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令和元年会社法改正のポイント①株主総会資料の電子提供

こんにちは、コポローです。

今回から、各種試験の受験生向けに、令和元年会社法改正の内容をコンパクトに解説する記事を連載します。

令和元年会社法改正では、細かいテクニカルな改正が多く、受験生や法学部生にとっては、とっつきにくい内容となっています。本連載では、論述試験に出そうな重要項目にしぼって、改正法のポイントを解説します。

今回(第1回)の内容は、株主総会資料の電子提供制度です。

重要な事項には下線を引き、中級者~上級者向けの項目にはその旨を表記しております。

※新しい六法などで条文を確認しながら、読み進めてください。

 

1 総説

株主総会資料をすべてウェブサイトに掲載し、株主に対する書面による招集通知には、当該ウェブサイトのアドレス等の基本的な事項のみを記載することで足りるとする制度が創設された(325 条の2~325 条の7等)。

・制度の目的は、①株主に対しより早期に充実した内容の情報提供をすること、および株主総会資料の印刷・郵送のために要する費用を削減することである。

・電子提供制度を利用できる会社の範囲に限定はない。ただ、電子提供措置を利用するには定款の定めが必要である(改正 325 条の 2 前段)。

・上場会社については、電子提供制度の利用が義務付けられている(改正振替法 159 条の 2 第1項)。振替株式を発行している会社については、電子提供制度を利用する定款の定めを設ける旨の定款変更決議がされたとみなされる(整備法10条2項)。

 

2 電子提供措置

・電子提供措置とは、会社が株主総会資料を自社のホームページ等のウェブサイト上に掲載し、株主が閲覧することのできるようにする措置である(改正325条の2括弧書)。

・299 条 2 項各号に定める場合(=書面投票・電子投票を採用する場合、または取締役会設置会社である場合)には、下記①~⑦の事項について電子提供措置をとらなければならない(改正325 条の3第1項)。

→「電子提供措置事項」(改正325条の5第1項)

  ①298 条1項各号に掲げる事項

  ②議決権行使書面に記載すべき事項

  ③株主総会参考書類の内容

  ④株主提案に係る議案の要領

  ⑤計算書類・事業報告の内容(監査報告・会計監査報告を含む)

  ⑥連結計算書類の内容

  ⑦電子提供措置事項を修正した旨および修正前の事項(325 条の3第1項の1~7 号)

※①~⑥……改正前には株主に書面で提供することが要求されていた事項である。②には、株主の氏名・名称および議決権数が記載されるため(会社則 66 条1項5号)、ウェブサイトへの掲載は実務的な負担が大きいことから、任意に議決権行使書面を紙で送付する場合には、ウェブサイトには②を掲載する必要はない(改正325条3第2項)。

※⑦は、前記①~⑥の事項を修正したときに、ウェブサイト上で修正を認めるものであり、現在のウェブ修正の制度に相当する。

 

※EDINETの特例(中級者~上級者向け)

有価証券報告書提出会社(金商 24 条 1 項)が電子提供措置事項を含む有価証券報告書を、掲載期間開始日までにEDINET(金商 27 条の 30 の 2)を使用して開示する場合には、当該事項については、電子提供措置をとることを要しない(改正 325 条の 3 第 3項)。

議決権行使書面に記載すべき事項は、EDINETによる開示では代替できない。株主の氏名などを不特定多数の者に開示するのは適当でないためである。議決権行使書面を書面で送付することにすれば、完全に電子提供措置を省略できる。

 

3 電子提供措置期間

掲載期間の開始日は、株主総会の3週間前(改正 325 条の 3 第1項)。ただし、招集通知を3週間より前に発する場合には、招集通知を発する日。

・現在の招集通知の発送期限は、公開会社であれば株主総会の日の2週間前(299 条 1 項)であるところ、印刷・郵送に要する期間分は早期にウェブサイトに掲載する措置をとれるはずとして3週間前となった。その結果、株主は議決権行使のための考慮期間を今より長く確保できるようになる。

※なお、法制審議会の附帯決議では、取引所の規則改正によって、上場会社は3週間よりも早期に開始する努力義務を負うことが示されている。

 

掲載期間の末日は、株主総会の日以後3か月を経過する日(改正 325 条の 3 第1項)。電子提供措置事項に係る情報が株主総会決議の取消しに係る訴訟で証拠として使用されうることを考慮(831 条 1 項参照)。

 

4 招集通知の特則

○従来書面での招集通知が要求されていた会社(299 条 2 項)では、ウェブサイトのアドレスなどの基本的事項だけは、従来どおり原則として書面で株主に通知しなければならない。

・ただし、電磁的方法での提供を株主が承諾した場合には、この基本的事項の通知さえも書面でなく電磁的方法で行うことはできる(299 条 3 項)。

・現行の招集通知の記載事項および添付書類よりも大幅に簡素化されている。

○書面に記載すべき事項(改正325条の4第2項)。

① 298 条 1 項 1 号~ 4 号の事項

②電子提供措置をとっていればその旨

③ EDINET を利用していればその旨

法務省令で定める事項

→④では、ウェブサイトのアドレス(複数も可)等が定められている。

 

○招集通知に際して、株主総会参考書類等(株主総会参考書類・議決権行使書面・計算書類・事業報告・連結計算書類)の交付は必要なくなる(改正 325 条の 4 第 3 項)。しかし、会社の側が、任意に追加の事項を書面で提供することは禁じられない。議決権行使書面を、書面による招集通知に同封する会社が多いと推測される。

 

〇招集通知の発出期限は、公開会社・非公開会社とも株主総会の2週間前である(改正 325 条の 4 第1項)。書面交付請求(下記参照)に応じてする書面の交付は、招集通知の際に行われる(改正325条の5第2項)。

 

6 書面交付請求権

・書面交付請求権……電子提供制度を採用する会社の株主が電子提供措置事項を記載した書面を自らに交付するよう請求することのできる権利。

デジタルデバイドによる弱者を保護するため、株主に書面交付請求権を認めた(改正 325 条の 5第 1 項)。ただし、「299 条 3 項の承諾をした株主」は除かれる。インターネットを利用することができるはずで、書面交付請求権を与えるほどのことはないからである。

・書面交付請求の行使期限は、議決権行使の基準日までである(改正325条の5第2項)。

株主は、いったん交付請求権を行使すれば、その後に開催されるすべての株主総会について書面の交付を受けることができる。

 

※振替株式の株主による書面交付請求の方法(※中級~上級者向け)

○株主名簿上の株主は、会社(株主名簿管理人)に直接に書面交付請求をすることができる(改正325条の5第1項)。議決権と同様、権利行使をするのに個別株主通知(振替法 154 条)は不要である。ただし、株主でなくなっている者は、次の総株主通知(振替法 151 条 1 項)によっては基準日株主となることはできないので、会社は書面の交付をする必要はない。

○振替株式の株主については直近上位機関を経由して請求することもできる(改正振替法 159 条の 2 第 2 項前段)。株主名簿上の株主でなくてもこの請求権を会社に対して対抗することができる(同条 2項後段)。

→株主が次の総株主通知に基づいて初めて基準日株主として株主名簿に記載されることになるのであっても、それまでの間に、この方法で書面交付請求をすることができる。

 

交付すべき書面に記載すべき事項

○交付書面には電子提供措置事項が記載される(改正325条の5第1項)。

→任意の事項も含めて、ウェブサイトに掲載した事項をすべて印刷して書面で交付しなければならないわけではない。

○定款に基づくウェブ開示によるみなし提供制度(会社則 94 条等)は実質的に残された(※中級~上級者向けの内容)。

→電子提供措置事項のうち法務省令で定めるもの(みなし提供制度の対象であった事項と同様の事項)の全部または一部については、書面交付請求を受けて交付すべき書面に記載することを要しない旨を定款で定めることができる(改正 325 条の5第3項)。

 

書面交付請求の失効

・書面交付請求をした株主が累積していく懸念があることから、書面交付請求後1年経過すれば、会社が書面交付請求をした株主に対して、請求を失効させてよいか異議があれば述べるよう催告することができ、異議がなければ請求は失効するという制度が設けられた(改正 325条の5第 4 項・5項)。催告期間は1か月以上必要である。

 

 

電子提供措置の中断と救済制度

○電子提供措置は、電子提供措置期間中、「継続して」行う必要がある(改正325条の3第1項)。

中断が生じた場合、原則として(下記の救済制度の要件を満たさない場合)、電子提供措置は無効となる。

無効となる場合、過料の制裁の対象(改正 976 条 19 号)となるほか、中断が電子提供措置開始日から株主総会の日の前までの期間に生じていた場合、決議取消事由となる(831条1項1号)。

・しかし、些細な中断で電子提供措置が無効になると、会社に酷であるし、株主の混乱を招くことにもなるので、電子提供措置の中断が生じた場合であっても、一定の要件を満たせば救済され、電子提供措置の効力に影響を及ぼさないものとした(改正 325 条の 6)。

→救済を受けるための要件は、電子公告の規定(940 条3項)と同様である。すなわち、中断について会社に悪意・重過失がないことまたは正当な理由があること(325条の6第1号)や、中断を知った後の速やかな対応(同4号)が必要である。ただし、中断時間の合計が電子提供措置期間全体の 10 分の 1 以下であるという要件(改正 325 条の 6 第 2 号)に加え、電子提供措置開始日から株主総会の日までの期間中だけで見ても、その期間中の中断がその期間の 10 分の 1 以下でなければならない(同条 3号)。株主への情報提供という観点からは、株主総会の日までの電子提供が重要だからである。

 

 

今回の解説記事は以上です。

次回は、株主提案権に関する改正の内容を紹介します。

それではまた!

 

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