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令和元年会社法改正のポイント⑥株式交付

 

こんにちは、コポローです。

令和元年会社法改正では、細かいテクニカルな改正が多く、受験生や法学部生にとっては、とっつきにくい内容となっています。本連載では、論述試験に出そうな重要項目にしぼって、改正法のポイントを解説します。

今回(第6回)の内容は、株式交付です。重要な事項には下線を引ております。

※新しい六法などで条文を確認しながら、読み進めてください。

 

1 株式交付の制度趣旨

株式交付は、自社の株式を対価として、他社の株式を取得して当該他社を子会社化するために創設された組織再編制度です。

改正前における自社株対価買収の手段としては、次の2つがありましたが、いずれも難点がありました。

第1に、募集株式の発行等(199条以下)は、現物出資規制の適用があり、原則として検査役調査(207条)が必要となり時間と費用がかかること、および出資者や取締役等に財産価額填補責任が生じる可能性があること(212条・213条)から、実務上あまり利用されていません。

第2に、株式交換(2条31号)は、主として持株会社の設立のために設けられた制度であり、株式交換において買収会社は被買収会社の発行済株式の全部を取得しなければならず、買収会社が被買収会社を完全子会社化しない場合には同制度を利用できません。

 

→そこで、①完全親子関係でない親子会社関係を作り出す買収を、②自社株を対価として、③現物出資規制なしに行うために作られた制度として株式交付制度が創設されました

 

2 株式交付の定義

株式交付……株式会社が他の株式会社をその子会社(法務省令で定めるものに限る)とするために当該他の株式会社の株式を譲り受け、当該株式の譲受人に対して、当該株式の対価として当該株式会社の株式を交付すること(会社法2条32号の2)

 →法務省令で定めるものとは、自己の(その子会社および子法人等を含む)の計算において所有している他の株式会社の議決権のかすの割合が100分の50を超える場合の子会社(施規3条3項1号)のことです(施規4条の2)。

 

会社法施行規則3条3項2号の子会社は含まれません。株式交付の効力発生日後に要件を満たさないことが判明した場合には法律関係が混乱するおそれがあるため、株式交付実施の可否は事前に客観的かつ形式的な基準によって判断できるようにしています。

 

※すでに議決権の過半数を有している他の株式会社の株式を買い増す場合や、他の株式を子会社としようとしない場合は、株式交付制度を利用することはできません。それらの場合について、株式交換その他の組織法上の行為と同様であると整理することは困難であるからです。

 

3 株式交付の手続

株式交付制度の基本的発想

改正会社法は、株式交付を①株式交付親会社において親子会社関係の創設という組織再編行為を観念し、いわば「部分的な株式交換」として株式交換に準じた規律を設けることで現物出資規制を回避しつつ、②株式交付子会社は株式交付の当事者とはならず、その個々の株主が株式交付親会社に株式を任意に譲渡するものと構成しています。

→①の観点から、株式交付親会社の株主および債権者を保護するために、株式交換の場合に準じた様々な仕組みが設けられています。→816条の2以下

→②の観点から、株式交付子会社には株式交換の場合におけるような集団的な株主保護の規律は設けられておらず、募集株式の発行等の場合(203~206条・208条・211条)を参考として、譲渡しの申込み、承諾および債務の履行(給付)の手続に関する規律が用意されているにすぎません。→774条の2以下

 

もっとも、上場会社では金融商品取引法上の開示規制や公開買付規制による保護があり、株式交付子会社の株式が譲渡制限株式である場合、譲渡承認手続により譲渡人以外の株式交付子会社の株主の保護が図られます。

   

1 株式交付親会社における組織再編手続

(1)株式交付計画の作成義務(774条の2) 

株式交付計画の法定記載事項:①株式交付子会社の商号および住所、②株式交付親会社が株式交付に際して譲り受ける株式交付子会社の株式の数の下限、③株式交付子会社の株式の譲渡人に対して株式交付親会社が交付する対価、④対価の割当てに関する事項、⑤株式交付親会社の資本金および準備金、⑥株式交付子会社の株式および新株予約権等の譲り渡しの申込みの期日、⑦株式交付の効力発生日(774条の3第1項)

 

②の下限は株式交付子会社が効力発生日において株式交付親会社の子会社となる数を定めなければならない(774条の3第2項)。株式交付親会社は、株式交付子会社の株式と併せて同社の新株予約権新株予約権社債を譲り受ける旨を定めることができる(774条の3第1項7号)。

 

③の対価として、株式交付親会社の株式以外の財産を加えることができるが、株式交付親会社の株式以外の財産のみを対価とすることはできない。また株式交付親会社の親会社の株式を対価に加えることもできるが、株式交付は株式交付親会社の株式を主たる対価とする制度であるから、800条(親会社株式の取得にかかる特則)に相当する規定は設けられていない。

 

(2)事前および事後の開示

株式交換の場合に準じて、株式交付親会社には、株式交付計画に関する書面等の事前開示(816条の2)および株式交付に関する書面の事後開示(816条の10)が義務づけられている。これらの閲覧等の請求権は、株式交付親会社の株主に(および債権者異議手続が必要な場合には株式交付親会社の債権者にも)認められており、株式交付子会社の株主には認められていない(816条の2第3項、816条の10第3項)。

→株式交付では、株式交付親会社は株式交付子会社の株主から個別の合意に基づき株式を譲り受ける点で、株式の有償譲渡や現物出資の場合と同様であるところ、会社法上これらの場合に譲渡人保護のための制度が特に設けられていないこととの整合性を図ったもの。

 

(3)株式交付親会社における株式交付計画の承認等

株式交付親会社は、効力発生日の前日までに、株主総会の特別決議によって、株式交付計画の承認を受けなければならない(816条の3第1項・309条2項12号)。株式交付親会社において差損が生じる場合には、取締役は株主総会においてその旨を説明しなければならない(816条の3第2項)。株式交換の場合と同様に、株主総会決議による承認を要しない簡易手続も用意されている(816条の4)。略式手続はない。

反対株主には、簡易手続の場合を除き、株式買取請求権が認められる(816条の6・816条の7)。

 株式交付親会社の債権者を保護する観点から、株式交付の対価に占める同社の株式以外の財産の割合が20分の1以上である場合には、債権者異議手続を経る必要がある(816条の8、施規213条の7)。

株式交付が法令または定款に違反する場合において、株式交付親会社の株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株式交付親会社の株主は株式交付親会社に対して、株式交付の差止請求をすることができる(816条の5)。ただし、簡易手続の場合には差止請求権は認められていない(同条但書き)。また、株式交付子会社の株主や株式譲渡人には差止請求権が認められていない(株式交付親会社側のみについての片面的な組織再編であるから)。

 

株式交付の無効の訴え(828条1項13号)については、基本的に株式交換の場合に準じた規律が設けられている。

もっとも、株式交付子会社の株式・新株予約権等の譲渡人が提訴権者に含まれている。その理由として、株式交付により生ずるその地位への影響を考慮したことが挙げられている。主張できる無効事由の範囲が問題となるが、自己の利益に関する無効事由のみを主張できると解するのが合理的であろう。

無効事由は法定されておらず、解釈に委ねられている。基本的に株式交換の場合と同様に解すべきである。  

無効事由の典型例として、①株式交付計画について法定の要件を欠くこと、②株式交付計画を承認する株主総会決議に瑕疵があること、③株式交付計画の内容等を記載した書面等は備え置かれていないこと、④債権者異議をとらなければならないときに、これをとらなかったことが挙げられている。

株式交付子会社の株式の譲受けが意思表示の瑕疵等により無効等となり(774条の8参照)、その結果、譲り受ける株式の数が株式交付計画で定めた下限に満たない場合は、株式交付の無効原因になると考えられる。

株式交付親会社が株式交付子会社の株式の譲渡しの申込みをしようとする者に対してする通知(774条の4第1項)に重大な不実記載があった場合にも、無効事由になるとする見解が学説上有力である。

   

2 株式交付親会社と株式交付子会社の株式の譲渡人との間の株式譲渡に関する手続

(1)株式交付親会社からの通知

株式交付親会社は、株式交付子会社の株式の譲渡しの申込みをしようとする者に対し、株式交付計画の内容などの所定の事項を通知しなければならない(774条の4第1項)。

 ここでも、募集株式の発行等の場合(会社203条1項)との整合性から、対価の相当性等に関する情報は通知すべき事項に含まれていない。

(2)申込み

株式交付子会社の株式の譲渡しの申込みをする者は、申込みの期日までに申込者の氏名や譲り渡そうとする株式の数などの所定の事項を記載した書面を株式交付親会社に交付しなければならない(774条の4第2項)。

(3)割当て(承諾)

・株式交付親会社は申込者の中から株式を譲り受ける者および譲り受ける株式の数を定め(774条の5第1項前段)、効力発生日の前日までに申込者に対して譲り受ける株式の数を通知しなければならない(同条2項)。

・いわゆる割当て自由の原則が妥当すると考えられる。

→取締役が自派の申込者のみに割り当てるといった、不公正発行類似の問題が生じうる。そのような割当ては株式交付親会社の取締役の善管注意義務違反になりうるが、差止事由の「法令」違反にはならない(通説)。

 

・株式交付親会社は申込者から譲り受ける株式の数を申込者が申込みをした株式の数よりも減少させることができるが、株式交付計画で定めた譲り受ける株式の数の下限を下回ってはならない(774条の5第1項後段)。また、申込みのあった株式の数が当該下限に満たない場合、割当ては行われず、株式交付の手続は終了する(774条の10)。

→株式交付が子会社化のための制度であることが厳格に担保されている

 

(4)子会社株式の給付・効力発生

申込者は、通知(774条の5第2項)を受けた数の株式交付子会社の株式について譲渡人となり、効力発生日に当該株式を株式交付親会社に給付しなければならない(774条の7)。給付には権利の移転を第三者に対抗するために必要となる行為(株券の交付または株主名簿の名義書換え)も含まれる。譲渡される株式交付子会社の株式が譲渡制限株式である場合、株式交付子会社において譲渡等承認の手続を経る必要がある。

 

・募集株式の引受け等に関する意思表示に瑕疵があった場合の規律(211条)に準じ、株式交付子会社の株式の個別の譲受けについて、法律関係の安定化のため、民法93条1項但書きと94条1項の適用を排除し(774条の8第1項)、錯誤・詐欺・強迫による取消しについて期間制限を設けている(774条の8第2項)。

  

・効力発生日に、株式交付親会社は給付を受けた株式交付子会社の株式および新株予約権等を譲り受け(774条の11第1項)、給付をした株式交付子会社の株式の譲渡人は株式交付親会社の株主となる(774条の11第2項)。

・ただし、①債権者異議手続が終了していない場合、②株式交付を中止した場合、③譲渡人から給付を受けた株式交付子会社の株式の数が株式交付計画で定めた下限に満たない場合、④効力発生日において譲渡人のうち株式交付親会社の株主となる者がない場合には、株式交付の効力は生じない(774条の11第5項)。これらの場合、株式交付親会社は、譲渡人に対して株式交付をしない旨を通知するとともに、給付を受けた株式交付子会社の株式を譲渡人に返還しなければならない(同条第6項)。

※④の趣旨は、株式交付は株式交付親会社の株式を対価として株式交付子会社を子会社とするための制度であり、株式交付に際して株式交付親会社の株式を全く交付しないことは想定していないことにある。④に該当する場合として、対価として交付される株式交付親会社の株式がすべて端数として処理される場合(234条1項9号)が考えられる。

 

   

今回の解説記事は以上です。今回もやや細かい点が多いので、下記の参考書籍や最新の教科書でも復習しておくことをお勧めします。

それではまた!

 

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