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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-6(設例6-1)株主提案権

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第3版)Ⅱ-6(設例6-1)の解答例を紹介します。

テーマは、株主提案権です。

細かい点もありますが、重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

 

(1)提案株主の株主総会欠席

Q1

本問において、監査役の解任の提案は議題の提案(303条2項)であり、取締役Bの選任の提案は議案の提案(305条1項)である(取締役選任を議題とすることは取締役会が決定しており、Aは取締役選任議題の提案は不要である)。

株主提案に株主の出席は要求されていない。よって、Aが株主総会に欠席しても、適法に提案された議題・議案は付議されなければならない。提案を無視した場合には、決議に瑕疵が生じるかどうかが問題となる(Q2・Q3へ)。

 

社債、株式等の振り替えに関する法律(以下、振替法という)における振替株式 については、株主が少数株主権等(振替法147条4項)を行使する場合、株主名簿の対抗要件に関する規定(会社130条1項)が適用されず(振替法154条1項)、個別株主通知(自己が口座を有する口座管理機関を通じて振替機関に申出をすることにより、保有振替株式の種類・数等を会社に通知してもらうこと)が必要になる(154条3項)。

 

※参考裁判例として挙げられている最判平成22年12月7日会社法判例百選第3版17事件は、全部取得条項付種類株式の取得価格決定申立権(172条1項)は少数株主権等(振替法147条4項)に該当し、その行使には(裁判で争われた場合にはその審理の終結時までに)個別株主通知が必要であると判示した。

 

Q2

Aの提案は、計算書類の承認決議には関係ないので、同決議に瑕疵はない。

他方、Aによる取締役選任議案の提案は、取締役選任決議に密接に関連するので、Aの提案を無視したことは瑕疵になる。

問題はその根拠である。305条1項の文言は 提案を招集通知に記載することを義務づけているところ、本問では、招集通知には記載されているので、文言自体には反しない。しかし、同項は招集通知に記載するだけでなく、付議すべきことも当然に予定していると思われる。そうだとすれば、305条1項違反による決議方法の法令違反(831条1項1号)として、決議取消事由となろう。

仮に、そのような解釈ができないとしても、決議方法の著しく不公正(831条1項1号)として決議取消事由となろう。

 

Q3

Aは議題提案権は行使したが、議案提案権は行使していない。 

そもそも、議案の提案なしに事前に議題だけ提案できるかが問題となる。議案がなければ株主総会で決議できない(取締役がわざわざ適当な議案を作って提出する必要はない)。

ただ、議案は総会に出席して提案することもできる(304条)。よって303条2項で議題だけ招集通知に載せておいてもらって議案は総会に出席して提案することができる。

※ただし、P社が書面投票制を採用していると話は変わってくる(後記(3)で扱う)。

 

よって、議題だけ提案した者は、少なくとも当日に出席して議案を提案すべきであるところ、Aは欠席して議案を提案していないため、議長は当該議題を審議の対象から除外してよいと考えられる。したがって、本問において議長がとった措置は適法である。

 

もっとも、P社の監査役がCのみであるときは、議題だけで議案の内容も特定されるため、議題提案によって議案の提案もあったと解する余地(303条2項で解任の議題が提案されたら、305条によるCの議案提案もされたと解する余地)がある。

このように解すると、提案を無視した場合、過料の対象となる(976条11号)。

もっとも、議題が無視された場合、当該議題に係る決議は存在しないので、決議取消しや決議無効・不存在の問題にはならない。

 

(2株主総会の議場での提案

Q4

304条により株主は総会の場でも議案を提案できる。これを無視すると、決議方法の法令違反(304条違反)となり、決議取消事由になる(831条1項1号)。 

 

Q5

309条5項により、取締役会設置会社で招集通知に記載されていない事項を議題として決議することはできない。株主は招集通知記載の議題を見て、出席するかどうかを判断するため。

よって、総会当日に、監査役の解任を議題とすることはできず、議長は、審理の対象から除外してもよい。

 

(3)書面投票・電子投票制度と株主提案権

Q6

 Q2と同じ。議案提案を無視してなされた株主総会決議には取消事由がある。

 

Q7

書面投票を行うときは、301条1項により、取締役は株主に対して、株主総会参考書類と議決権行使書面を交付しなければならない(電子投票の時も同じ。302条)。

そして、両書面の内容は法律で定められており、参考書類には議案の記載が要求され(施行規則73条1項1号)、議決権行使書面には議案ごとに賛否を記載する欄を設けなければならない(施行規則66条1項1号)。 

よって、書面投票・電子投票の場合は、あらかじめ議案まで招集通知の際に示す必要がある。よって、書面投票・電子投票を行う会社においては、総会当日に議案を提案することはできない。そのため、議題だけの提案は、拒否することができる(招集通知に載せる必要はない)。

ただし、ここでも、監査役が1名だけなら議案提案もあったと解する余地がある(Q3⇒参照)。

 

Q8

 事前に提案せず、総会当日にいきなり監査役の解任と取締役Bの選任を提案したとき、

監査役の解任について株主総会で提案できないのはQ5で解説した通り(書面投票・電子投票であっても変わりはない)。

他方、取締役Bの選任については難問。

参考書類にはBの説明はないし、議決権行使書面にBの選任について賛否の欄はないので、書面投票・電子投票において、株主はBについての賛否の意思を表明する機会を与えられていない。よって、1つの考え方として、総会の場で、候補者の追加提案はできないと考えることができる(書面投票・電子投票では当日の議案提案はできないとする考え方)。

しかし、多数説は、これを議案に対する修正動議であるとして、候補者Bの追加提案はできると解している。この場合には、株主には取締役選任の件という議題は示され、原案についての株主の意思表明はされているので、修正動議として取り扱って問題はないとされている。よって、議長は、提案を議事にかけるべきことになる。

※修正動議については、次回(設例7-2)で取り扱う。

 

設例6-1の解説は、以上です。

今回のテーマは、重要ですが、細かい論点もあるので、詳しめの教科書でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

 

 

 

 

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