司法試験・予備試験・ロー入試に向けた会社法

司法試験上位合格者が会社法についてわかりやすく解説します

会社法事例演習教材の解答例Ⅱ-11(設例11-3)会社分割により承継される権利義務・詐害的会社分割

こんにちは、コポローです。

今回は、会社法事例演習教材(第4版)Ⅱ-11(設例11-3)の解答例を紹介します。

テーマは、会社分割により承継される権利義務・詐害的会社分割です。

試験に出やすい非常に重要なテーマなので、しっかり勉強しましょう! 

   

 

 

 

(1)承継の対象と人的分割型新設分割

Q1

会社法制定前は、会社分割で移転させることができるのは、「営業」(会社法でいう「事業」)であると明文で定められていた。

しかし、会社法の下では、「事業に関して有する権利義務」を承継させればよいとされている(2条30号・2条29号)。

改正の理由としては、①事業でなくても、債権者異議手続などで債権者は保護されるので事業に限定する必要はないこと、②事業しか移転できないとしたときに、事業概念が明確でないので、法的安定性が害される(事業でないと解されて会社分割が無効になるリスクがある)ことがある。

 

 会社法の下では、債権者異議手続など適法な手続を経ている限り、本件不動産とAに対する債務のみを新設分割によってQ社に承継させることも可能である。

もっとも、個々の財産のみを承継させるのは、「会社分割」の概念にそぐわないのではないかとの疑問も提起されている。 

   

 

 

 

 

Q2

設問にいう方法は、会社法制定前に「人的分割」と呼ばれていた方法である。 

この方法では、P社の株主にQ社株式が直接交付されるため、P社とQ社間に親子会社関係が残らないことになる。

会社法では、人的分割制度自体はなくなったが(Q社株はあくまでP社に交付される)、人的分割と同様のことをやりたければ、P社が取得したQ社株式をP社株主に交付する、

すなわち、 剰余金配当(現物配当。454条1項1号・4項参照)によってP社株主に分配するという方法を取ればよい。

具体的には、新設分割計画でQ社成立の日にP社が剰余金配当(現物配当)として、Q社株式をP社株主に交付することを定めればよい(763条12号ロ)

もしくは、全部取得条項付種類株式を使って、P社がP社株主からP社株式を取得して、その対価として、Q社株式を交付するという方法をとることもできる(763条12号イ)。

これらのとき、P社から多額の財産が流出する可能性があるが、剰余金分配に関する財源規制は適用されず(812条1項・2項)、債権者異議手続によって債権者保護は図られる。

すなわち、810条1項2号(2つ目の括弧書き)により、人的分割に相当する方法をとる場合には、P社にとどまる債権者も含め、すべての債権者が債権者異議手続の対象となる。

   

 

 

 

(2)債権者異議手続の要否

Q3

 新設分割において、債権者異議手続の対象となるのは、原則として(例外は下記⇒参照)、新設分割株式会社(P社)に履行請求ができなくなる債権者のみであり、残存債権者は異議手続の対象とならない(810条1項2号)。

これは、P社には対価として新会社(Q社)の株式が入ってくるので、残存債権者は害されないと考えられるためである。

 

本件では、AのみがQ社に移転させられるが、重畳的債務引き受けがなされれ、なおもP社に履行請求できる。

よって、債権者異議手続の対象となる債権者がいないので、債権者異議手続を行う必要はない。

 

 Q2で述べたとおり、人的分割に相当する方法をとる場合には、財源規制の適用なしにP社から多額の財産がP社株主に流出することから、P社にとどまる債権者も含め、すべての債権者が債権者異議手続の対象となる(810条1項2号の2つ目の括弧書き)。

   

 

 

 

(3)残存債権者の保護

Q4

Q3で述べたように、残存債権者は原則として債権者異議手続の対象とならないが、①P社の資産がQ社の株式に変わることで(流動性が乏しくなるなどで)P社資産の価値が減少しうること、または、②優良資産と一部の債権者が切り出されて債権者平等が害されることから、残存債権者は不利益を被りうる。

 

こうした詐害的な会社分割から残存債権者を保護するための手段は、①民法上の詐害行為取消権(最判平成24年10月12日会社法判例百選第4版91事件・第3版93事件)、②法人格否認の法理、③会社法22条1項類推適用(商号の続用がある場合。最判平成20年6月10日会社法判例百選第4版A40事件・第3版A37事件参照)が、活用されてきた。

 

そして、平成26年会社法改正で、詐害的な会社分割がなされた場合に、分割先の会社に承継した財産を限度に債務の履行を請求できる旨の規定(759条4項・764条4項)が設けられた。

なお、いわゆる人的分割に相当する場合には、残存債権者も債権者異議手続の対象となることから、上記規定は適用されない(759条5項・764条5項)。

 

本問では、Bは、764条4項に基づき、Q社に対して、 本件不動産の価額を限度として、本件債務の履行を請求できる。(本件新設分割によって、AとBら残存債権者との間で、引当財産の著しい不公平が生じているため、本件新設分割はBら残存債権者を害するものといえる。※ここでの詐害性の解釈は、詐害行為取消権(民法424条)の詐害性の解釈と同様であるとされる。)

   

 

 

 平成26年会社法改正後も、詐害行為取消権などの救済手段はなおも利用可能であると解されている。

また、詐害行為取消権は、残存債権者の保護に必要な範囲で会社分割の効力を一部否定するにすぎず、会社分割無効が無効の訴えのみによって主張できるとされていること(828条9号・10号)に反しないと解されている。

また、取消しの効果として、裁判例では、現物返還ではなく、価額賠償とされることが多い。

詳しくは、会社法判例百選第4版91事件(第3版では93事件)の解説を参照。

   

 

 

 

 

Q5

 新設分割無効の訴えの原告適格は、「新設分割について承認しなかった債権者」にも認められている(828条2項10号)。

債権者異議手続において異議を述べなかった債権者は、新設分割を承認したものとみなされる(810条4項)。

したがって、Bが債権者異議手続の対象である場合(いわゆる人的分割の場合。Q3⇒参照)には、Bは異議を述べていれば、原告適格を有する。

 

他方、Bが債権者異議手続の対象でない場合には、Bが「新設分割について承認しなかった債権者」に含まれるかという解釈問題が生じるが、債権者異議手続の対象でない債権者はこれに含まれないと解されている(東京高判平成23年1月26日金判1363号30頁)。

したがって、この場合、Bは新設分割無効の訴えを提起することはできない(BはQ4で述べた救済手段をとるべきことになる)。

   

 

 

 

 

設例11-3の解説は、以上です。

今回のテーマは重要なので、詳しめの教科書と判例百選でしっかり復習しましょう!!

 

今回で、会社法事例演習教材の解説は終わりです。大変、お疲れ様でした。

この教材を最後までやり遂げたことで会社法の実力が大きく上がったはずです。

改訂版が出たり、法改正・重要判例・百選の改訂等があるたびに、本ブログの解答例も改訂していく予定です。

これからも会社法の勉強を頑張っていきましょう!!

   

 

 

 

 

 

 

本ブログの人気記事です

kaishahou.hatenablog.jp

kaishahou.hatenablog.jp

kaishahou.hatenablog.jp

kaishahou.hatenablog.jp

kaishahou.hatenablog.jp