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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-9(設例9-2前半)少数株主の締出し(キャッシュ・アウト)

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第4版)Ⅱ-9(設例9-2)の解答例を紹介します。

テーマは、少数株主の締出し(キャッシュ・アウト)です。

細かい点もありますが、非常に重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

今回は 量が多いので、前半と後半の2回に分けます。

今回は前半で、全部取得条項付種類株式を利用したキャッシュ・アウトを扱います。

   

 

 

(1)全部取得条項付種類株式を利用した少数株主の締出し

Q1

完子会社化のメリットとしては、次のものがある。 

・意思決定の迅速化(株主総会開催不要(株主総会関連のコストもなくなる))

・少数株主への配慮の不要(株主管理コストもなくなる)

・短期的な業績・株価変動・株主還元の要求に影響を受けずに、長期的な目線での経営が可能になる

・完全子会社になれば上場廃止となるため、上場コスト(開示コスト等)も削減される

   

 

 

 

Q2

クラスa株式1万株にクラスb株式1株が割り当てられることになるため、P社以外のQ社株主はクラスa株式を1万株未満しか保有していない(最多でもXの9000株)ことから、P社以外のQ社株主にはb株式は割り当てられず、端数として処理されることになるから(234条1項2号)。

具体的には、Q社が端数の合計に当たる株式を裁判所の許可を得て、買収者(P社)に売却し(234条2項)、売却代金をP社以外のQ社株主に交付することになる。

つまり、P社以外のQ社株主は現金を対価として、締め出されることになる(キャッシュアウト)。 

 

平成26年会社法改正後は、株式併合によるキャッシュアウトの規律が整備されたため、そちらが主に用いられるようになっている。

   

 

 

 

 

Q3

 全部取得条項付種類株式の全部取得については、その効力を争うための特別の訴えの制度はない。

そのため、その効力を争う株主は、一連の(設問➀~③の)株主総会決議・種類株主総会決議の効力を争う方法によることになる。

平成26年会社法改正で、決議取消しの訴えは、キャッシュアウトされる株主も提起できることが明文で定められた(831条1項)。

 

※この点は株式併合によるキャッシュアウトについても同様。

 

大きく2つの場合がありうる。

➀学説では、正当な事業目的のない締め出し(少数派の排除のみを目的とする場合)は、特別利害関係人の議決権行使による著しく不当な決議であるとして(831条1項3号)、取消事由になるとする見解がある。

とくに、株主が持株比率の維持に関心を有し、株主間に経営参加に関する明示・黙示の約束があることも少なくない閉鎖的会社では、締め出し目的のキャッシュアウトは認めるべきでないとする有力な見解がある(江頭憲治郎・株式会社法第8版163頁注36(第7版では160頁注36)参照)。

しかし、東京地判平成22年9月6日判タ1334号117頁は、会社法は公正な価格であれば、少数派株主の締め出しを認めているとして、単に少数派排除目的があっただけでは、831条1項3号に該当しないとしている(最近の学説でも、このような見解が多いように思われる)。

 

②対価が著しく不当である場合に、特別利害関係人による議決権行使により著しく不当な決議がされたとして、決議取消事由となるべきである(831条1項3号)。

これについては学説でも異論がない。

   

 

 

 

 

 

Q4

 取得対価に不満な株主は、裁判所に対し、取得価格決定の申立てをすることができる(172条1項)。

申し立てには、事前に全部取得に反対する旨を通知し、株主総会で反対する必要がある(同項1号)。ただし、議決権を行使できない株主は不要である(同2号)。

 

参考)最決平成21年5月29日(レックス・ホールディングス事件決定)

「取得価格決定の制度が、経営者による企業買収(MBO)に伴いその保有株式を強制的に取得されることになる反対株主等の有する経済的価値を補償するものであることにかんがみれば、取得価格は、①MBOが行われなかったならば株主が享受し得る価値と、②MBOの実施によって増大が期待される価値のうち株主が享受してしかるべき部分とを、合算して算定すべきものと解することが相当である」

   

 

 

 

 

Q5

 全部取得が法令または定款に違反する場合に、それによって不利益を受けるおそれのある株主は、全部取得の差止めを請求することができる(171条の3)。

よって、前述のように、全部取得の決議が831条1項3号違反である場合、法令違反として、差止めを請求できる。

   

 

 

 

 

 

Q6

 個別株主通知(振替法154条)は、株主たることを会社に対抗する手段として株主名簿の書換えにかわるものである(同条1項・2項参照)。

よって、会社が当該株主の株主資格を争った場合、当該株主は個別株主通知をしていなければ、株主に少数株主権等を行使できない。

会社法172条1項の価格決定申立権は、各株主ごとの個別的な権利行使が予定されていることから、振替法154条1項・147条4項の「少数株主権等」に該当し、会社が株主資格を争った場合、審理終結時までの間に個別株主通知がなされなければならない(最決平成22年12月7日会社法判例百選第4版15事件・第3版17事件)。

 

⇒ 

判例(最決平成24年3月28日民集66巻5号2344頁)によれば、Q社株式が上場廃止となり、個別株主通知がなされないまま、取扱機関による取り扱いが廃止された場合であっても、個別株主通知がなければ会社に株主資格を対抗することができないという結論は変わらない。

すなわち、

「上記の理(最決平成22年12月7日会社法判例百選第4版15事件・第3版17事件)は,振替株式について株式買取請求を受けた株式会社が同請求をした者が株主であることを争った時点で既に当該株式について振替機関の取扱いが廃止されていた場合であっても,異ならない。なぜならば,上記の場合であっても,同株式会社において個別株主通知以外の方法により同請求の権利行使要件の充足性を判断することは困難であるといえる一方,このように解しても,株式買取請求をする株主は,当該株式が上場廃止となって振替機関の取扱いが廃止されることを予測することができ,速やかに個別株主通知の申出をすれば足りることなどからすれば,同株主に過度の負担を課すことにはならないからである」と判示されている(最決平成24年3月28日民集66巻5号2344頁)。

 

 

設例9-2前半の解説は、以上です。

今回のテーマは超重要なので、詳しめの教科書・判例百選でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

 

 

 

 

 

 

 

後半の解説はこちらです

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