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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-7(設例7-2前半)指名委員会等・監査等委員会

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第4版)Ⅱ-7(設例7-2)の解答例を紹介します。

テーマは、指名委員会等・監査等委員会です。

重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

設例7-2は大変長いので、前半と後半にわけて解答例を掲載します。今回は前半です。

 

 

 

 

(1)指名委員会の権限

Q1

指名委員会等設置会社において、 取締役選任議案の決定は指名委員会に専属する(404条1項)。

したがって、指名委員会が決定した取締役の候補者について、取締役会が対立候補を立てることはできない。

416条4項5号括弧書きも、このことを前提としている(執行役に委任できるという趣旨ではなく、もともと取締役に権限がないから委任することができないことを意味する。)。

 

このように、指名委員会は単に取締役会に候補者を推薦するわけではなく、取締役選任議案を決定している。

 

本来、指名委員会は取締役会の中にある委員会にすぎず、取締役会で委員会の決定を覆すことができるはずだが、会社法はそうしていない(これはアメリカと違う点である)。

わが国では、委員会の権限が強化されている。アメリカでは、社外取締役が取締役会の過半数を占めているが、日本の指名委員会等設置会社では、そのような実務は期待しにくい(CGコードでも東証プライム市場上場の会社に3分の1以上の独立社外取締役の設置を求めるにとどまる)。

そのような中、委員会の決定を取締役会で覆せるとすると、社外取締役を各委員会で過半数入れた意味(400条3項)が乏しくなる。そこで、委員会の権限を強化している。つまり、数少ない社外取締役を最大限活用するために委員会の権限を強化したわけである。

   

 

 

 

 

Q2

指名委員会等設置会社であっても、株主提案は否定されていない。株主は対立候補を立てる議案提案をできる。

その方法としては、修正動議として、株主総会当日に提案する方法(304条。一個の議決権を持つ株主でも可能)と、持株要件を満たす株主が事前に提案して招集通知に議案の要領を掲載してもらう方法(305条)がある。

このように、指名委員会等設置会社でも、株主提案については制限等はない。

 

※経営陣が株主提案を利用して、指名委員会による指名を潜脱してきた場合は、問題だが、違法とはいえず、株主総会に判断が委ねられることになろう(たぶん)。


 

 

 

 

(2)取締役会の権限

Q3

執行役の選任は取締役会の専決事項(402条2項、416条4項10号)とされ、執行役はもちろんのこと、一部の取締役に委任することもできないと解されている。

 

実質的な理由① :取締役会の執行役に対する監督権限(416条3項・1項2号)は、取締役会の選解任権が裏付けとなっている。よって、取締役会が執行役の選解任権を手放すことは許されない。

 

実質的な理由②:指名委員会の役割は、執行役を監督する取締役会の構成員たる取締役を(執行役からの)独立性の高い者にすることであり、執行役を選解任することではない。

 

   

(3)報酬委員会の権限と取締役の報酬

Q4

指名委員会等設置会社では、報酬委員会が執行役等の個人別の報酬を決定する(404条3項)。

執行役等とは、取締役および執行役のことである(404条2項1号)。 

 

報酬委員会が執行役の報酬を決定することとされている理由は、報酬の決定は監督手段のひとつであり、執行役からの独立性が高い報酬員会で決めることが望ましいからである。報酬員会の過半数社外取締役である(400条3項)。

 

報酬委員会が取締役の報酬を決定することとされている理由は、取締役の執行役からの独立性を確保するためである。

(※監査役会設置会社のように株主総会を取締役の報酬の決定機関とすると、株主総会における会社提出議案を決めるのは、執行役であり、報酬の点で、監督機関としての取締役の独立性が弱められてしまう。)

指名委員会等設置会社では、指名委員会が人事面での取締役の独立性を確保し、報酬委員会が報酬面での取締役の独立性を確保している。そうした独立性の高い取締役から構成された取締役会で執行役を実効的に監督すること(モニタリングモデル)が指名委員会等設置会社の制度趣旨である。

 

※なお、報酬員会で取締役報酬を決定させると、報酬委員も取締役であるので、「お手盛りの危険」が生じるが、指名委員会等設置会社における取締役は業務執行機関ではなく監督機関なので、取締役として受ける報酬はそれほど高額にはならない(業務執行を行っていないので、不当に高い価格を決めにくい)ため、ここでのお手盛りの危険は深刻なものではないと考えられている。

   

 

 

 

Q5

指名委員会等設置会社では、株主総会で取締役の報酬の総額を決め具体的配分を取締役会に一任するという定款の定めを置くことは、認められていない。

404条3項の文言は、「361条1項にかかわらず」となっており、株主総会で取締役の報酬を決定できない趣旨の規定である。

 実質的理由としても、それを認めると、株主総会に提出する議案は執行役が作成に関与するため、取締役の報酬面での独立性が弱められ、指名委員会等設置会社の制度趣旨に反することが挙げられる。

 

 

 

 

(4)役員へのストックオプションの付与

Q6

 ストックオプションとは、インセンティブ報酬の趣旨で役員らに付与される新株予約権である。その手続規制として、①報酬規制と②新株予約権発行規制の両方が適用される。

 

①指名委員会等設置会社の場合、まず報酬規制として報酬委員会の決定が必要になる(409条3項4号)

 

ストックオプションとしての新株予約権の発行は、第三者割当ての形になる(238条)。新株予約権の発効は、公開会社では、有利発行でない限り(報酬委員会が報酬として決定した分の新株予約権の発行は有利発行にならない。実質的に労務が対価となっている。令和元年改正会社法236条3項・4項も参照)、取締役会の権限とでき(240条1項)、その権限は執行役に委任できる(416条4項で新株予約権の発効は委任禁止事項とされていない)。

   

 

 

 

Q7

 409条3項但書きにより、会計参与にはストックオプションを付与できない。

 

※指名委員会等設置会社以外の場合でも、監査役や会計参与にストックオプションを付与できるか議論がある(387条1項・379条1項の解釈問題として)。

(A)否定説の考え方:

監査役や会計参与は、取締役と異なり、会社の業績を向上させることを目的に職務を行うわけではない(効率性・妥当性の観点から職務を行わない)。

監査役は、取締役の職務の適法性を監査し、会計参与は取締役と共同して計算書類を作成するのがその職務である。

これらは、株価を上げることに目がくらんではならない職務であり、これらの者にストックオプションを付与することは合理的でない(監査等の適正性を損なわせるおそれがある)ため、会社法上許されない。

404条3項但し書きはこのことを、確認する規定(指名委員会等設置会社には監査役がいないので、会計参与のみに言及している)である。

 

 (B)肯定説の考え方:

監査役や会計参与の職務も、最終的には会社の信用の維持や業績の向上に寄与する面があり、ストックオプションの付与を禁止するほどのことはない。

よって、監査役・会計参与についても、361条1項の取締役の報酬規定を類推適用することができると解する。

この見解からは、404条3項但し書きは立法論的には疑問があることになる。

   

 

 

設例7-2前半の解説は、以上です。

今回のテーマは、重要ですが、細かい論点もあるので、詳しめの教科書でしっかり復習しましょう!!また、ストックオプションに関する法規制は、令和元年会社法改正で重要な改正がなされています。この機会にしっかり確認しましょう。

それでは、また次回!

   

 

 

 

 

ストックオプションにかかる令和元年会社法改正の内容はこちらをご参照ください。

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

 

設例7-2後半の解説はこちらです

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