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判例解説・最決平成29年8月30日(特別支配株主の株式売渡請求にて売買価格決定申立てができる株主の範囲)

 

こんにちは、コポローです。

「最近の会社法関係の重要判例について、学習者向けに要点を分かりやすく解説する」記事を連載しています。

最近の予備試験や司法試験では、裁判例を題材(元ネタ)の一部とした出題が散見されます。

そこで、重要判例解説や商事法務掲載の解説などを参考に、各種試験との関係で重要な裁判例をピックアップし、要点を分かりやすく解説していきたいと思います。

「最近の判例」の基準としては、会社法判例百選第3版に掲載されていない判例を念頭においています。

   

 

第5回となる今回の判例は、最決平成29年8月30日民集71巻6号1000頁特別支配株主による株式売渡請求がなされた場合に売買価格の決定の申立てをすることができる株主の範囲が問題となった事例)です。

平成26年会社法改正で導入された「特別支配株主の株式売渡請求制度」に関する初めての最高裁判例であり、試験対策の観点からも重要です(司法試験や予備試験では、平成26年会社法改正に関する出題がありそうです)。

 

(事案の概要)

 Zは振替株式を発行している株式会社Aの株式を公開買付けにより取得して会社法179条1項の特別支配株主となり、平成27年12月、Aに対して、同項の規定による株式売渡請求をしようとする旨および会社法179条の2第1項各号に掲げる事項を通知した。Aは、当該通知に係る株式売渡請求を承認し、会社法179条の4第1項1号および社債、株式等の振替に関する法律161条2項に基づき、当該承認をした旨、および対価の額等の会社法179条の4第1項1号に掲げる事項について公告した。Xは、当該公告後に譲り受けたAの売渡株式3000株について、会社法179条の8第1項に基づく売買価格の決定の申立てを行った。

 

(判旨)

判例は、以下のように述べて、Xは売買価格決定の申立てをすることができないとした。

「特別支配株主の株式売渡請求は、その株式売渡請求に係る株式を発行している対象会社が、株主総会の決議を経ることなく、これを承認し、その旨及び対価の額等を売渡株主に対し通知し又は公告すること(〔会社〕法179条の4第1項1号、社債、株式等の振替に関する法律161条2項)により、個々の売渡株主の承諾を要しないで法律上当然に、特別支配株主と売渡株主との間に売渡株式についての売買契約が成立したのと同様の法律関係が生ずることになり(法179条の4第3項)、特別支配株主が株式売渡請求において定めた取得日に売渡株式の全部を取得するものである(法179条の9第1項)。法179条の8第1項が売買価格決定の申立ての制度を設けた趣旨は、上記の通知又は公告により、その時点における対象会社の株主が、その意思にかかわらず定められた対価の額で株式を売り渡すことになることから、そのような株主であって上記の対価の額に不服がある者に対し適正な対価を得る機会を与えることにあると解されるのであり、上記の通知又は公告により株式を売り渡すことになることが確定した後に売渡株式を譲り受けた者は、同項による保護の対象として想定されていないと解するのが相当である」 

 

(解説)

 最高裁は、会社法の規定ぶりから売買価格決定申立制度の趣旨を導いており、実質的な考慮については特に明示していないが、その背後には、「通知や公告によって株式売渡請求の事実や具体的な対価等が対外的にも明らかになった後にあえて売渡株式を譲り受けた者に、当該対価の額に関して不服をいう機会を与える必要性は乏しい」との考慮があると考えられる(調査官解説)

しかし、このような考慮をするにしても、通知または公告後に売渡請求が行われていることを知らずに株式を譲り受けた者についてまで、申立適格を否定する必要はないのではないかとの疑問がある(田中亘)。

また、売買価格決定の申立てには特別支配株主が不当な対価で株式を取得することを抑止する機能があり、本判例のように申立てのできる売渡株主の範囲を限定することは当該抑止機能を弱めることになる点で問題となりうる(田中亘)。

おそらく、本判例はこうした抑止機能を重視しないのであろうが、そもそも本判例が実質的・政策的考慮を明示せずに、売買価格決定申立制度の趣旨を断定した点には批判が強い(田中亘)。

また、本判例の射程についても検討の必要がある。相続などの一般承継の場合には本判例の射程は及ばないとの見解があるほか、通知または公告の時点での株主がその後に買い増した株式について売買価格決定の申立てをすることに関して、本判例を妥当させて申立適格を否定してよいかについては疑問も呈されている(松尾健一)。

さらに、他の手法による二段階買収における規律への影響も問題となる。二段階買収における二段階目の取引として利用可能な会社法上の手段は、特別支配株主の株式売渡請求以外にも存在し、そのいずれにおいも売買価格決定の申立てに類似した制度が用意されている(会社法172条、182条の4・182条の5、785条・786条)。本判例の考え方によれば、二段階目の取引にかかる株主総会決議の成立後に対象会社の株式を取得した者は、上記の各制度を利用できないことになろう(加藤貴仁)。

 

 

 (本判例のおすすめ評釈など)

松田敦子・ジュリスト1516号(2018)92頁(調査官解説)

田中亘「商法学における法解釈の方法」民商154巻1号(2018)62頁

加藤貴仁・ジュリスト1518号(2018)103頁

松尾健一・法教447号(2017)149頁(R3予備試験考査委員)

 

 

今回の記事は以上です。

少しでもみなさんの参考になれば幸いです!!

それではまた!!!

 

 

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