能で、請求があった場合、会社は株券と引き換えに代金を支払うことになっている(193条7項)。

 

設例4-1の解説は、以上です。

今回のテーマは、重要ですが、細かい論点もあるので、詳しめの教科書でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

 

 

 

 

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