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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-5(設例5-2)支配権の争奪と自己株式の取得・処分

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第3版)Ⅱ-5(設例5-2)の解答例を紹介します。

テーマは、支配権の争奪と自己株式の取得・処分です。

細かい点もありますが、重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

 

(1)R社への自己株式の譲渡

Q1

第1に、 不公正な自己株式の処分であるとして、差止めを求めることができる(210条2号)。本問のように支配権争奪が具体化した段階(有事の時)に支配権の維持・強化を主たる目的として、自己株式を処分することは、不公正発行となる(主要目的ルール)。

第2に、差止の機会が与えられなかった場合、自己株式処分無効の訴え(828条1項3号)を提起することができる。

※新株発行と自己株式処分の規制はパラレル。

 

(2)防戦買い

Q2

自己株式の取得については、特別な差止規定はなく、一般の差止規定(360条)によるほかない。手続違反はなくても、支配権維持目的での自己株式取得は、善管注意義務違反(法令違反)となって差止事由になる。そして、すでに自己株式が取得された場合、取締役の任務懈怠責任が生じる(423条1項)。

ただし、損害賠償請求はもちろん、差止めについても、会社に損害がなければならない(360条1項。3項も参照)

本件では、株式の実体価値を大きく上回る価格で株式を買い取るので、その差額分は会社に損害があるといえる。

 

P社が市場で自己株式を取得すると、P社の株価が上がり、 Q社が支配権を取得するためには、より多くの金銭が必要になるから。

 

(2)相対による買い受け

Q3

 特定株主から相対で株式を取得するには、厳格な規制がかかる。

すなわち、売主についても、株主総会の特別決議が必要で、売主追加請求制度もある。このように、相対取引に厳格な規制がかけられているのは、株式を買い集めた者(グリーンメーラーが典型)から会社が高値で株式を買い取るようなことを阻止するため。

 

多くの場合は、Q社から買い受けの決議は否決されたり、他の株主からの売主追加請求があるため、このような自己株式取得は妨げられるであろう。

 しかし、株主の無関心などにより、株主総会決議が成立してしまうこともありうる(→Q4へ)。

 

Q4(⇒1と⇒2の2つの場合に分けて検討)

⇒1

自己株式取得手続さえ守れば、会社法上およそ問題はないか(P社は適法に買い取ることができるか)は難問である。

1つの考え方としては、 有効な株主総会決議に基づく以上、手続違反はないが、支配権の維持・強化を目的として自己株式の取得は取締役の善管注意義務違反として差止(360条)や損害賠償責任(423条1項)を基礎づけるという考え方がある。

他方で、取締役には株主総会決議を遵守する義務(355条)があり、有効な株主総会決議がある以上、それを実行しなければならないから、当該取締役の行為に善管注意義務違反があるとして、差止めたり、損害賠償責任を追求したりすることはできないという考え方もできる。

有効な株主総会決議があった場合の法律関係については、いずれの考え方もありえよう。

 

⇒2

 もっとも、そもそも有効な株主総会決議が成立しうるかが問題となる。

831条1項3号による決議取消しが想起されるが、160条4項で、Q社は特別利害関係人として議決権を行使できないので、831条1項3号は通常問題とならない。 

本件では、自己株式の取得が違法な利益供与(120条1項違反)であり、決議内容の法令違反とにあたるとして決議無効事由がある(830条2項参照)と考える余地がある。

 

 120条1項の利益供与が問題となる「株主の権利行使」の典型例は、議決権や質問権の行使・不行使、株主代表訴訟提起権の不行使などだが、株式の売却も「株主の権利行使」に該当しうる。

判例最判平成18年4月10日会社法判例百選第3版14事件(蛇の目ミシン事件))は、「会社から見て好ましくないと判断される株主が議決権を行使することを回避する目的で、当該株主から株式を譲り受けるための対価を何人かに供与する行為」は、株主の権利の行使に関し利益を許与する行為に該当すると判示した。

→本設例における自己株式の取得もこれに該当すると思われる。 

 

違法な利益供与になると、決議内容の法令違反として、決議が無効になるので、当該決議に基づく自己株式の取得も無効となる。

そのような自己株式の取得は差止めの対象となる(360条。株主総会決議なしに行われているので法令違反がある)。

すでに自己株式が取得されていれば、会社は相手方に120条3項利益の返還を請求できる(株主代表訴訟も可能(847条1項))。取締役は会社に対して供与した利益相当額の支払い責任や任務懈怠に基づく損害賠償責任を負いうる(120条4項、423条1項)。

 

※供与された利益の額をいくらと考えるかについては見解が分かれ得る。

①300円の価値の者を1500円で買ったといえるから、差額の1200円が供与された利益とみる考え方(423条1項の損害賠償責任の額はこの考え方に基づき1200円となろう)

②1500円全額が供与されたとみる考え方(120条3項後段はこの解釈に整合的である)

 

 

設例5-2の解説は、以上です。

今回のテーマは、重要ですが、細かい論点もあるので、詳しめの教科書や判例百選の解説でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

 

 

 

 

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