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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-10(設例10-2前半)合併の効力発生と権利義務の承継

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第4版)Ⅱ-10(設例10-2)の解答例を紹介します。

テーマは、合併の効力発生と権利義務の承継です。

細かい点もありますが、非常に重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

今回は量が多いので、前半と後半の2回に分けます。

今回は前半です。

   

 

 

 

(1)合併の効力発生前に消滅会社が行った取引の効果帰属

Q1

 Q社はXに土地の引渡義務と所有権移転登記義務を負う。

 

Q2

 本件では、合併の効力発生前にQ社代表取締役が法律行為をしており、合併の効力発生により、その法律行為の効果はQ社に帰属する。

そしてQ社が負担した債務は、合併の効力発生によりP社に承継される。

すなわち、本件では7月31日にQ社が負担していた債務(Q1の債務を含む)がP社に承継され、XはP社に対して、土地の引渡しと所有権移転登記手続を請求することができる。

   

 

 

 

(2)合併の効力発生前に消滅会社が売却した不動産を合併の効力発生後に存続会社が他者に売却した場合

Q3

 合併の効力発生で、Q社が負担していた債務はP社が承継するから、P社自身が土地を売却した場合と同様の状態になる。

その結果、QX間の売買とPY間の売買は二重譲渡の関係に立つことになる。 

   

 

 

Q4

Q3でみたとおり、二重譲渡と同様の法律関係であるから、 XとYの間では登記を先に備えた方が、本件土地の所有権を確定的に取得する(民法177条)。

   

 

 

(3)合併の効力発生後に消滅会社が行った取引の効果帰属

Q5

法務省の立案担当者によれば、合併の効力発生によって、Q社の財産や債務はP社に移転するが、会社法750条2項により、合併登記がされていなければ、第三者にQ社の消滅を対抗することができないとされる(合併の効力発生から登記までの間にQ社が第三者と取引をすると、法律関係が不明確になることから、750条2項という規定を設けて合併による会社の消滅は合併登記がなされるまでは第三者に対抗できないとされている)。

よって、合併登記までは第三者Xとの関係では、本件土地はQ社に帰属し、代表取締役Aはなおその処分権を有する者と扱われる。

したがって、QX間の売買は有効で、Q社の財産・債務を承継したP社はXに対して、本件土地の引渡しの登記移転義務を負う。

もっともこの考え方に対しては異論もある(Q7参照)。

 

 

 

Q6

 Xが悪意であっても、合併の登記をしなければ合併の効力をXに対抗することはできない(750条2項は第三者の善意・悪意を問うていない)。

750条2項は、登記の効力に関する一般規定908条1項(登記事項は登記するまで善意の第三者に対抗できないとする規定) の特則である。

   

 

 

 

Q7

Q7設問文の見解に立つ場合、QX間の売買とQP間の権利移転(合併による包括承継)は、二重譲渡類似の関係に立つ(したがって、先に登記を具備したほうが勝つことになる)。P社はQ社の債務を承継しないので、P社はXからの土地の引渡し等の請求に応じる義務はない(Xは登記がない限り対抗できない(民177))。

Q7設問文後段のように、合併登記の後、P社が土地の所有権移転登記を備えれば、Xには救済がないことになる。

 

確かに、Q7設問文の見解のとおり、QX間の売買は合併の効力発生後に行われており、P社はQ社からXへの土地の引渡し等にかかる債務を承継しないはずであり、 Q5で見た立案担当者の説明は理論的に問題が残る(Q7設問文の見解の方が理論的ではある)。

しかし、合併の効力発生後から合併登記までにQ社がした行為の効力をP社に帰属させないとすると、750条2項を設けた意味がなくなる。Xを保護するためには、合併の効力発生後から合併登記までの間にQ社がした行為の効果をP社に帰属させなけれ竹濵修ばならない。

そこで、750条2項が置かれた趣旨から、750条2項は、合併の効力発生後から合併登記までの間にQ社がした行為の効果をP社が承継することも定めていると解するべきである。

このように考えれば、P社はQ社の債務を承継するので、XはP社に土地の引渡しや所有権移転登記手続を請求できる。


 

 

 

 

Q8

 吸収分割の場合は、750条2項のような規定はない。吸収分割でも一般承継はされるが、Q社は消滅せずに残っている。

そのため、吸収分割の効力発生後もQ社が有していた特定の財産が分割の対象となってP社に移転したかは自明ではなく、会社分割では合併のように登記を基準とした画一的処理がしにくい(登記により分割があったことは分かっても特定の財産が分割の対象であったかは分からない)。

よって、会社分割の登記には、合併の登記と同じような効力をもたせることはできないため、750条2項のような規定はなく、個々の財産の対抗問題として処理されることになっている。

 

Q8では二重譲渡関係が生じており、Q社からP社への会社分割による所有権移転登記とQ社からXへの譲渡による所有権移転登記の先後によって、P社とXの優劣が決まる(民法177条)。会社分割の登記は、P社とXの優劣に関係しない。

 

 

設例10-2前半の解説は、以上です。

今回のテーマは重要なので、詳しめの教科書でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

設例10-2の後半の解説はこちらです

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