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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-6(設例6-2)取締役の説明義務、修正動議と書面投票

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第4版)Ⅱ-6(設例6-2)の解答例を紹介します。

テーマは、取締役の説明義務、修正動議と書面投票です。

重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

   

 

 

 

(1)説明義務と説明拒否事由1

Q1

株主総会の目的(議題)には決議事項だけでなく報告事項も含む。よって、報告事項について説明義務を負う(314条参照)。

なお、報告事項に係る説明義務に違反しても、取り消すべき決議は原則ない(976条9号で過料の制裁はある)。

しかし、他の決議事項(本問では1号議案・2号議案)に関係する場合、当該決議の取消事由にはなりうる。

 

本件で、計算書類の内容が決議事項でなく報告事項であるのは、会社法439条による。すなわち、P社は大会社かつ公開会社であり、会計監査人を設置しなければならないが(328条)、会計監査人設置会社では、一定の要件を満たせば、計算書類は定時株主総会の承認を要せず、定時株主総会への報告で足りる。

   

 

 

 

Q2

314条但書きにあるように、議題との間に関連性がなければ、説明を拒んでもよい。

本件では、計算書類と事業報告が報告事項となっており、大阪支店での取引は本件計算書類や事業報告に関連性はある。よって、議題関連性がないとして説明を拒否することはできない。

もっとも、詳細な説明が求められ、調査を要するときは、調査が著しく容易なときを除き、 説明を拒める(施行規則71条1号本文)。支店の取引の詳細な内容は、普通は調査しなければ答えられないので、説明を拒否することができるだろう。

   

 

 

 

 

Q3

相当の期間前に質問状が送られていれば、調査を要するという理由では説明を拒否することはできない(71条1号イ)。

もっとも、要求される説明の程度としては、 株主が報告事項の内容を理解するのに客観的に必要と認められる範囲で、大阪支店の取引について説明すれば足りる。314条は「必要な説明」を義務づけている。よって、あまりに少額の取引についてまで説明する必要はない。

 

(2)説明義務と説明拒否事由2

Q4

 新製品の内容は企業秘密にあたるといえ、314条但し書きの株主の共同の利益を著しく害するものとして、説明を拒否できる。

※Q3でも、支店の取引の詳細が企業秘密にかかわる場合は、同様に説明を拒否できる。

   

 

 

 

※第3版までのQ5「業績予測に関して取締役は説明義務を負うか?」の解答例は下記のとおり。

 将来の業績予測は、剰余金の配当の件、任意積立金その他剰余金の処分の件と関連性がある(たとえば、業績が悪化しそうであれば、配当を減らして内部留保しておくことに一定の合理性がある)。よって、議題との関連性はある。

ただ、ここでも、株主が報告の内容を理解できる程度で、および議決権行使の判断に客観的に必要な限度で、説明すればよい。

それを超える説明は、必要性がないとして、拒否することができる。

   

 

 

 

 

Q5

株主が指名する取締役が行う必要はない。

取締役の資質や適性をテストすることが、説明義務制度の目的ではないから。

あくまで、決議事項について株主が議決権行使の判断をできるため、および、報告事項について株主が理解できるために、必要な情報を株主に提供することが、説明義務制度の目的である。

よって、株主には特定の取締役を指名して説明を求める権利はない。

   

 

 

 

 

(3)書面投票と修正動議 

Q6

P社は議決権を有する株主が1000名以上いるため、書面投票が強制される(298条2項)。298条2項の趣旨は、 株主数が多いと、株主が地理的に分散している可能性が高く、多くの株主が株主総会に出席しにくいから。

①書面投票では、議決権行使書面に議案ごとに賛否を記載する欄を設けなければならない(施行規則66条1項1号)。

なお、棄権の欄を作るかは、会社の裁量であり(同号括弧書き)、上場会社では一般に棄権の欄は作られていない。

②株主が賛否の記載をしないで議決権行使書面を提出した場合、会社は各議案について賛成・反対・棄権のいずれかの意思の表示があったものと取り扱う旨を記載できる(施行規則66条1項2号)。

→ほとんどの上場会社の議決権行使書面には、会社提案について「賛成」として取り扱う旨の記載がある。

   

 

 

 

 

 

Q7

修正動議があった場合、書面投票は、修正動議に対してはなされていない。そこで、どう扱うかについて、見解の対立がある。

 

A説(学説多数か)は、修正動議への賛否が不明である以上、すべて棄権票として扱うべきとする。

 

B説(実務・前田庸説)は、原案に賛成した書面投票は修正動議には反対とみなし、原案に反対した書面投票には修正動議には賛否不明なので棄権とみなす。

 

しかし、B説には、原案に賛成した人が修正動議に反対するかはわからない(たとえば、剰余金の配当について、30円の配当に賛成した人が50円の配当に反対するかはわからない)との批判がある。わからない以上、棄権とするのが合理的であると学説多数は考えている。

 

もっとも、A説とB説の対立は、結論に差をもたらさない。決議の成立に必要な多数があるかは、出席株主の議決権中、賛成が過半数(特別決議なら3分の2超)かどうかで決まり、棄権票も出席株主にはカウントされる。よって、棄権票は法的には反対票と同じことになる。

 

このように、総会当日に修正動議を出したところで、書面投票はすべて賛成票にはならない。書面投票の賛成が欲しいなら、305条の事前提案を行って、招集通知に議案を掲載してもらう必要がある。これが、305条の事前提案権の実質的な意味である。

 

※超少数説として、修正動議に際して書面投票はすべて欠席扱いすべき(定足数にも不算入)との見解もあるが、現に出席した者だけで決定するのは、資本多数決の原則に反する結果になりかねず、妥当でない。

   

 

 

 

 

Q8

 株主は総会当日に議事運営に関する動議を提案することができる。(例、議長の不信任、総会の延期など)

こうした議事運営に関する動議は、会議の目的事項ではなく、あらかじめ招集通知に議題として書かれていなくても 提案できる(そもそも、性質上、あらかじめ招集通知に掲載しておくものではない)。

 こうした議事運営に関する動議は、現実の出席者の決議で行うものとされている。書面投票をした株主は、議事運営の動議 について、意思表明していないので、棄権ではなく、欠席として扱うべきであると考えられている。

もっとも、動議に備えて、事前に会社が株主から委任状を取得することは認められており(出席には委任状による代理出席も含まれる)、上場企業では、大株主(機関投資家など)から事前に委任状を取得するという実務が行われている。

よって、上場企業で、このような動議を行っても、成功することはほとんどない。

   

 

 

 

 

(4)株主総会資料の電子提供措置

Q9

株式会社は、株主総会参考書類等の内容である情報について、電子提供措置をとる旨を定款で定めることができる(325条の2柱書)。なお、登記も必要(911条3項12号の2)。

 

電子提供とは、電磁的方法により株主が情報の提供が受けることができる状態に置く措置であり、具体的には、ウェブサイトに株主総会参考書類等の内容を掲載し、株主が閲覧・ダウンロードできる状態にすること(施行規則95条の2)。

 

非上場会社では、電子提供措置を導入するかは定款自治に委ねられる。

他方、振替株式を発行する会社(=上場会社)は、電子提供措置をとる旨を定款で定めなければならない(振替法159条の2第1項)。さらに、改正会社法施行日時点で、振替株式を発行している会社(上場会社)は、当該定款変更決議があったとみなされる(整備法10条2項)。

   

 

 

 

 

電子提供措置をとる旨の定款の定めのある会社の株主は、電子提供措置事項を記載した書面交付請求をできる(325条の5第1項)。

取締役は招集通知に対して、書面交付請求をした株主に対して、電子提供措置事項を記載した書面を交付しなければならない(同2項)。

 

株主総会資料の電子提供措置は、令和元年会社法改正で創設された制度です。詳しくは、下記記事で解説しています。

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

設例6-2の解説は、以上です。

今回のテーマは、重要ですが、細かい論点もあるので、詳しめの教科書でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

   

 

 

 

設例6-3の解説はこちらです

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