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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-7(設例7-1)指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社への移行

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第4版)Ⅱ-7(設例7-1)の解答例を紹介します。

テーマは、指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社への移行です。

細かい点もありますが、重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

   

 

 

 

(1)社外取締役の設置

監査役会設置会社(公開会社かつ大会社に限る)で、有価証券報告書提出会社は、社外取締役を設置する義務がある(327条の2。違反すると過料(976条19号))。

よって、移行前のP社(監査役会設置会社で、資本金7億円の大会社)は、公開会社で有価証券報告書提出会社であれば、社外取締役を置かなかればならない。

 

会社法上、社外取締役を置かなければならないのは次の4つの会社。

①上記の327条の2が適用される会社、②監査等委員会設置会社(331条6項)、③指名委員会等設置会社(400条3項)、④特別取締役による取締役会制度を採用する会社(373条1項2号)。

 

※なお、コーポレートガバナンスコードでは、東証プライム市場上場会社は3分の1以上(それ以外の上場会社は2名以上)の独立社外取締役を置くべきであるとされている(原則4-8)。

   

 

 

 

(2)執行役と取締役・各委員会委員との兼任

Q2

 取締役と執行役の兼任はできる(402条6項)。

なお、415条は取締役は業務を執行できないとされているが、402条6項は415条の別段の定めになる。

 

※兼任が認められている理由

監督強化のためには兼任禁止がよいようにも思われるが、実効的な監督を行うには業務執行に関する情報が必要であり、執行役を兼任している者がいる方が、業務執行の状況や会社の内情を知ることが容易になって、むしろ監督権限の適切な公使ができる可能性があるから。

 

指名委員会等設置会社の取締役は使用人を兼任できない(331条4項)。

理由として、①使用人は執行役から指揮命令を受ける立場にあるので、取締役が使用人の地位を兼ねると執行役に対する適切な監督権限を行使することが期待できないこと、②執行役の影響を受けないように取締役の報酬は報酬委員会で決定することとなっているのに、使用人分の給与の形で執行役が影響を及ぼすことができるとすると、報酬規制が潜脱されるおそれがあることがある。  

   

 

 

 

Q3

執行役は使用人を兼務することができる(404条3項後段参照)。

これは、代表取締役や業務担当取締役が使用人を兼務できるかという問題とパラレルである。

これらの者は、自分自身で業務執行権限を持つので、それに加えて使用人の地位を認める必要性は乏しい(指名委員会等設置会社でも執行役と使用人の兼任を認める必要性はない)。

ただ、認めても弊害はないので、会社法上は禁止されていない。 

 

もっとも、執行役が使用人を兼ねるとき、報酬規制の潜脱が行われないように、報酬委員は使用人分の給与を含めて執行役の報酬額を決めなければならない(404条3項後段)。

   

 

 

 

Q4

 指名委員会、報酬委員会については過半数社外取締役であればよい(400条3項、2条15号)ので、執行役が兼任することはできる(執行役は社外取締役にはなれない)。

監査委員については、これに加えて、400条4項の制限があり、執行役は兼任不可となっている。

監査委員は、監査役会設置会社監査役に相当する機能を果たすので、監査役の兼任禁止(335条2項)と同趣旨の規制が及ぼされている。

 

 

(3)指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社の取締役等の任期 

Q5

 明文で手当てがされている(332条7項1号)。すなわち、指名委員会等設置会社となる旨の定款変更の効力が生じたときに取締役の任期は満了する。

よって、指名委員会等設置会社へ移行する定款変更と一緒に取締役を選任し直す必要がある。

   

 

 

 

Q6

指名委員会等設置会社の取締役の任期は1年(332条6項。正確には選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに係る定時株主総会終結時まで(以下では省略))。なお定款・株主総会決議で短縮可能(332条1項但書き)。

※一般には332条1項で取締役の任期は2年。

 

執行役の任期も1年(402条7項。定款で短縮可能)。

執行役は取締役会により選任されるので、取締役の任期に連動して1年となっている。

 

 

Q7

監査等委員会設置会社の取締役の任期は、①監査等委員である取締役と、②それ以外の取締役で異なる。

②の取締役の任期は1年(332条3項。定款で短縮可能)。

①の取締役の任期は2年(332条1項。定款で短縮不可!(332条4項)監査役の任期が定款で短縮できない(336条1条)のと同じ。)

①の取締役の任期が2年で短縮できないのは、監査等委員の地位の強化のため。

   

 

 

 

監査役会設置会社の取締役の任期は2年(332条1項。2項も参照)。 

 

任期が異なることについての沿革的な理由は次のとおり。

会社法制定前は、委員会等設置会社では取締役会のみで利益処分(剰余金の処分)を決定できるとしていた。

その代わり、定時株主総会で毎年取締役の信任を問うために任期は1年とされた。すなわち、株主は配当について意見表明できなくなるかわりに、取締役の信任をこまめに問うものとされた(なお、会社法の下では、指名委員会等設置会社に限らず、監査役会設置会社でも会計監査人設置会社であって取締役の任期が1年以内なら、定款の定めで取締役会限りで剰余金配当ができるようになった(459条1項))。

これが今の指名委員会等設置会社に引き継がれている。

 

理論的な説明としては、次のとおり。

指名委員会等設置会社はモニタリングモデルの制度であり、執行と監督が分離し、株主は執行役を直接監督できないので、取締役に対する株主の信認を確かなものにするために取締役の任期を短くしていると説明できる。

監査等委員会設置会社も、モニタリング・モデルとして利用することが想定されることから(Q9⇒参照)、指名委員会等設置会社と同様に取締役への信認をこまめに問うために、取締役の任期が1年となっている。

   

 

 

 

(4)取締役会の権限

Q8

指名委員会等設置会社は、モニタリングモデルの制度であり、執行と監督の分離という考え方の下、取締役会は広い範囲で業務執行の決定を執行役に委任できる。

具体的には、監査役会設置会社では、広く362条4項柱書および各号の重要な業務執行の決定を委任することができないが、指名委員会等設置会社では、重要な財産の処分や多額の借財の決定は執行役に委任でき、委任ができない事項は狭い範囲で限定列挙されている(416条1項各号・3項、4項各号参照)。

※詳しくは、田中亘「会社法」第3版327頁の図表4-18参照。

   

 

 

 

Q9

監査等委員会設置会社でも、法律上は原則として、監査役会設置会社の取締役会と同様、重要な業務執行の決定を取締役に委任することはできない(399条の13第4項)。

 

 しかし、①取締役の過半数社外取締役である場合、または②定款でその旨を定めた場合は、指名委員会等設置会社の場合と同様に、399条の13第1項各号および5項各号に定める事項を除き、取締役会決議により、重要な業務執行の決定を広く取締役に委任することができる。

このように監査等委員会設置会社では、①の場合だけでなく、②定款の定めのみで簡単に、モニタリングモデルの制度(執行と監督の分離)を採用することができる(②の点は立法論としては批判もある。江頭『株式会社法8版』612頁参照)。 

   

 

 

(5)代表執行役等の専断的行為

Q10

本件で、3億円の借り入れは、たとえ取締役会規則がなくても、多額の借財(362条4項2号)にあたり、法律上取締役会決議が必要となる(取締役会規則があれば、なおさらである。多額の借財や重要な財産の処分については、最判平成6年1月20日会社法判例百選第4版60事件参照)。

 

これを取締役会決議なしに行ったとき、判例最判昭和40年9月22日会社法判例百選第4版61事件・第3版64事件)は民法93条但書(現行民法93条1項但書)の類推適用という法律構成を採用しており、相手方は善意無過失であれば保護されることになる。

 

他方、学説では349条4項類推適用で、軽過失があっても(悪意・重過失がなければ)相手方は保護されるべきだと考える見解が有力である。

   

 

 

 

Q11

 指名委員会等設置会社で代表執行役の専断的行為の効果がどうなるかは難問である。

指名委員会等設置会社では、取締役会の決定事項は広く執行役に委任できるし(専決事項ではない)、実際にそうされていることが少なくない。 

指名委員会等設置会社はもともと意思決定権限を大幅に執行役に委任できるようにした制度であり、執行役に強大な権限を与える代わりに取締役会の監督権限を強化している。

よって、多額の借財も、本問のような取締役会規則がなければ代表執行役に委任されているはずである(本問の取締役会規則は法律上執行役の権限内にある行為を取締役会決議で内部的に制限した場合と類似する)。

 

このように、法律上は権限の範囲内である行為を内部的に制限した場合と見るならば、420条3項で349条5項が準用されており、それが(類推)適用されることになる(その結果、善意(・無重過失)の第三者には権限の制限を対抗できないことになる)。

   

 

 

 

Q12

 本問では、社外取締役過半数の要件は充足できないと思われ(問題文参照)、定款の定めにより取締役へ多額の借財についての権限を委任することが考えられる(Q9⇒の解説参照)。

 

定款の定めがある場合(モニタリングモデルが採用されている場合)、取締役会規則による権限の制約は、指名委員会等設置会社と同様に349条5項の適用(準用ではない)によって解決すべきであろう(Q11参照)。

 

定款の定めがない場合(かつ社外取締役過半数でない場合)、モニタリングモデルは採用されておらず、362条4項2号違反として、Q10と同様に考えるのが自然であろう。

 

 

設例7-1の解説は、以上です。

今回のテーマは、重要ですが、細かい論点もあるので、詳しめの教科書・百選解説でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

   

 

 

 

 

設例7-2の解説はこちら↓

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