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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-5(設例5-1)自己株式取得の手続等

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第3版)Ⅱ-5(設例5-1)の解答例を紹介します。

テーマは、自己株式取得の手続等です。

細かい点もありますが、重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

 

(1)市場における取得

Q1

会社が自己株式を取得できる場合は、155条各号に定められている。そのうち最も重要なのは、3号である。3号は、株主総会決議の授権に基づいて、会社が株主との合意で自己株式取得する場合の規定である(他の号は特殊な場合における自己株式の取得の規定である)。3号は、特に場合を限定せず、手続規制(156条から165条)と財源規制さえ守れば、自由に自己株式を取得することができるとしている。

 

Q2

株主との合意による自己株式の取得には、株主総会による授権が原則として必要である(156条)。

もっとも、例外的に取締役会決議だけで自己株式を取得できる場合もある。

本問では、例外として、165条2項・3項の適用が考えられる。これは上場会社向けの例外であり、市場取引と公開買付けによる場合は、取締役会決議だけで自己株式を取得することができることを定款に定めておけばよい。

また、459条1項1号により、一定の要件(①会計監査人設置会社であること、②監査役会設置会社・指名委員会等設置会社・監査等委員会設置設置会社のどれかであること、③取締役の任期が1年以内であること)を満たす会社は、取締役会決議だけで自己株式の取得ができる旨を定款で定めることができる。この制度の趣旨は、その基礎をなす計算書類が信頼に足りるものであり、かつ年1回株主から取締役に対する信任が与えられている場合には、取締役会にこのような権限を与えても、不当な財産流出を招かないと考えられることにある。

165条2項と459条1項1号は重なる部分もあるが、制度の経緯が違うし、459条1項1号は使える会社に上記のような限定がある(もっとも165条2項と異なり上場会社でなくてもよい)一方で、取得の方法として、市場取引と公開買付けだけでなく、いわゆるミニ公開買付け(158・159(Q3参照))でも使える(ただ相対取引では使えない)という違いがある。

 

本問では、P社は上場会社であり、少なくとも、165条2項を利用すればよい。459条1項1号の要件も満たすならこちらも使える。

 

(2)取得の方法

Q3

会社が株主との合意により、自己株式を取得する方法としては、次の3つがある。

①全株主に通知して、全株主に譲渡の機会を与えるという、いわゆるミニ公開買付け(158条159条)

②特定株主からの取得(いわゆる相対取引)(160~164条)

③市場取引および金商法上の公開買付け(市場取引等による株式の取得)(165条)

 

前述のとおり459条1項1号は①と③の方法が使える。

③は基本的に上場会社しか使えない。閉鎖的な会社のために、会社法制定により①の方法が設けられた。

 

Q4

特定の株主から自己株式を取得する(いわゆる相対取得)には、つぎのような厳格な手続が必要となる。

①売主について株主総会の特別決議による承認が必要(160条1項・309条2項2号)。

当該株主総会決議に関して、売主である株主は、(特別利害関係人であるため)議決権を行使できない(160条4項)。

②売主追加請求制度(他の株主が自分も売主に加えるよう議案変更を請求することができる制度)がある(160条2項・3項)

 

②の手続負担は大きい。たとえば、本問の場合、他の株主も買取を要求してくると、Q社から全株式を買い取ることが困難となりうる。

そこで、売主追加請求制度には、いくつかの例外がある(161条以下)。

本問では、次の2つの例外が使える。

(1)P社は上場会社であるからP社株式には市場価格があり、市場価格以下で取得するときは、他の株主に売主追加請求権を与えなくてもよいとされる(161条)。これは、Q社以外のP社株主は市場で株式を売却するとことができ、Q社からは市場価格以下で買っているので、他の株主との関係で不平等も生じない(グリーンメーラーからの高値取得の危険もない)からである。

(2)定款によって売主追加請求権を排除することができる(164条1項)。ただし、定款変更でその定めを設けるには、全株主の同意が必要であり(164条2項)、難しい。この例外が認められているのは、株主全員の同意に基づく定款による場合は、Q社だけからの取得を認めても、他の株主に不測の不利益はないと考えられるから。

 

(3)合併による承継

Q5

P社は自己株式を取得できる(155条11号)。この場合、手続規制と財源規制はない。

このような合併による自己株式の承継はやむを得ないと考えられている。

 

(4)合併による自己株式の割当て

Q6

P社は自己にP社株式を割り当てることはできない。749条1項3号括弧書きにおいて、吸収合併消滅会社の株主から吸収合併存続会社が除かれている。

 

(5)事業の一部譲受け

Q7

事業の全部譲受けであれば、155条10号にもとづき、自己株式を取得できる。

ここでも、手続規制や財源規制は受けない。その理由は、①事業の全部譲り受けのときは、P社株式を取得することになってもやむを得ないこと(合併の場合(Q5)と同様である)、②反対株主には、株式買取請求権があり、株式売却の機会が与えられていること(469条)にある。

 

Q8

事業の一部譲受けの場合は、自己株式の取得はできない(155条10号のような特則規定がない)。

その理由は、①P社株式を譲渡しないことができる(P社株式がなくても、鉄道事業は有機的一体性ある)こと、②事業の一部譲受けのときは、反対株主の株式買取請求権がないので、投下資本回収の機会について、Q社と他の株主との間で、不平等が生じることにある。

 

Q9

事業譲渡手続では、株式を移転させることができないので、別途、合意に基づく自己株式取得として、156条以下の手続によらないといけない。本件では、特定株主からの相対取得なので、160条の厳格な手続も必要(Q4の解説を参照)。また、財源規制も守らないといけない。

 

設例5-1の解説は、以上です。

今回のテーマは、重要ですが、細かい論点もあるので、詳しめの教科書でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

 

 

 

 

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