司法試験・予備試験・ロー入試に向けた会社法

司法試験上位合格者が会社法についてわかりやすく解説します

判例解説・最決平成29年2月21日(株主総会決議による代表取締役の選定)

 

こんにちは、コポローです。

「最近の会社法関係の重要判例について、学習者向けに要点を分かりやすく解説する」記事を連載しています。

最近の予備試験や司法試験では、裁判例を題材(元ネタ)の一部とした出題が散見されます。そこで、重要判例解説や商事法務掲載の解説などを参考に、各種試験との関係で重要な裁判例をピックアップし、要点を分かりやすく解説していきたいと思います。

「最近の判例」の基準としては、会社法判例百選第3版に掲載されていない判例を念頭においています。

   

 

第4回となる今回の判例は、最決平成29年2月21日民集71巻2号195頁非公開会社において取締役会によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款規定の有効性が問題となった事例)です。

 

(事案の概要)

 Y1社は非公開会社であり、取締役会設置会社である。Y1社の定款には、「代表取締役は取締役会の決議によって定めるものとするが、必要に応じ株主総会の決議によって定めることができる」旨の定め(本件定め)があった。平成27年9月に開催されたY1社の株主総会において、Y2を取締役に選任する旨の決議、およびY2を代表取締役に選定する旨の決議がなされた。Y1社の代表取締役であったXは、これらの決議が無効であるなどと主張して、Yらに対し、Y2の取締役兼代表取締役の職務執行停止および職務代行者選任の仮処分命令の申立てをした。

 

(判旨)

判例は、(ア)取締役会を置くことを当然に義務付けられているものではない非公開会社会社法327条1項1号参照)が、その判断に基づき取締役会を置いた場合、株主総会は、会社法に規定する事項および定款で定めた事項に限り決議をすることができることとなるが(同295条2項)、会社法において、この定款で定める事項の内容を制限する明文の規定はないこと、

および(イ)会社法は取締役会をもって代表取締役の職務執行を監督する機関と位置付けていると解されるが、取締役会設置会社である非公開会社において、取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができることとしても、代表取締役の選定および解職に関する取締役会の権限(同362条2項3号)が否定されるものではなく、取締役会の監督権限の実効性を失わせるとはいえないことを理由に、

取締役会設置会社である非公開会社における、取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めは有効である」と判示した。

(解説)

 本判例は、あくまで、非公開会社において、取締役会の代表取締役選定・解職権を排除せずに株主総会にも代表取締役の選定権を付与する定款の定めを有効としたものである。

したがって、その射程については、大きく3つの問題がある。

第1に、公開会社においても本件定めが有効とされるか否かが問題となる。

これについては、本判例の挙げる2つの理由は公開会社にも当てはまることから、公開会社においても本件定めは有効であるとみる見解(前田雅弘・弥永真生など)と、本判例は、取締役会の設置が強制されていない非公開会社の事例であるがゆえに、広い定款自治を認めたのであって、公開会社には直ちに妥当しないとする見解(松井智予・大杉謙一など)がある。

第2に、株主総会代表取締役の選定権限のみならず解職権限も付与する定款の定めが有効とされるかが問題となる。

これについては、本判決の挙げる2つの理由は代表取締役の解職にも当てはまるため、そのような定款の定めは有効であると考えられる。

第3に、取締役会の代表取締役選定・解職権限の全部または一部を否定したうえで、株主総会に当該権限を与える旨の定款の定めが有効とされるか否かが問題となる。

これについては、本決定が取締役会の監督権限を重視しているとみて、本決定の考え方によればこのような定款の定めの効力は否定されると考える見解(大杉など)がある一方で、この場合でも取締役会は株主総会を招集して代表取締役の選定・解職に関する議案を提出することができるなど、監督権限を完全に喪失するわけではなく、株主がそのような定款の定めを望む場合に定款自治を否定する必要はないなどとして、当該定款の定めを有効と解する見解(前田など)もある。

これら3つの問題はそれぞれ独立しており、組み合わせることで様々なパターンを考えることができる。本判例は、そのうちの一つのパターンについて判示したにすぎない。他のパターンについて最高裁の立場は明確に示されているわけではなく、今後の議論に委ねられているとみるべきである(調査官解説)。

 

 (本判例のおすすめ評釈)

松本展幸・ジュリ1521号(2018)106頁(調査官解説)

前田雅弘・ジュリ臨増 1518号104頁(平29年重要判例解説)

松井智予・論究ジュリ 23号158頁 

大杉謙一・リマークス 56号90頁

松中学・民商 153巻6号1002頁

 

今回の記事は以上です。

少しでもみなさんの参考になれば幸いです!!

それではまた!!!

 

   

 

本ブログの人気記事です 

kaishahou.hatenablog.jp

kaishahou.hatenablog.jp

kaishahou.hatenablog.jp

kaishahou.hatenablog.jp

kaishahou.hatenablog.jp

 

連載第1~3回で解説した判例はこちらです↓

kaishahou.hatenablog.jp

kaishahou.hatenablog.jp

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

令和元年会社法改正に関する知識をアップデートしたい方にはこちらがおすすめです↓