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判例解説・東京高決平成29年7月19日(公募による新株発行の不公正発行該当性)

 

こんにちは、コポローです。

「最近の会社法関係の重要判例について、学習者向けに要点を分かりやすく解説する」記事を連載しています。

最近の予備試験や司法試験では、裁判例を題材(元ネタ)の一部とした出題が散見されます。

そこで、重要判例解説や商事法務掲載の解説などを参考に、各種試験との関係で重要な裁判例をピックアップし、要点を分かりやすく解説していきたいと思います。

「最近の判例」の基準としては、会社法判例百選第3版に掲載されていない判例を念頭においています。

   

 

第6回となる今回の判例は、東京高決平成29年7月19日金判1532号57頁公募による新株発行の不公正発行該当性が問題となった事例。出光興産事件)です。

従来、新株発行の不公正発行該当性が争われた事案は、第三者割当増資のケースがほとんどでした。

そうした中、本決定は、公募増資による新株発行にかかる不公正発行該当性について詳細な判断を下した貴重な裁判例です。

 

(事案の概要)

Y社は石油精製および油脂製造業等を目的とする株式会社であり、その発行済株式総数は1億6000万株で、東証第1部に上場されている。Y社の創業家およびその関係者であるX1~X6は、Y社の株式を5427万株余り(持株比率約33.92%)保有している。AらY社の経営陣は同業を営むB社とY社との合併・経営統合を目指していたが、Xらはこれに反対していた。

Y社は、平成29年7月3日、取締役会において、普通株式4800株を公募により発行(本件新株発行)することを決定した。それによる調達資金の使途について、Y社は、関連会社への投融資、Y社の設備投資・研究開発資金のほか、Y社がB社株式の取得を行った際に金融機関から借り入れた短期借入金(本件ブリッジローン契約に基づく借入金)の返済資金の一部に充当するとしていた。本件新株発行においてXらが新たに株式を取得しなければ、Xらの持株比率は約26.09%となる。

Xらは、本件新株発行が不公正発行に当たるとして、本件新株発行の仮差止めを申し立てた。原決定(東京地決平成29年7月18日金判1532号41頁)は、不公正発行該当性の判断基準として、従来の裁判例と同様、いわゆる主要目的ルールを採用したうえで、本件新株発行の主要な目的が、客観的な資金調達の目的ではなく、XらとAらY社経営陣との間の支配権争いにおいてAらを有利な立場に置くとの目的であるとまで断ずるに足りる証拠はないとして、申立てを却下した。これに対してXらが抗告した。

 

(判旨)

東京高裁は、原決定と同様、主要目的ルールを採用したうえで、次のように判示して、抗告を棄却した。

一般論として、(ア)上場企業の公募増資においては、新株の割当先は引受証券会社により決定され、発行会社は割当先を引受証券会社に指示することはできず、日本証券業協会の自主規制により、引受証券会社による割当先への配分については、『公正を旨とし、合理的な理由なく特定の投資家に偏ることのないよう』に行われることが求められているほか、特定の投資家による応募額の上限が定められており、発行会社の意図を汲んだ配分が行われたり、大株主が出現することはないことから、割当先は取締役の意思とは無関係に決定され、割当先が取締役の意向に沿って議決権を行使する保証はないこと

(イ)取締役に反対する株主や第三者も株式の割当を受ける可能性があること

(ウ)取締役に反対する株主が、公募増資後、株式市場に売りに出された株式を取得する可能性も否定できないことからすると、第三者割当増資の場合に比して、取締役に反対する株主らの支配権を減弱させる確実性が弱いものと考えられる。Xらが新株の割当を受けることによって現在の株式比率を維持するのに必要な資金を調達することが現実には困難であるとしても、Xらにおいて本件新株発行に応募したり、Xらと意見を同じくする者らに応募を呼び掛けたりすることが可能であることは否定できない。

 

また……現にXらに同調している株主が相当程度いるのであって、上記(ア)ないし(ウ)の点も併せて考慮すれば、公募により新たに株主となる者においても、そのほとんどがY経営陣の提案に賛成するとは限らないのであるから、第三者割当増資の場合に比してY経営陣に反対する株主らの支配権を減弱させる確実性が弱いといわざるを得ず、そうであるとすれば、AらY経営陣の全部または一部に株主を巻き込んだ相手方の支配権をめぐる実質的な争いにおいて自らを有利な立場に置くとの目的が存在したものと一応認められるとしても、当該目的が新株発行の唯一のまたは主要な目的であるか否かを判断するに当たっては、公募増資の上記のような制約ないし事情を考慮する必要があるというべきである。

 

 

(解説)

本決定は、まず、公募増資による新株発行の場合においても、いわゆる主要目的ルールに基づき不公正発行該当性を判断するとしている。

もっとも、本決定は、公募増資においては、支配権維持・獲得の効果が第三者割当増資に比べて弱いことから、第三者割当増資の場合に比べて、支配権維持目的が主要な目的であると判断されにくいことを示したといえる

とはいえ、公募増資である点は考慮要素の一つにすぎず、公募増資の場合におよそ不公正発行であると判断されないわけではない。とくに主要株主による経営陣の入替えなどが迫っており公募増資について経営陣の利益相反性が高い場合や、経営陣の主張する資金調達計画等が具体性・合理性に乏しい場合には、公募増資の場合でも不公正発行と判断される場合があると解される(高橋陽一)。

本判決には、経営統合の準備行為によって生じた借入金の返済を理由に公募増資を認めてよいかという疑問も指摘されている(高橋)。

 

 

 (本判例のおすすめ評釈など)

杉田貴洋・商事法務2156号9頁

高橋陽一・リマークス リマークス58号86頁

 

今回の記事は以上です。

少しでもみなさんの参考になれば幸いです!!

それではまた!!!

 

 

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