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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-8(設例8-4)定款の定めまたは株主間契約による会社の閉鎖性の維持

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第3版)Ⅱ-8(設例8-4)の解答例を紹介します。

テーマは、定款の定めまたは株主間契約による会社の閉鎖性の維持です。

細かい点もありますが、重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

   

 

(1)取締役・代表取締役の派遣

Q1

 取締役選任についての種類株式(108条1項9号)の制度を利用して、P社・Q社の有する株式をそれぞれa株式・b株式として、取締役を2名ずつa株式・b株式の種類株主総会で選任すると定款に定めればよい。

 

Q2

 取締役会のない会社なら、349条3項にもとづき代表取締役を選定できる。

同項は➀定款代表取締役定款の定めによる取締役の互選、③株主総会決議によって、と規定しているところ、本問(1)の定めは➀または②のどちらにも読める。

 

Q3

 取締役会設置会社では、362条2項3号で代表取締役の選定は取締役会決議によるものと定められている。そして、349条3項括弧書きで、取締役会設置会社には同項が適用されないとしている。

取締役会の代表取締役選定権限を奪えるかどうかについては、議論があり、取締役会の監督権限としてこれを重視する立場から否定する見解も有力であるが、株主による定款自治をこの場面でも認めてよいとする見解もある。

 

※この問題に関連して、最判平成29年2月21日民集71巻2号195頁(会社法判例百選第4版41事件)は、非公開会社において、取締役会決議のほか、株主総会決議によっても代表取締役を選任できるとする定款規定を有効とした(取締役会の選定解職権(362条2項3号)は否定されないので、取締役会の監督権限の実効性は失われないことを理由とする)。

 この判例の射程(公開会社にも及ぶか、取締役会の代表取締役選定解職権限をはく奪する定款規定も有効か)は、定かではない。学説の議論も、現状では様々である(会社法判例百選4版41事件の解説を参照)。

 

Q4

株主間契約であれば、Q1の種類株式やQ2の定款の定めを利用しなくても、問題文(1)の方針を実現できる。

具体的には、P社・Q社間の契約で、それぞれが取締役を2名ずつ選任し、代表取締役を1名選定する旨の議決権拘束契約を結ぶことになる。 

 

※議決権拘束契約の効力については、設例8-1(2)Q3の解説を参照↓↓

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

(2)株式が事実上譲渡されることの阻止

※(2)で問題となっているのは、譲渡制限を付けた場合、無承認の譲渡は、会社との関係では無効だが、当事者間では有効であり、譲渡人が譲受人から指図を受けて議決権行使をする可能性があるところ、これを防ぐことができるかという問題である。

 

Q5

会社にとって好ましくない者が、株主の議決権行使に事実上影響を与えることは、譲渡の当事者間以外でも起こりうることであるが、会社法上そのような事態を阻止する手段はない。

譲渡制限制度は誰が株主名簿上の株主として権利を行使することができるかを会社がコントロールできる制度でしかない。その背後でその者に誰かが指図をしてもそれを阻止する手段はない。

 

Q6

上記問題の発生を一定程度予防するために考えられる手段としては、Q社はP社が同意しなければ R社株式を譲渡できないとすること(いわゆる同意条項を設けること)が考えれれる。

このような同意条項は定款では設けることができないと考えられている。

なぜなら、定款で設けることができる譲渡制限の類型は法定されており(会社の承認が要求され、承認がないときでも会社や指定買取人に譲渡することはできるというもの)、それ以外の譲渡制限を定款で定めることは許されないと解されるからである。

 

もっとも、株主間契約で同意条項を定めることは、(公序良俗に反しない限り)契約自由の原則のもと、適法となる。もっとも、会社が同意を与える形であれば、定款による譲渡制限制度の脱法といえ、無効の疑いが強い。

本問で想定される同意条項は、他方株主の同意がなければ譲渡できないというタイプのものであり、有効と考えてよい。

 

※このほか、先買権条項というものも考えられる。これは、Q社が株式を処分する場合は、P社に事前に通知する義務があり、P社が先買権を有する(P社が買取を希望すればば、P社に売らなければならない)という条項である。

 

Q7

株主間契約に違反して、Q社がR社株式をP社の同意なく譲渡したときも、譲渡自体は有効である。

なぜなら、株主間契約は債権契約に過ぎず、これに違反した譲渡も有効である(Sが悪意であっても同じ)からである。

 

株主間契約違反には、違約金で対処するほかない。これが定款で定めた場合との違い。定款の譲渡制限であれば、定款の定めに違反して承認なくされた譲渡は会社に対する関係では無効である。

 

(3)合弁事業の相手方が他社に買収される場合の措置

Q8

ここではQ社が株式を譲渡するのを阻止しようとしているのではなく、株式を保有し続けるのを阻止しようとしているのであり、定款による譲渡制限の仕組みでは対処できない。

※合併の場合なら、174条の売渡請求制度が使える。

 

Q9

 108条1項6号の取得条項付種類株式を利用する。取得事由としては、Q社が他の者の支配下に置かれたときなどとしておけばよい。

ただ、取得条項付種類株式による取得には、分配可能額による規制がかかる(170条5項)。そのため、R社に十分な財源がなければ、取得できない。

これを回避する方法としては、取得の対価を株式とすればよい(株式が対価のとき財源規制はかからない(会社財産の流出がないので))。

取得の対価として、無議決権株式をQ社に交付すれば設問のニーズ(R社がT社の影響を受けることを避けること)を満たしつつ、財源規制もかからない。

なお、非公開会社なら会社法115条の規制もかからない。

 

Q10

Q社がR社株式を持ち続ける場合なので、同意条項や先買権条項では 対処できない。

本問のニーズに対処するには、一定の事由が生じたら、P社がQ社からR社株式を買い取ることができるという売渡強制条項を定める必要がある(Q社は意思にかかわらず売渡を強制される)。

 

ここでは、売買価格の決定が重要になる。

一般に、価格決定の評価人の選定をどうするか、評価人の評価が最終的なものになるのか(争えるよちがあるものなのか)が契約で定められる。

 

(4)合弁事業解消の際の株式買取価格の決定方法 

Q11

 一般に、第三者である格付機関にR社の株式価値を評価してもらってそれを買取価格として決定することが考えられる。

しかし、P・Qが納得しない可能性もある。

P・Qいずれも納得できる方法の一つとして、ロシアンルーレット条項がある。これは、

 P・Qのいずれか一方が一定の価格を提示して、相手方はその価格で自分の株式を買い取ってもらうか、相手の株式を買い取るかを選択することができるという内容の条項である。これにより、合理的な価格の設定が担保されると考えられる。

 

設例8-4の解説は、以上です。

今回のテーマは重要ですが、細かい論点もあるので、詳しめの教科書でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

 

 

 

   

 

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設例9-1の解説はこちらです

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