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判例解説・最判平成28年2月15日(議案を否決する株主総会決議にかかる決議取消しの訴えの適法性)

 

こんにちは、コポローです。

「最近の会社法関係の重要判例について、学習者向けに要点を分かりやすく解説する」記事を連載しています。

最近の予備試験や司法試験では、裁判例を題材(元ネタ)の一部とした出題が散見されます。そこで、重要判例解説や商事法務掲載の解説などを参考に、各種試験との関係で重要な裁判例をピックアップし、要点を分かりやすく解説していきたいと思います。

「最近の判例」の基準としては、会社法判例百選第3版に掲載されていない判例を念頭においています。

   

 

第2回となる今回の判例は、最判平成28年3月4日民集70巻3号827頁議案を否決する株主総会決議にかかる決議取消しの訴えの適法性が問題となった事例)です。

 

(事案の概要)

非取締役設置会社のY社(被告・控訴人・被上告人)には、X1・X2(原告・被控訴人・上告人。以下「Xら」という)およびAの3名の株主がおり、いずれも取締役であった。平成26年5月26日開催のY社臨時株主総会において、Xらの解任議案が否決されたため、AはXらにつき取締役解任の訴えを提起した。これに対して、Xらは当該臨時株主総会の招集手続には瑕疵があったとして、否決された株主総会決議(以下「本件否決決議」という)の取消しを請求した。第1審(福岡地判平成26・11・28民集〔参考収録〕70巻3号838頁)は請求を認容したが、原審(福岡高判平成27・4・22同〔参考収録〕843頁参照)は第1審判決を取り消して請求を却下したため、Xらが上告した。

 

(判旨)

会社法は,会社の組織に関する訴えについての諸規定を置き(同法828条以下),瑕疵のある株主総会等の決議についても,その決議の日から3箇月以内に限って訴えをもって取消しを請求できる旨規定して法律関係の早期安定を図り(同法831条),併せて,当該訴えにおける被告,認容判決の効力が及ぶ者の範囲,判決の効力等も規定している(同法834条から839条まで)。このような規定は,株主総会等の決議によって,新たな法律関係が生ずることを前提とするものである。

しかるところ,一般に,ある議案を否決する株主総会等の決議によって新たな法律関係が生ずることはないし,当該決議を取り消すことによって新たな法律関係が生ずるものでもないから,ある議案を否決する株主総会等の決議の取消しを請求する訴えは不適法であると解するのが相当である。このことは,当該議案が役員を解任する旨のものであった場合でも異なるものではない。」

なお、千葉勝美裁判官の補足意見がある。


 

(解説)

①本判決の意義

本判決は、判旨引用のとおり、①決議取消しの訴えに係る会社法の規定の趣旨(株主総会等の決議によって新たな法律関係が生ずることを前提とすること)および②否決決議の一般的な性格(一般に、否決決議および当該決議の取消しによって、新たな法律関係は生じないこと)を踏まえて、否決決議の取消しを請求する訴えは不適法であると判示した。

本判決は、否決決議の取消しを求める訴えの適法性を、訴えの利益の観点から個別に判断するのではなく、端的に会社法831条に規定する「株主総会等の決議」に否決決議が含まれないという理由によって、否定したものである(調査官解説)。なお、本判決は、ある議案が否決されたことも決議であるとの理解を前提としている(調査官解説)。

株主総会決議取消しの訴えの制度は、瑕疵ある決議について、その効力がないとの主張をする方法を制限する制度である。したがって、本判決が否決決議について当該訴えの対象にならないとしたことは、否決決議には当該制限が及ばず、無効主張の一般原則が妥当することを意味する。よって、否決決議の取消しを求める訴えが不適法であっても、瑕疵がある否決決議によって法律上の不利益を受ける者は、当該決議の効力を個別に争うことができるため、その権利保護に欠けることはなく(調査官解説)、むしろ救済手段が広がるといえる(得津・後掲437頁)。

否決決議に一定の法的効果を付与する規定としては、本件で問題となった役員解任の訴えの要件を定める会社法854条1項のほか、株主による議案の再提案の制限に係る要件を定める同法304条但書き・305条6項がある。本判決は、これらの規定では否決決議によって新たな法律関係が生ずるわけではなく、否決決議が別の法律関係の要件の1つとされているにすぎないと解している(補足意見、調査官解説)。否決決議に手続上の重大な瑕疵があるときは、これらの要件としての否決決議が存在するとはいえないと解釈することになる(補足意見、調査官解説、その他学説多数)。

 

②本判決の射程

本判決は、議案を否決する株主総会決議一般について論旨を展開しており、役員解任議案以外の議案にもその射程が及ぶ。また、本判決は、株主総会「等」の決議と明記していることから、種類株主総会・創立総会・種類創立総会(会社830条1項参照)にも、その射程が及ぶ。

他方、本判決の射程が否決決議の不存在または無効の確認の訴え(会社830条1項・2項)に及ぶかは明確でない(得津・後掲438-440頁参照)。一般的な確認の訴えによって否決決議の瑕疵の存在の確認を求めることは、確認の利益が存在すれば認められるとの指摘もある(得津・後掲439頁参照)。

取締役会設置会社における株主総会の権限事項(会社295条2項)以外の事項についての決議(いわゆる勧告的決議)も、新たな法律関係を生じさせるものではないため、本判決の考え方からは、決議取消しの訴えの対象にはならないと解される。その結果、勧告的決議に係る瑕疵の主張方法にも特に制限はないことになる。勧告的決議に瑕疵が存在すること等の確認を求める訴えも、確認の利益が存在すれば適法とされる余地がある(東京地判平成26・11・20判時2266号115頁は、勧告的決議の無効確認の訴えについて、確認の利益の有無を具体的に検討している)。

 

 (本判例のおすすめ評釈)

〇大森直哉・最判解民事篇平成28年度222頁(調査官解説)

〇得津晶・民商153巻3号431頁

〇松尾健一・商事2106号4頁(R3年予備試験考査委員)

  

今回の記事は以上です。

少しでもみなさんの参考になれば幸いです!!

それではまた!!!

 

 

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