司法試験・予備試験・ロー入試に向けた会社法

司法試験上位合格者が会社法についてわかりやすく解説します

会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-9(設例9-1)持株会社を利用した企業グループの形成

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第3版)Ⅱ-9(設例9-1)の解答例を紹介します。

テーマは、持株会社を利用した企業グループの形成です。

細かい点もありますが、重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

 

(1)抜け殻方式

Q1

持株会社会社法上に定義はなく、独占禁止法上に定義がある。

持株会社とは、一般に他の会社を支配することを主たる目的とした会社であるが、独占禁止法9条4項1号では、総資産における子会社株式の取得価格の比重が50%を超える会社として、形式的に定義されている。

事業活動を一切行わず、専ら子会社の支配だけを行う持株会社純粋持株会社)と自ら事業を行っている持株会社事業持株会社)とが存在する。

本問で念頭に置けれているのは、純粋持株会社である。

 

※Q2以降の前提

P社がS社に全ての事業を移転してしまえば、P社自身は抜け殻のような形で持株会社となる。事業移転の方法として、大きく分けて、①事業譲渡、②会社分割の2つの方法がある

➀は、P社が対価としてS社株式を受け取る場合、現物出資となる。P社が金銭を対価として受け取る場合には、財産引受け(S社設立を条件として事業を譲渡する場合)や事後設立(467条1項5号(設立直後の大きな買い物))になりうる。

 

Q2

 

事業全部の譲渡なので、P社の株主総会特別決議が必要(467条1項1号、309条2項11号)。この規定は現物出資の場合にも類推適用される(実質的にP社株主が受ける影響に違いはないので)。

なお、S社はP社の完全子会社なので、事業全部を譲り受ける場合も、株主総会の特別決議(467条1項3号)が不要となる(468条1項)。

 

⇒1

P社株主の保護は、株主総会特別決議(467条1項1号、309条2項11号)と反対株主の株式買取請求権(469条)で保護される。

 

⇒2

現物出資だと検査役調査が必要(33条・207条)。対価が株式でない場合の事業譲渡では、原則、検査役調査は不要だが財産引受けの場合は検査役調査が必要となる(33条)。

もっとも、事後設立の場合は、検査役調査は不要である。

 

⇒3

対価が何であれ、事業譲渡は、包括承継ではないから、個別的移転手続が必要で、債務を免責的に移転するには、不利益を受ける可能性のある債権者の個別の同意が必要。

そのため、事業譲渡は、手続的に煩雑となる。

 

Q3

会社分割には、新設分割と吸収分割があるが、ここでは新設分割が用られると考えられる(下記⇒参照)。

新設分割に必要な手続は、➀株主総会の特別決議(804条1項(803条1項2号も参照)、309条2項12号)②反対株主の株式買取請求(806)③債権者異議手続(810条1項2号)が必要。

 

新設分割の方が好ましい。

吸収分割は、既存の会社に財産を移転する手続なので、一旦S社を完全子会社として設立しておいてから、吸収分割することになるが、これは二度手間になる。他方、新設分割の方法をとると、S社の設立と事業の移転を同時に行うことができる。本問では、既存の会社に事業を移転させるものではないので、新設分割のほうがよい。

 

 

Q4

いずれも株主総会の特別決議が必要で、反対株主の株式買取請求権がある点は同じ。

違いは、➀会社分割では、検査役調査が一切不要であること。および②会社分割は一般承継の制度なので、個別の財産移転手続が不要であること(個別の同意なく、免責的な債務の移転が可能。その代わり債権者異議手続がある)。この2つが会社分割の利点である。

 

(2)持株会社の新設

※Q5以降の前提

P社の親会社たる持株会社(H社)を新設するには、➀株式移転、②株式交換、③H社設立してからH社がP社に対して公開買い付けを行うこと(Q6参照)が考えられる。

 

 Q5

株式交換と株式移転の対比は、吸収分割と新設分割の対比とパラレルである。

すなわち、株式移転(2条22号)は、その手続内で、H社の設立を行うものである。H社が新設され、P社株主が持つP社株式をH社がすべて取得し、P社株主にはH社株式が対価として交付されるという法律効果が一挙に生じるのが、株式移転である。

他方、株式交換では、すでにH社が存在している(設立されている)必要がある。H社の設立と株式交換(P社株主の有するP社株式とH社株式を交換する)を別々に行う必要があり、二度手間となる。

よって、本問では、株式移転の方法を採るほうがよい。

 

Q6

公開買付では、買い付けに応じない株主がいる場合に、完全親会社を作れない(その後締め出し(スクイーズアウト)の手続を行う必要がある)。

また、対価を金銭とすると、巨額の資金が必要になる。そして、対価をH社株式とした場合、現物出資になるので、原則として、検査役調査が必要になる(207)。

結局、少なくとも、対価をH社株式とする組織再編では、公開買付ではなく、株式移転を利用するのが一般に好ましい。

 

(4)持株会社の定款の事業目的

Q7

定款の事業目的は、株主の出資の使途の範囲を示すことで、株主がさらされるリスクの範囲を限定することに意味がある。

※定款の目的の範囲外の事業が行われた場合、株主は予想外のリスクにさらされることになる。

 

Q8

上記のような、事業目的記載の趣旨からして、事業目的の記載は、明確・客観的でなければならない。明確・具体的でないと株主の危険を限定することにならないからである。

会社法制定前は、商法19条で商号専用権の制度(同一商号で同一市町村で同一の営業については登記できないという制度)があったため、実務上、細分化・明確化が強く要求されていたが、会社法では、同制度は廃止され、登記との関係では、抽象的・包括的な事業目的でもよいと解されている。

しかし、上記の事業目的記載の趣旨からすれば、包括的・抽象的な記載は許されず、事業内容が何かを客観的・正確に確定できる程度には、明確・具体的な記載であることが要求されるというべきである。

 

Q9

 一般的には、親会社は子会社の事業目的を定款に記載しなければならないと解されている。子会社の業績が悪くなれば、親会社の配当収益は減るし、子会社株式の価値が下がれば、親会社の財産が減少することになるので、親会社の株主がさらされるリスクには子会社の事業リスクも含まれる。したがって、親会社株主がさらされる危険の範囲を限定するには、親会社が行う事業だけではなく、子会社が行う事業も親会社の定款の目的の範囲内である必要がある。

 

Q10

親会社が純粋持株会社の場合、親会社株主保護の観点から、一般の親子会社の場合よりも、一層子会社の事業が持株会社(親会社)の事業目的として定款に記載されていなければならないというべきである。

なぜなら、親会社自らも事業を行っていれば、その事業は定款に目的として記載されるであろうから、親会社株主の出資が危険にさらされる範囲はその限度で限定されるが、純粋持株会社では、子会社の事業が定款に記載されていないと、親会社株主がさらされる危険の範囲は無限定になってしまうから。

 

⇒1

(a)案では、持株会社の株主が自己の出資がどのような事業に使われるかが全く分からないので(危険の範囲が何ら限定されないので)、事業目的の記載として不十分である。 

 

⇒2

(b)案が一番丁寧であるが、(c)案でも、持株会社の株主にとって、危険の範囲が限定されているので、 いずれも適法である。なお、(b)案だと、持株会社会社が自ら当該事業を行おうとする場合、定款変更が必要となる。その点で、(c)案の方が柔軟性がある。

 

本問のように、将来的にレストラン事業とホテル事業を行いたい場合、持株会社の定款変更(466条)が必要で、これらの事業を行っている会社を買収するときも、持株会社の定款を変更しなければならない。

 

 

設例9-1の解説は、以上です。

今回のテーマは重要ですが、細かい論点もあるので、詳しめの教科書でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

 

 

 

 

 法律資格・公務員試験のスクール【伊藤塾】