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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-11(設例11-1前半)会社分割と事業譲渡・事業の現物出資の比較

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第4版)Ⅱ-11(設例11-1)の解答例を紹介します。

テーマは、会社分割と事業譲渡・事業の現物出資の比較です。

非常に重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

今回は量が多いので、前半と後半の2回に分けます。

今回は前半です。

   

 

 

 

(1)検査役調査の要否

Q1

(a)事業譲渡では、検査役調査は不要。

なお、事後設立(467条1項5号)にあたるときでも検査役調査は不要。 

 

(b)現物出資では、原則として検査役調査が必要(207条1項)。

例外(同条9項)のうち、本件で関係しうるのは、1号(P社に割り当てる株式総数がQ社の発行済株式総数の10分の1以下であるとき≒目的物の価値に比べQ社の規模が大きいとき)、2号(価額が500万円以下の場合。本件では該当しなさそう)、4号(弁護士等の証明がある場合)。

 

(c)吸収分割では、検査役調査は不要。

合併と同様に、組織再編行為として位置づけられ、債権者の保護は債権者異議手続によって図られる(株主の保護は、株主総会決議による承認と反対株主の株式買取請求権等によって図られる)。

   

 

 

 

(2)株主総会決議の要否、反対株主の株式買取請求権

Q2

 事業の全部または重要な一部の譲渡には、P社で株主総会の特別決議が必要となる(476条1項1号2号、309条2項11号)。

本件は、事業の一部の譲渡で、不動産部門は資産面で事業全体の半分を占めるので、事業の重要な一部といえる。

 反対株主の株式買取請求権も認められる(469条。同条の「事業譲渡等」は468条1項で定義されている。)

   

 

 

 

Q3

 事業の全部の譲受けのときだけ、Q社側でも株主総会の特別決議が必要になり(467条1項3号、309条2項11号)、株式買取請求権もある(469条。会社が解散する場合を除く)。

本件のように事業の一部の譲受けのときは(たとえ重要な一部であっても)株主総会の特別決議は不要で、株式買取請求権もない。

 

全部譲り受けは、経済的には合併と同様の効果を有することから、合併の場合と平仄を合わせて株主総会の特別決議が必要とされている。

 

 しかし、事後設立に当たるとき(Q社の設立から2年以内に、純資産の5分の1を超える財産を取得するとき)、株主総会の特別決議が必要になる(467条1項5号、309条2項11号)。これは、現物出資・財産引受規制の潜脱防止のためである。

なお、事後設立については、反対株主の株式買取請求権はない(469条。「事業譲渡等」に事後設立は含まれない(468条1項))。

   

 

 

 

Q4

 現物出資のときも、467条1項2号の類推適用・309条2項11号により、P社で特別決議が必要と解されている(判例・通説)。

対価が金銭でなく、Q社株式であっても、P社株主にとっては、不動産事業がP社から出ていく点で、事業譲渡と同様であるから。

 反対株主の株式買取請求権も認められるべきである(469条類推適用)。

   

 

 

 

Q5

 現物出資のとき、Q社では、新株発行手続を行うことになる。

Q社は公開会社(2条5号)なので、有利発行に当たらない限り、取締役会決議によって新株を発行することができる(201条1項)。

有利発行であれば、株主総会の特別決議が必要(199条2項、309条2項5号)。

いずれの場合も、反対株主の株式買取請求権はない。

   

 

 

 

Q6

 吸収分割の場合、原則として、P社では株主総会の特別決議が必要(783条1項、309条2項12号。消滅株式会社等には吸収分割株式会社が含まれる(782条1項2号))。

 

例外として、簡易分割と略式分割の場合は、株主総会決議は不要。

本件ではPQ間に親子会社関係はないので、略式分割(特別支配会社という強度の親会社が存在する場合の分割)は使えない。

また、簡易分割(P社から出ていく財産が小さい場合の分割。784条3項)も、不動産部門がP社の資産の半分を占めるので、使えない。

 

反対株主の株式買取請求権は認められる(785条)。

例外として、簡易分割の場合には、株主に与える影響が軽微なため認められないが(785条1項2号)、上記のとおり、本件は簡易分割に該当しない。

   

 

 

 

 判例最決平成23年4月19日会社法判例百選第4版84事件・第3版86事件)によれば、株式買取請求がされた日が「公正な価格」の基準となる。

その理由は、下記の3点。

➀株式買取請求がされた日は、売買契約が成立したのと同様の法律関係が生ずる時点であり、かつ、株主が会社から退出する意思を明示した時点であるので、その日を基準にするのが合理的であること

②その日より後を基準にすると、請求日後の株価変動のリスク(組織再編以外の要因によるもの)を負担させることになること

③請求日より前の時点(決議日など)にすると、当該時点以降の株価変動のリスクを反対株主が一切負担しないことになる(投機的行動ができる)ことになり、不当なこと

 

他方、学説では、様々な見解(最高裁と同じ見解のほか、効力発生日説、承認決議日説など)が説かれ、種々の議論もある。詳しくは、判例百選の解説などを参照。

   

 

 

 

 

Q7

吸収分割のとき、原則として、株主総会の特別決議が必要(795条1項、309条2項12号。存続株式会社等には、吸収分割承継株式会社が含まれる(794条1項))。 

 

例外は、略式分割と簡易分割である。本問では、Q社が承継する財産がQ社の純資産に比してわずかであり、Q社が交付する財産がわずかであれば、簡易分割に該当しうる(796条2項)。

簡易分割に該当すれば、株主総会の特別決議は原則不要となる(例外は、796条2項但書きと3項)。

 

反対株主の株式買取請求権も、原則認められる(797条)。

例外として、簡易分割では、反対株主の株式買取請求権は認められない(797条1項但書き(平成26年会社法改正で追加された))。

   

 

 

 

 

設例11-1前半の解説は、以上です。

今回のテーマは重要なので、詳しめの教科書とでしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

 

   

 

 

 

後半の解説はこちらです

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