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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-4(設例4-3)株式併合と資本減少

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第4版)Ⅱ-4(設例4-3)の解答例を紹介します。

テーマは、株式併合と資本減少です。

細かい点もありますが重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

   

 

 

 

 

Q1

会社法の下では、株式の消却は保有する自己株式についてのみ、認められている(178条1項)。

よって、本件では、まず、自己株式の取得が必要になる。

 

しかし、本問では、P社は経営不振になっており、自己株式の取得は分配可能額の範囲で行わなければならないという財源規制(461条1項2号・3号、2項)に違反する可能性がある。

資本金の額の減少により、分配可能額を作り出すことも考えられるが、多額の分配可能額を作り出すような資本金の額の減少には、債権者が異議を述べる可能性もある(会社法449条1項)。

よって、株式の消却は現実的ではなく、別の方法により発行株式済数を減らす必要がある。

 

※実際に、資本金の額の減少に債権者が異議を申し立てて、資本金の額の減少が債権者を害するおそれがあるか否かが争われた近時の裁判例として、阪高判平成29年4月27日判タ1446号142頁(会社法判例百選第4版A33事件)がある。

本判決の解説はこちら↓

kaishahou.hatenablog.jp

   

 

 

 

Q2

平成13年改正前商法では、額面株式制度があり、発行済株式総数と資本金の額との間には一定の連動関係があったが、平成13年商法改正で、額面株式制度は廃止され、現在では、発行済株式総数と資本金の額との関係は当然に連動したものとはなっていない。

したがって、発行済株式数を増減させたからといって、当然に資本金の額も増減するわけではない(各制度ごとに見ていく必要がある)。

 

募集株式の発行の場合、発行済株式総数が増加し、原則として、払込みまたは給付された財産の額だけ資本金の額が増加するが(445条1項)、2分の1を超えない額は資本金として計上せずに資本準備金として計上することができる(同条2項・3項)。

 

合併における存続会社の株式発行の場合、発行済株式総数が増加し、原則として、当該株式の時価に相当する額が資本金・資本準備金として計上される(445条5項、施行規則116条9号、計算規則35条・45~48条)。

これはパーチェス法という考え方に基づくものである。詳細は、詳しめの教科書(田中亘『会社法(第3版)』696頁、リーガルクエス会社法第5版450頁など)を参照。

 

株式分割の場合、発行済株式総数が増加し、資本金の額は増減しない(会社財産も増減しない)。

株式併合の場合、発行済株式総数が減少し、資本金の額は増減しない(会社財産も増減しない)。

   

 

 

 

 

Q3

 180条4項の場合を含め、一般に、株主総会で説明される理由に客観的な合理性がある必要性はないと解されている(内容の合理性・当否の判断は株主に委ねられている)。これは有利発行(199条3項)のときも同じである。

これに対して、理由の説明が全くない場合や、虚偽の事実が示された場合は、決議方法の法令違反として、株主総会決議の取消事由となる(831条1項3号)。

 

本問でどう考えるべきであるかは、微妙な問題である。

 本問では、資本金の額の減少を行うために株式数を減らす必要は法律上ないのに、誤った法解釈に基づいてそのような理由が説明されている。これをおよそ意味のある説明がされているとはいえないとして、説明がなかったものと評価するのであれば、上記のように取消事由となろう。

ただ、説明に客観的な合理性を欠く場合にすぎないとして、取消事由とならないとする評価もありうる。

   

 

 

 

Q4

資本金の額が減少すると、資本金は剰余金の控除項目であるので、分配可能額が増え、配当がしやすくなる。

したがって、株主は不利益を特に受けない(むしろ利益になる)。

 

Q5

 株式数が減少しても、会社財産が減少するわけではないので、株式数に比例して、一株の価値は高くなる。

よって、債権者との関係で、株主に不利益が生じるわけではない。

   

 

 

 

Q6

Q4・Q5でみたように、P社の再建策はP社株主の不利益とならないので、Q銀行の要望に沿ったものではない。 

それなのに、要望に沿ったものと誤解して、債務免除に応じると、Q銀行の取締役は善管注意義務違反となる可能性がある。

十分な資料を収集せず、経営判断の前提となる状況を正しく理解しないまま経営判断を行ったといえるのであれば、経営判断の過程に著しく不合理な点があるとして、経営判断原則を適用したとしても、善管注意義務違反が認められうる。

 

経営判断原則については、最判平成22年7月15日(会社法判例百選第4版48事件・第3版50事件)を参照。

 

設例4-3の解説は、以上です。

今回のテーマも、難解な論点なので、詳しめの教科書等でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

   

 

 

 

設例4-4の解説はこちらです↓

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