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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-10(設例10-1)合併決議の瑕疵、合併比率の公正と合併の効力

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第4版)Ⅱ-10(設例10-1)の解答例を紹介します。

テーマは、合併決議の瑕疵、合併比率の公正と合併の効力です。

細かい点もありますが、重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

   

 

 

Q1

本件合併により、Q社財産がP社に包括承継され、Q社株主にはP社株式が割り当てられる。

しかし、749条1項3号括弧書きで、割り当てを受ける株主の中から吸収合併存続会社が除かれているので、P社が保有するQ社株式にはP社株式は割り当てられない。

   

 

 

 

Q2

P社の不適切経理やQ社資産の評価は、合併比率の公正さの評価にとって重要であるにもかかわらず、Aは株主からの質問に質問に対して、議決権行使のために客観的に必要な説明をしたとはいえない。

よって、本件株主総会決議は、決議方法の法令違反(314条違反)として、取消事由がある(831条1項1号)。

また、仮に合併比率が不公正であるとすると、特別利害関係人であるP社の賛成により、著しく不当な決議がされたという取消事由もある(831条1項3号)。

 

Q3

平成26年会社法改正で、組織再編の差止制度が創設された(784条の2)。

要件は、①組織再編の法令または定款違反と、②株主が不利益を受けるおそれのあることである。

Xは、本件決議に決議取消事由(Q2参照)があると主張して、本件決議の取消の訴えを提起するとともに、決議が取り消されれば本件合併には法令違反(783条1項違反。株主総会決議を欠くこと)があるとして、差止請求をすることができる。

実務的には、決議取消訴訟と差止訴訟の双方を本案として、本件合併の差止の仮処分(民保23条2項)を求めることになる。

 

※略式組織再編の差止(784条の2第2号)と異なり、組織再編の対価の著しい不当性は差止事由とならない。

これは、組織再編の効力発生までの間に裁判所が対価の相当性について審理を行うことは困難であるからである。

同様の理由で、差止事由である法令違反に善管注意義務・忠実義務の違反は含まれない。もっとも、特別利害人の議決権行使により著しく不当な決議がされたこと(831条1項3号)は、差止事由になると解される。

以上につき、田中亘・会社法第3版681頁(第2版654~655頁)参照。

   

 

 

 

Q4

吸収合併無効の訴え(828条1項7号)を提起する。

効力発生後は決議取消しの訴えは提起できない(吸収説(通説))。

決議取消訴訟の係属中に、効力が発生したら、合併無効の訴えに訴えを変更(民訴143条)しなければならない。

※他方、江頭憲治郎『株式会社法』第8版384~385頁(第7版373~374頁)は、併存説(合併の効力発生後も決議取消しの訴えは存続する)を主張する。遡及効のある救済手段を認めるべきであるからだとされる。

   

 

 

 

合併無効の 訴えの提訴期間は、効力発生から6か月(828条1項7号)であるが、通説は、決議取消の訴えにおける決議後3か月の提訴期間要件(831条1項)の趣旨を、合併無効の訴えにも及ぼす。

その結果、何もせずに決議後3か月が経過すると、決議取消事由のあることを理由とする合併無効は主張できないことになる(他に合併無効原因が認められなければ請求棄却となる)。

 

もっとも、合併条件の不公正それ自体が合併無効事由になるとする見解(神田説)によれば、決議後3か月の期間制限は及ばず、効力発生日から6カ月以内であれば、合併無効の訴えを提起して、当該無効事由を主張できる。

もっとも、合併条件の不公正それ自体が合併無効事由になるとする見解は、法律関係の安定性を害するというデメリットがあり、合併対価が不公正であることの救済としては株式買取請求や役員等の責任追及もあることから、あまり支持されていない。

東京高判平成2年1月31日会社法判例百選第4版89事件(第3版91事件)も、合併対価の不公正それ自体は無効事由にならないとする。

   

 

 

 

 Q5

 債務超過会社を消滅会社とする合併が可能かという問題について、会社法制定前商法の下では、資本の充実を害することから否定説が通説であった。

会社法の下では、まず、795条2項1号に関連する規定がある。もっとも、この規定は、帳簿上(貸借対照表上)債務超過であっても構わないと規定しているにすぎず、実質的に債務超過であってもよいかは解釈問題となっている。

 

この問題を考えるに当たっては、2点の検討が必要になる。

第1に、債務超過会社を消滅会社とする合併が資本充実を害するのかが問題である。

旧商法下での上記通説は、債務超過会社との合併でも株式が発行されて資本金が増加することを前提としていたと考えられる。

しかし、吸収合併をするとき、資本金を増加する必要はなく、資本金の額は一定の範囲で定めればよく、資本金の増加額は0であってもよい(いわゆる無増資合併も認められている)。

この場合、資本充実は問題とならない(資本充実とは、資本金という枠を現実の財産で満たさなければならないという原則だから、資本金が増えない場合は現実の財産が増えなくてもよい)。

 

第2に、資本充実は害されなくても、債務超過会社と合併すると、存続会社の財務状態が悪化するので、存続会社の債権者を害するおそれがある点が問題となる。

しかし、合併には債権者異議手続があり、当該手続が適正に行われる限り、債権者との関係で特に問題は生じない。

 

以上のように考えると、実質的な債務超過会社を合併することも(資本金を増やさない限りは)可能であるというべきである。

  

 

 

 

795条2項1号により、帳簿上債務超過であれば、取締役は株主総会においてその旨を説明する義務がある。

 また、796条2項但し書によりで、帳簿上債務超であれば、簡易合併は認められない。これは、相手方が債務超過であれば株主は不利益を受けるおそれがあることから株主総会決議を省略すべきでない(取締役会限りの判断での合併を認めるべきでない)と考えられるからである。

このように、帳簿上債務超過の会社との合併は、取締役からの説明を受けたうえで株主総会の特別決議で承認しなければならない。

 

ところが、本問のP社ではそのような手続がとられていないことになる。

株主総会決議の欠缺は合併無効事由になると解されている。

※合併無効の訴えの提訴権者(828条1項7号)は、吸収合併をする会社の株主であった者であるから、Q社株主も含まれるが、自己の会社にかかわる無効事由しか主張できないとする見解(江頭)も有力である。

この見解だと、Q社株主はP社側の手続的瑕疵を無効事由として主張することはできないことになる。ここでの問題は、P社側で適正な手続がとられることについてQ社株主が利益を有しているかという問題であり、難しい問題である。

   

 

 

 

Q6

債務超過会社を吸収合併することが存続会社にとってメリットになる場合もある。

たとえば、子会社Q社を救済してP社グループ全体の信用を維持したいという場合が考えられる。また、合併によりシナジーが生じ、それが債務超過であることによる不利益を上回る可能性もある。

反対株主は株式買取請求権(797条)を行使することで自衛することもできるので、債務超過会社との合併が存続会社株主を一方的に害するので、許されないということにはならない。

  

 

 

 

 

設例10-1の解説は、以上です。

今回のテーマは重要ですが、細かい論点もあるので、詳しめの教科書と百選解説でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

   

 

 

 

設例10-2の解説はこちらです

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