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会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-11(設例11-1後半)会社分割と事業譲渡・事業の現物出資の比較

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第4版)Ⅱ-11(設例11-1後半)の解答例を紹介します。

テーマは、会社分割と事業譲渡・事業の現物出資の比較です。

重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう!

今回は、長いので、前半と後半の2回に分けて解説しています。今回は後半です。

前半の解説はこちらです↓↓
kaishahou.hatenablog.jp

 

(3)債権者保護

Q8

事業譲渡には、(会社分割と異なり)債権者異議手続はない。

P社が負う債務には、事業譲渡とともにQ社に移転するものと移転しないものがある。

事業譲渡は一般承継ではなく、特定承継なので、免責的債務引受けをするには個々の債権者の同意が必要。このため、債権者異議手続がなくとも、移転する債務に係る債権者は保護される。

移転しない債務に係る債権者についても、利害関係にそれほど重大な影響はないと考えられるため、債権者異議手続はない。P社はQ社から対価を受け取るはずであり、対価が不当に小さい場合(そのような場合は事業譲渡に限らず通常の財産譲渡でもありうる)は、民法上の詐害行為取消権(民424条)や会社法429条1項などの一般的な債権者保護制度で対処することができるから。

また、平成26年会社法改正では、詐害的事業譲渡の場合に、残存債権者が譲受会社に承継した財産の価額を限度として、債務の履行を請求できるという制度が新設された(23条の2)

   

 

 

 

 事業譲渡・現物出資について、会社法上、従業員を特別に保護する制度はない。

多数説は、民法625条1項により雇用契約を移転させるには従業員の個別の承諾が必要であると解している。

他方、従業員との雇用関係は事業の人的施設であり、従業員の同意なしに当然に譲受人に移転するとする少数説もある。

詳しくは、商法判例百選16事件の解説〔洲崎博史〕を参照。

   

 

 

Q9

Q社側にも債権者異議手続はない。

事業の現物出資の場合であれば、207条1項の検査役調査により保護が図られる(事業が過大評価され、Q社債権者が害されることを防いでいる)。

そもそも、対価が株式なので(会社財産は流出しないので)、債権者は害されないという考え方もある(資本充実原則の意義にかかわる問題)。

事業譲渡の場合、金銭を対価として支払っており債権者が害されるおそれがあるが、検査役調査の制度はなく、民法上の詐害行為取消権(民法424条)や会社法429条1項などの一般的な債権者保護手続によって対処することになる。

   

 

 

 

Q10

吸収分割では、債権者異議手続により、債権者の保護が図られる。

具体的には、Q社に移される債権者について、789条1項2号により債権者異議手続の対象となる。

※なお、近時、債権者異議手続の利用が(期待)できない事例において、信義則により債権者の保護を認めた判例が登場している(最決平成29年12月29日民集71巻10号2592頁会社法判例百選第4版90事件)。本判例については下記記事を参照してください。

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

これに対し、P社にとどまる債権者については、原則、債権者異議手続は不要である。その理由は、Q社から対価が入ってくるので、それが適正である限り、利害関係に影響はないからである。

詐害的な会社分割に対しては、民法上の詐害行為取消権最判平成24年10月12日会社法判例百選第4版91事件・第3版93事件)、法人格否認の法理会社法22条1項類推適用(商号の続用がある場合。最判平成20年6月10日会社法判例百選第4版A40事件・第3版A37事件参照)により、対処されてきた。

また、平成26年会社法改正で、詐害的な会社分割がなされた場合に、分割先の会社に承継した財産を限度に債務の履行を請求できる旨の規定(759条4項等)が設けられた。本規定の創設後も、詐害行為取消権などの救済手段はなおも利用可能であると解されている。

 

なお、P社にとどまる債権者についても、例外として、758条8号の定めがあるの場合(いわゆる人的分割の場合)は、債権者異議手続の対象となる(789条1項2号2つ目の括弧書き)。

 

※詐害的会社分割における債権者保護の問題は、【設例11-3】で詳しく扱われるので、そちらの解説も参照されたい。

 

会社分割では、PQ間の吸収分割契約に従って、P社の従業員の個別の承諾なしに雇用契約も承継される。

そこで、特別の労働者保護手続が存在する(会社分割に伴う労働契約・承継等に関する法律)。具体的には、労働者との協議義務と労働者の異議申出手続が定められている。

当該制度については、会社法判例百選第4版92事件(第3版では94事件)の解説〔齊藤真紀(令和4年度司法試験考査委員です!)〕も参照。

   

 

 

Q11

Q社側は事業を承継して、P社に対して株式等を交付するので、 Q社側の債権者は、吸収合併の存続会社債権者と同じような不利益を受けるおそれがある。

そのため、すべての債権者が債権者異議手続の対象となっている(799条1項2号)。 

 

 

 

(4)制度の優劣

Q12

検査役調査と個別株主の同意が不要である点では、会社分割の手続は簡便である。よって、債権者が多い会社では、会社分割を使うメリットが大きい。

 

他方で、会社分割では、事業譲渡や事業の現物出資よりも手続が重くなりうる。

具体的には、①詳細な法定事項を記載した吸収分割契約書を作成しなければならない、②当該契約書を事前事後に開示する手続も必要である、③簡易分割・略式分割の場合を除き株主総会決議を経なければならない、④債権者異議手続も必要でこれには1か月かかる。

 よって、債権者の数が限定されていて、個別の債権者の同意を取ることができる見込みのある場合、事業譲渡や事業の現物出資を用いることが、時間や費用の観点から賢明であることもありうる

   

 

 

 

設例11-1後半の解説は、以上です。

今回のテーマは、重要なので、詳しめの教科書でしっかり復習しましょう!!

それでは、また次回!

 

 

   

 

 

 

 

 

設例11-2の解説はこちらです

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