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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-9(設例9-3)持株会社の株主保護

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今回は、会社法事例演習教材(第4版)Ⅱ-9(設例9-3)の解答例を紹介します。

テーマは、持株会社の株主保護です。

非常に重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう!  

 

 

 

(1)子会社で違法行為が行われた場合

Q1

子会社株式はH社の資産であり、子会社の収益・配当はH社の収益となるから、H社取締役は、H社の利益を最大化するために子会社であるP社の管理について善管注意義務を負う。

具体的には、Aの責任を追及することがH社によって最大の利益になるのであれば、H社取締役は代表訴訟によりAの責任を追及することが善管注意義務の内容となる。

もっとも、子会社管理は H社取締役の経営判断であり、一定の裁量があるから、善管注意義務違反が認められる場合は、限定的となる。

H社取締役に善管注意義務違反があった場合、H社取締役はH社に対して任務懈怠責任(423条1項)を負い、H社株主は株主代表訴訟を通じて、当該責任を追及できる(847条)。

 

※親会社取締役の子会社管理義務に関する参考裁判例として、福岡高裁平成24年4月13日会社法判例百選第4版51事件(福岡魚市場事件)参照。

   

 

 

 

Q2

贈賄を行ったAは法令遵守義務違反により、 P社に対して任務懈怠責任を負う(423条1項)。

  XはP社の株主ではないが、P社の完全親会社であるH社の議決権を1%有する株主であり(公開会社では6カ月の株式保有が必要。847条の3第1項)、H社が保有するP社株式の帳簿価格はH社の総資産の5分の1を超えるから(847条の3第4項)、多重代表訴訟により、AのP社に対する任務懈怠責任を追及することができる(847条の3)。

   

 

 

 

Q3

取締役の任務懈怠責任は総株主の同意で全部免除できる(424条)が、多重代表訴訟の対象となる「特定責任」(847条の3第4項)についてもそれを認めると、多重代表訴訟制度が骨抜きになってしまう。

そのため、「特定責任」については、424条などにおける「総株主」は、総株主および最終完全親会社等の株主と読み替えられる(847条の3第10項)。

よって、Xが同意しない限り、Aの責任が全部免除されることはない。

   

 

 

 

Q4

XはQ社取締役に対して多重代表訴訟を提起することはできない。

Q社はH社の完全子会社ではないからである。

現行法上、多重代表訴訟は完全親子会社関係がある場合に限り認められている(847条の3第1項参照)。

これは、完全子会社でなければ、他の株主がいるため、通常の代表訴訟が提起されることが期待できるため、多重代表訴訟の対象とする必要性は低いと考えられるからである。

通常裁判所の代表訴訟が提起されない場合、AはH社取締役の責任を追及するほかない(Q1参照)。 

 

※Q2・Q4で見たように、現行の多重代表訴訟制度は、➀少数株主権、②完全親子会社要件、③子会社規模要件によって適用範囲がかなり限定されている(実際に提起された例もほとんど見当たらない)。立法論的には異論もある。

 

 

Q5

できない。847条の3第10項は適用されない。そのため、H社とR社が同意すれば、Aの責任は免除される(424条)。

 

Xは責任免除に同意したH社取締役のH社に対する任務懈怠責任(423条1項)を通常の代表訴訟によって、追及することになる(847条) 。

   

 

 

(2)親会社の利益を図る取引

 Q6

P社はH社の完全子会社なので、(Q7と異なり)両社の株主間の利益衝突はない。

完全親子会社間の取引では、株主有限責任の原則により、子会社(P社)の債権者の利益が害されるという問題がある。

子会社の債権者は、法人格否認の法理や、詐害行為取消権、子会社取締役の対第三者責任(429条1項)によって救済を受けることができる。

   

 

 

 

Q7

H社とQ社は親子会社関係にあるが、完全親子会社関係にはないため、Q社には少数株主が存在する。

そのため、H社とQ社の間の不公正な取引によって、Q社債権者だけでなく、Q社の少数株主も不利益を被る可能性がある。

 

※Q社取締役がH社を代理・代表するとき、利益相反取引規制(会社法356条1項2号・365条)により、Q社取締役会の承認が必要となる。もっとも、Q社はH社に支配されており、取締役会の承認を要求することにより、Q社の少数株主が保護される可能性は高くない。

 

子会社の少数株主の保護は会社法上の難問の一つ。

まず、Q社取締役の任務懈怠責任を代表訴訟で追及することは可能である。

問題は親会社や親会社取締役の責任を追及できるかであり、下記のような法律構成がありうる。

➀「親会社としての影響力」とは、究極的には株主権(議決権)行使を通じたものであるといえるため、利益供与規定(会社法120条1項・3項)に基づいてH社に返還請求を行うことが考えられる。847条1項による代表訴訟も可能。

 

②親会社取締役がQ社取締役の任務懈怠に加担したとして、不法行為(709条・会社350条)を追及する。代表訴訟はできない。

 

③親会社取締役はQ社の事実上の取締役であるとして、対第三者責任(429条1項)を追及する。※株主の間接損害について直接の賠償請求を要求することになるが、支配株主による不当な行為への対抗手段として、例外的に許されるとする見解が有力である。

 

※なお、差止め(会社法360条(本件では3項の適用がある)) も要件を満たせば利用可能である。

   

 

 

 

(3)子会社株式の譲渡

Q8

 事業の重要な一部の譲渡であるから、株主総会の特別決議が必要(467条1項2号、309条2項11号)。

Xは株主総会に参加して、反対の議決権行使をすることができ、 株式買取請求による救済もある(469条)。

   

 

Q9

かつては、重要な子会社株式の譲渡については、株主総会決議は要求されず、重要な財産の処分として、取締役会決議が要求されるにすぎなかった(362条4項1号)。

 しかし、事業の重要な一部の譲渡の場合(Q8)とのバランスから、平成26年会社法改正で、株主総会特別決議が要求されるようになった(467条1項2号の2)。

   

 

 

 

Q10

Xが利用できる会社法上の救済手段は次の2点である。

株主総会決議の効力を争う(831条1項等)

・反対株主の株式買取請求をする(469条)

   

 

 

 

設例9-3の解説は、以上です。

今回のテーマは重要なので、詳しめの教科書でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

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設例10-1の解説はこちらです

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