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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-5(設例5-3)財源規制違反の自己株式取得

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第4版)Ⅱ-5(設例5-3)の解答例を紹介します。

テーマは、財源規制違反の自己株式取得です。

細かい点もありますが重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

   

 

 

 

 

(1)取得財源の規制

Q1

自己株式取得は、剰余金配当と統一的な財源規制をうけ、分配可能額を超えて自己株式を取得してはならない(461条1項2号・165条1項(本件の自己株式取得は公開買い付けによる))。

財源規制に違反する自己株式取得については、取締役の責任も問題となる(462条1項)。 

 

※財源規制違反の自己株式の取得が有効か無効かについては議論がある。

会社法の立案担当者は有効説を採る(461条1項柱書の「効力を生ずる」という文言を根拠とする)が、学説の多数は無効説を採る。

 

 

 

 

(2)P社による請求

Q2

462条1項柱書により、P社は、Aに対して、交付を受けた1000万円の支払いを請求できる。

 

Q3

無効説に立つと、P社はAに対して不当利得返還請求権を有する。上記462条1項の責任は、不当利得返還請求権の特則(金銭による返還を定めたもの。P社は民法上の不当利得返還請求はできない)と考えられる。

有効説に立つと、462条1項は法定責任ということになる。

いずれにしても、P社の請求権の内容に違いはない。

   

 

 

 

ただ、問題となるのは、無効説に立つと、AもP社に対して不当利得として株式の返還を請求することができ、これが民法533条類推により、同時履行の関係に立つのではないかが問題となる。

有効説ではこのようなAの主張を排除できる。

もし、このようなAの請求を認めるならば、P社の手元に株式がなければ、株式の時価相当額の金銭を返還することになるが、この時に株価が高騰していれば、P社はAからの返還額を上回る金銭を支払わなければならず、余計に会社財産が流出する(財源規制のために、会社財産が悪化することになりかねない)。

有効説では、Aの不当利得返還請求権および同時履行の抗弁権は生じず、Aが461条1項の責任を履行してはじめて、Aは株式に代位することができる(422条類推)。

 

もっとも、無効説からも、解釈により同時履行の抗弁権を排除できると主張されている。

すなわち、同時履行の関係に立つのは、互いの不当利得返還請求権であり、P社がAに対して有する会社法462条1項の請求権は、不当利得返還請求権の特則としての請求権であり、Aの不当利得返還請求権と同時履行の関係に立たないとする解釈論もありうる。

 

※有効説は、同時履行の抗弁権の問題を容易に回避できる点で優れているが、他方で、①有効説だと、P社が代金を支払っていないときに、Aが履行請求できてしまうという問題がある。

また、②なにより分配可能額がない場合の自己株式取得に係る株主総会決議は内容の法令違反で無効であるのに、なぜ無効な決議に基づく自己株式取得が有効となるのかについての理論的な説明が困難である。

 

したがって、あえて有効説を採る必要はなく、学説では、無効説が多数となっている。

※もっとも、田中亘『会社法(第3版)』456頁は、有効説の方が様々な場面で簡明な解決となるとして有効説を支持する。

   

 

 

 

 

(3)Aによる請求

Q4(⇒も含む)

Aの側からの自己株式の返還請求は、有効説からは認められない。

無効説を採った場合には、Aの側からの自己株式取得の無効主張は認められるかという問題になる。

学説の多数説では、自己株式取得規制の趣旨は、会社財産の維持や株主の平等など、会社側の利益を保護することにあることから、無効主張ができるのは会社側だけであると解されている。

この理解によると、Aからの返還請求は認められない。

 

他方、A側からも無効主張をできるとする反対説も有力である(江頭説)。

違法に取得した会社側が無効主張をすることは期待できないので、会社側に限ると誰も無効主張しなくなるので、相手方からの主張も認めるべきであるとする。

※この理解だと、株価が上昇したときに相手方が機会主義的に返還請求をしてくる可能性がある。信義則によって無効主張を封じることになろう(場面は異なるが、財産引き受けの無効主張に関する、最判昭和61年9月11日会社法判例百選第4版5事件・第3版6事件参照)。

 

 

 

 

 

 

設例5-3の解説は、以上です。

今回のテーマも、難解な論点なので、詳しめの教科書等でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

   

 

 

 

 

設例6-1の解説はこちらです↓↓

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