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令和元年会社法改正のポイント⑤社外取締役の活用

 

こんにちは、コポローです。

令和元年会社法改正では、細かいテクニカルな改正が多く、受験生や法学部生にとっては、とっつきにくい内容となっています。本連載では、論述試験に出そうな重要項目にしぼって、改正法のポイントを解説します。

今回(第5回)の内容は、社外取締役の活用です。重要な事項には下線を引ております。また、中級者から上級者向けの事項にはその旨を付記しています。

※新しい六法などで条文を確認しながら、読み進めてください。

   

  1. 社外取締役を置くことの義務づけ

(1)改正前後の条文比較

(改正前)

社外取締役を置いていない場合の理由の開

327 条の 2

事業年度の末⽇において監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、⼤会社であるものに限る。)であって⾦融商品取引法第 24 条第 1 項の規定によりその発⾏する株式について有価証券報告書を内閣総理⼤⾂に提出しなければならないものが社外取締役を置いていない場合には、取締役は、当該事業年度に関する定時株主総会において、社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならない。

 

(改正後)同じ範囲の会社に、社外取締役を置くことを義務づけ

社外取締役の設置義務)

327 条の 2

 監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、⼤会社であるものに限る。)であって⾦融商品取引法第 24 条第 1 項の規定によりその発⾏する株式について有価証券報告書を内閣総理⼤⾂に提出しなければならないものは、社外取締役を置かなければならない。

 

 

※関連する法務省令の改正(中級者~上級者向け)

株主総会参考書類]

株主総会参考書類における社外取締役を置くことが相当でない理由に関する規定(会社則 74 条の 2)の削除

株主総会参考書類の記載事項に「社外取締役に選任された場合に果たすことが期待される役割の概要」の追加(会社則 74 条 4 項 3 号、監査等委員である取締役の選任議案につき、同 74 条の 3 第 4 項 3 号)

・公開会社に限定されない。公開会社・⾮公開会社に限らず、社外取締役候補とした場合には当該候補者を社外取締役とした理由を記載しなければならない(会社則 74 条 4 項 2 号、74 条の 3 第 4 項 2 号)こととの平仄から。

・「社外取締役候補者とした理由」(会社則 74 条 4 項 2 号、74 条の 3 第 4 項 2 号)や「経営に関与したことがない候補者であっても社外取締役としての職務を適切に遂⾏することができるものと当該株式会社が判断した理由」(74 条 4 項 5 号、74 条の 3 第 4 項 5 号)では、社外役員に期待されている機能を果たしうるか否かを株主が評価するための情報が⼗分に与えられているとはいえないという指摘に対応した

・ここに記載された内容が不⼗分であっても、それによって社外取締役として職責が縮減されるわけではない

[事業報告]

○公開会社の事業報告における社外取締役を置くことが相当でない理由の記載に関する規定(会社則 124条2項・3項)の削除

○公開会社の事業報告の記載事項に「当該社外役員[たる社外取締役]が果たすことが期待される役割に関して⾏った職務の概要」の追加(会社則 124 条 4 号ホ、119 条 2 号)

・公開会社においてのみこの記載が求められるのは、公開会社のほうが社外取締役に期待される役割は⼤きいから事後検証を可能とするため。

 

 (2)案担当者による改正の趣旨に関する説明

社外取締役の位置づけ:少数株主の含む全ての株主に共通する株主の共同の利益を代弁する場にある者として、業務執者から独した場で、会社経営の監督をい、また、経営者あるいは配株主と少数株主との利益相反の監督をう役割を果たすべき存在である(⼀問⼀答 156頁)。

○⽴法の理由

機関投資家・⾦融商品取引所等から、上場会社に画⼀的に義務づけるべきであるという意⾒

②上場会社における(独⽴)社外取締役の選任の普及

③「我が国の資本市場が信頼される環境を整備し、上場会社等については、社外取締役による監督が保証されているというメッセージを内外に発信すべきである」という認識の共有

→ガバナンスを実質的に向上させるというよりも、投資を呼び込むために国としての姿勢を⽰すという意味合いの強い。

 

○対象が限定された理由(⼀問⼀答 158):①不特定多数の株主が存在するため、社外取締役による監督の必要性が特に⾼いこと、②社外取締役による⼈材確保に伴い⽣ずるコストを負担することができる。

  

 (3)社外取締役を置かなかった場合の効果

○遅滞なく選任しなかったときには、100 万円以下の過料(976 条 19 号の 2)

そのほか、⽴案担当者によると、⽋員に当たると理解される。よって、⽋員に関する規定が適⽤される(補⽋役員の選任(329 条 3 項)、役員権利義務者(346 条 1 項)、⼀時役員の選任申⽴(346 条 2 項))。株主総会への議案提出や⼀時役員の選任申⽴てをしない場合は、取締役の任務懈怠となる。

 

(4)取締役選任決議の効

社外取締役がいない会社において株主総会会社提案に社外取締役候補者がいない場合の決議の効

・難問である。考え得る解釈として、①取締役選任議案の最後のものが瑕疵を帯びる(松中)②すべての取締役選任議案が瑕疵を帯びる(⽩井)、③株主総会決議の瑕疵は問題とならない、がある。

会社法 327 条の2は会社に設置を義務づけていることから、社外取締役が⽋けた場合に社外取締役を選任すべきこととなる株主総会社外取締役選任議案を会社提案として提出されていなければ、取締役選任議案に何の法的な瑕疵もないとするのは⽴法の趣旨に合致しない。社外取締役の候補者を⽴てるという⼿続を伴わないまま(社内)取締役選任候補を提案したものとして決議⽅法の法令違反ということになろうか(⽩井 7 ⾴は招集⼿続の法令違反と位置づける)。

複数の取締役選任議案に論理的な前後関係はないから、理論的には②と考えざるを得ないように思われるが、法務省令にかかる法務省の理解からは①が整合的である。株主提案に社外取締役選任議案が提出されたとしても、会社提案に瑕疵あることには変わらないが、株主提案により社外取締役が選任されたら、瑕疵は治癒されると考えられ得る。

 

社外取締役候補者が社外性をいていた場合

その者に関する選任議案について招集⼿続の法令違反(株主総会参考書類の虚偽記載)になる

 

(6)社外取締役如のまま有効な取締役会決議をなしうるか。

・⽴案担当者:事後的にけた場合においても、遅滞なく選任⼿続を進め、合理的な期間内に社外取締役が選任されたときは、取締役会決議は無効とはならない。他期間に亘って不在であれば、無効となりうる。

・神⽥:上場会社等は「社外取締役を置かなければならない」という定めをすることが想定されており、このような定めあれば、取締役会の決議要件との関係においては社外取締役を特別扱いせず、社外取締役いている場合であっても、ただちに有効に取締役会の決議をすることができないこととなるものではないと整理することができると考えられる

→結局のところ、この問題は解釈問題であるということになるが、部会での審議に鑑みると、社外取締役が⽋けた場合であっても、遅滞なく社外取締役が選任されるときは、その間に取締役会を開催することができ、その取締役会の決議は瑕疵を帯びないものと考えられる(なお、権利義務取締役(会社法 346 条 1 項)等の適⽤もある)。

   

  1. 業務執社外取締役への委託

(1)改正法の概要

(業務の執社外取締役への委託)348 条の 2

第1

株式会社(指名委員会等設置会社を除く。)が社外取締役を置いている場合において、当該株式会社と取締役との利益が相反する状況にあるとき、その他取締役が当該株式会社の業務を執⾏することにより株主の利益を損なうおそれがあるときは、当該株式会社は、その都度、取締役の決定(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によって、当該株式会社の業務を執⾏することを社外取締役に委託することができる。

第2

指名委員会等設置会社と執⾏役との利益が相反する状況にあるとき、その他執⾏役が指名委員会等設置会社の業務を執⾏することにより株主の利益を損なうおそれがあるときは、当該指名委員会等設置会社は、その都度、取締役会の決議によって、当該指名委員会等設置会社の業務を執⾏することを社外取締役に委託することができる。

第3

 前⼆項の規定により委託された業務の執⾏は、第⼆条第⼗五号イに規定する株式会社の業務の執⾏に該当しないものとする。ただし、社外取締役が業務執⾏取締役(指名委員会等設置会社にあっては、執⾏役)の指揮命令により当該委託された業務を執⾏したときは、この限りでない。

 

(2)背景

○業務執⾏に該当する⾏為をした場合の社外取締役の地位:その時点で社外取締役の要件を満たさなくなる→社外取締役ではなくなる(責任限定契約に関する 427 条も適⽤されなくなる)。

○構造的な利益相反関係があるマネジメント・バイアウトや親⼦会社間の取引において、社外取締役が、業務執⾏者から独⽴した⽴場で、会社の利益に適う条件であるか等につき、審査し、意⾒を述べたり、相⼿⽅(マネジメントバイアウトの買い⼿や親会社等)と交渉をしたりする実務の普及してるが、これらの⾏為が「当該株式会社の業務を執⾏した」ことに該当すると、社外取締役の要件を事後的に⽋くことになるおそれがあることから(2 条 15 号イ)、これらの実務を萎縮させることがないよう⽴法によりセーフハーバーを設けることが求められた。

 

 (3)社外性と業務執概念の関係

⽴法過程における議論:本条の創設により、「業務執⾏」にかかる従来の解釈に影響を及ぼすことは予定されていない。本条の趣旨は、司法判断を事前に得られないことに伴う実務の萎縮を回避するためのセーフハーバールールであるとされる。

 

 (4)「当該株式会社と取締役(執役)との利益が相反する状況にあるとき、その他取締役が当該株式会社の業務を執することにより株主の利益を損なうおそれがあるとき」

会社法 356 条 1 項 2 号・3 号を含み、それに限られない。⽴案担当者は、マネジメント・バイアウト、株式会社と取締役・執⾏役との間の利益相反取引、親⼦会社間の取引を挙げている(⼀問⼀答 153 ⾴)このほか、現⾦を対価とする少数株主の締め出し、買収防衛策の発動、会社不祥事に関する調査などが考えられる。

 

(5)取締役会決議による委託

○新 348 条の 2 はこれらの⾏為を⾏っても社外性が失われない、と規定したのではなく、取締役会決議を要することとした。実質的な意義は、後述(7)のように、社外取締役が誰からも監督を受けないで継続的に活動する事態を回避するために設けられた。

社外取締役が⾏う特定の⾏為が社外性を害しない、という規定ぶりと⽐較した場合の利点としては、セーフハーバーのメリットを享受しうる範囲が裁判外で当事者が可視化できる。

→今後、社外取締役が何らかの⾏為をするときには、取締役会による授権が必要である、という解釈を⽣む契機となった。他⽅で、348 条の 2 が適⽤される⾏為が「業務執⾏」であるとすれば、監査役が担うことが難しいという問題も⽣じうる(ただし監査役の兼任禁⽌規定は、業務執⾏に結びつけられておらず、解釈上、業務執⾏はできないと解されているにとどまる)。

 

 (6)業務執取締役・執役の指揮命令の下で執した場合

・このような場合には監督機能を果たすことは困難であるから、セーフハーバーの対象外とされた

 

(7)「その都度」取締役の決定・取締役会決議により委託

○上記の業務を社外取締役が誰の監督も受けずに野放図に継続的に担うという事態を⽣じないようにするため

○その都度とは、個別の事案ごとである(⼀問⼀答 154 ⾴)

〇監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社においては、取締役・執⾏役に委任できない(399 条の 13第 5 項 6 号・416 条第 4 項 6 号)。監査役設置会社においては、取締役に委任できない(⼀問⼀答 154 ⾴)

○取締役会による撤回:セーフハーバーのメリットを受けられなくなるだけ。改正前から業務執⾏に該当しなかった⾏為については、引き続き社外取締役として遂⾏可能である。

 

(8)指名委員会等設置会社

○指名委員会等設置会社においては、業務執⾏は執⾏役が担う(418 条 2 号)、社外取締役であるか否かにかかわらず、業務執⾏をすることができない(415 条)、というように、取締役の⽴ち位置が違うことから、別⽴てで規定された(⼀問⼀答 155 ⾴、取締役の利益相反等へのかならず取締役会が置かれ、必ず社外取締役がいることから、1 項と 2 項には⽂⾔に違いがある)

○本条 2 項は、415 条における「別段の定め」に該当する(⼀問⼀答 155 ⾴)。

 

(9)(中級者~上級者向け)

社外取締役への業務執⾏の委託にかかる改正に対応した、事業報告書の記載事項の変更はなされていない(⼀問⼀答 152 ⾴注 1 参照)。社外取締役への業務執⾏の委託がただちに事業報告の記載内容になることはない。「株式会社の会社役員に関する重要な事項」(会社則 121 条 11 号)、「各社外役員の当該事業年度における主要な活動状況」(会社則 124 条 4 号)に該当すれば、記載することが必要となる。

○監査等委員または監査委員である社外取締役が、会社法 348 条の 2 第 1 項・2 項の委託を受けた業務を執⾏する場合における、監査職務の適性が損なわれることのないようにするための措置が講じられていれば、内部統制システム等の整備にかかる事項(会社則 118 条 2 号)として記載対象となる。

  

 

 

今回の解説記事は以上です。今回もやや細かい点が多いので、下記の参考書籍や最新の教科書でも復習しておくことをお勧めします。

次回は、株式交付に関する改正の内容を紹介します。

それではまた!

   

会社法改正に関するおすすめの書籍はこちらです(本記事でも一部参考にしました)↓ 

 


 

 

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