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令和元年会社法改正のポイント②株主提案権の制限

こんにちは、コポローです。

令和元年会社法改正では、細かいテクニカルな改正が多く、受験生や法学部生にとっては、とっつきにくい内容となっています。本連載では、論述試験に出そうな重要項目にしぼって、改正法のポイントを解説します。

今回(第2回)の内容は、株主提案権の制限です。重要な事項には下線を引ております。

※新しい六法などで条文を確認しながら、読み進めてください。

 

1 改正の内容:数的制限の導

 取締役会設置会社の株主が議案要領通知請求をすることのできる議案の数の上限を10 とする(改正 305 条 4 項・5 項)。

 

※株主提案の 内容的制限の導⼊の試みと削除

法案段階では、専ら⼈の名誉を侵害するなどの不当な⽬的による議案の提出などの場合を請求拒絶事由とする改正も提案されたが、国会審議で削除された。

 

〇改正の趣旨

株主提案権が濫⽤的に⾏使されること(1 ⼈の株主により膨⼤な数の議案が提出されるなど)により、株主総会における審議の時間等が当該議案に割かれ、株主総会の意思決定機関としての機能が害されたり、株式会社における検討等に要するコストが増加したりすることなどが弊害として指摘されている。

→株主提案権が本来の⽬的に資するように⾏使されることを確保するため、株主提案権の濫⽤的な⾏使を制限するための措置として、提案できる議案の数を制限した。

 

〇ポイント1:取締役会設置会社に限定

理由①:取締役会非設置会社では、株主総会会社法に規定する事項および会社の組織・運営・管理その他会社に関する⼀切の事項について決議することができること(295 条 1 項)。

理由②:取締役会非設置会社では株主が議場において新たな議題・議案を追加して提案することができること(303条 1 項〔議題提案権の⾏使期限の定めなし〕)。

→取締役会非設置会社では、機関権限の分配として、株主が株主総会の決議を通じて会社経営に直接関与することが想定されている

株主総会の議場において臨機応変に議題・議案を設定できることが必要となり得る

 

〇ポイント2:議題提案権(303 条)には数的制限は設けられなかった

理由①:改正前会社法で、株主の基本的権利であるとして、実質的に同⼀の議案の提出の制限(304 条ただし書、改正前 305 条 4 項〔泡沫提案の制限〕)と同様の制限を設けていなかったこと。

理由②:数的制限の必要性が⼤きくないこと(議題提案権の性質上、膨⼤な数の議題を提案することは想定しがたい)。

 

〇ポイント3:議場における議案提案権(304 条)にも数的制限は設けられなかった

理由①:取締役会設置会社では、招集者が会議の⽬的と定めて株主に通知した事項以外は決議できない(309 条 5 項)。

理由②:議案の修正動議の範囲は議題から予⾒可能な範囲内に限定される。

理由③:議⻑の議事整理権・秩序維持権(315 条 1 項)に基づく議案の取捨選択が可能。

 

〇制限の数が10 とされた理由

 ①近年の⾏使状況を⾒ると、株主の提出に係る議案の数は、各株主につき多くても 10程度にとどまっていること。

② 株主が同⼀の株主総会に議案を何⼗も提出する必要がある場合は想定しづらいこと。

→市⺠運動型の提案も含め従来の株主提案の実務の⼤部分を実質的に制限せず、ごく⼀部の濫⽤的な⾏使を思いとどまらせるようなメッセージを送るものといえる(⿑藤真紀・ジュリスト 1542 号28 ⾴)。

 

2 制限の効果

・株主が 10 を超える数の議案を提出する場合には、その 10 を超える部分の議案につい

ては、議案要領通知請求権は否定される(改正 305 条 4 項前段)。

これは、会社の拒絶事由を定めたものである。会社が拒絶せずに任意に議案の要領を通知することは認められる。任意に通知した場合に、株主総会決議に違法の瑕疵はじない。

※この理解の背景には、議案の数の数え⽅が必ずしも明確でないため、会社が安全策をとって適法な議案の提案があったと認めたところ、実は、客観的には 10 を超えていたという場合に、任意の通知をすれば決議に瑕疵が生じるということになれば、会社にとって酷であることがある。

 

・株主が10を超える議案を提案したときの効果(5項)

10個を超える議案の要領を株主に通知するよう請求した場合でも、そのうち10個までは株主の請求権が認められる。その10個の議案をどのように選ぶかについて、改正法は、「取締役が定める(5項本文)。ただし、株主が優先順位をつけた場合は、取締役はそれに従う(5項但書き)」と定めている

※条文の構造としては、取締役が決められる旨を本文で規定しており、それが原則であるかのような形になっているが、実際には但書きのとおり株主の定めた優先順位に拘束されるので、株主が選べるようになっている。

 

 

3 議案の数の数え

〇改正前の状況=明確な基準なし

役員等の選解任等に関する議案は、1 候補ごとに 1 議案(東京地判平成 19 年 12 ⽉6 ⽇判タ 1258 号 69 ⾴参照)。そのほかの案件の場合も、採決の単位としてふさわしい範囲で 1 つの議案としていた。

 

〇改正法

・役員等の選解任等に関する議案や定款変更に関する議案について、議案の数の数え⽅に関する特別の定めを置いた(改正 305 条 4 項後段各号)。

※これは 提出可能議案数の制限(10)を上回っているか否かの判断においてのみ妥当する。

 

(1)役員等の選解任等に関する議案

役員等(取締役、会計参与、監査役または会計監査)の選任または解任に関する議案および会計監査を再任しないことに関する議案は、当該議案の数にかかわらず、1 の議案とみなされる(改正305条4項後段1号〜3 号)。

理由:従来の取扱いのように 1 候補者ごとに 1 議案だとする場合、役員等の数次第では 1の株主総会において株主が希望する全ての⼈事案を提出できなくなる、提出できたとしても他の議案の提出可能数が⼤きく制約されるおそれがあるから

 

※なお、役員の種類ごとに分けて数えることはしない。すなわち、取締役、会計参与、監査役または会計監査⼈の各役職のうちの複数について選任を提案する場合も、すべてまとめて 1 の議案となる。

※議題をまたぐ場合にも、議案の数の数え⽅としては 1 の議案になる(⿑藤・前掲 29

⾴)。

 

(2) 定款変更に関する議案

・定款の変更に関する 2 以上の議案は、当該 2 以上の議案について異なる議決がされたとすれば当該議決の内容が相互に盾する可能性がある場合に、1 の議案とみなされる(改正305条4項4 号)。

理由①:定款変更に関する議案は、提案者が採決の単位としてふさわしいと考える限りで、任意に 1 つまたは複数の議案として設定することができる。

理由②: 株主が、相互に無関係な膨⼤な数の条項を1の議案として提出するときに、そのまま 1 の議案として取り扱うならば、数的制限の意味が⼤幅に減殺されるため、⼀定のルールは必要。

 

→例えば、「取締役の員数変更の件」という議題について、「取締役の数は5名とする」という変更議案と「取締役の数は6名とする」という変更議案との2つの相互に矛盾する議案が提案された場合に、仮に両方とも決議されてしまうと取締役の数についての定款の定めに矛盾が生じる。

これらの議案は、取締役の数という1つの事項に関するものといえ、そのような議案は、複数提案されてもまとめて1つの議案と数えられることになる。

 

 

今回の解説記事は以上です。

次回は、役員報酬に関する改正の内容を紹介します。

それではまた!

 

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