司法試験・予備試験・ロー入試に向けた会社法

司法試験上位合格者が会社法についてわかりやすく解説します

判例解説・大阪高判平成29年4月27日(債権者異議手続における「債権者を害するおそれ」)

こんにちは、コポローです。

「最近の会社法関係の重要判例について、学習者向けに要点を分かりやすく解説する」記事を連載しています。

最近の予備試験や司法試験では、裁判例を題材(元ネタ)の一部とした出題が散見されます。

そこで、重要判例解説や商事法務掲載の解説などを参考に、各種試験との関係で重要な裁判例をピックアップし、要点を分かりやすく解説していきたいと思います。

「最近の判例」の基準としては、会社法判例百選第3版に掲載されていない判例を念頭においています。

   

 

第7回となる今回の判例は、阪高判平成29年4月27日判タ1446号142頁資本金の額の減少が債権者を害するおそれがないとして無効とされなかった事例)です。

 

下級審判例ですが、これまで判例がほとんどなかった問題に関する注目すべき判例で、重要判例解説にも掲載されています(会社法判例百選第4版のAppendixにも掲載されると予想します)。

 

 

(事案の概要)

 Y社は、平成27年6月の定時株主総会において、同年8月14日を効力発生日として、資本金の額を約4億7800万円から2000万円に変更すること(以下「本件資本金額減少」という)を決議した。Y社に対してリース料等約400万円の債権を有するX社は、異議申述期間内に本件資本金額減少に異議を述べたが、Y社は弁済等をせず、本件資本金額減少に基づく変更登記を行った。X社は、Y社に対して、本件資本金額減少の無効等を求めて訴えを提起した。

(問題の所在)

資本金の額の減少に対して債権者が異議を述べた場合、会社は、当該債権者に対して、弁済し、もしくは相当の担保を提供し、または当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない(会社法449条5項)。ただし、当該資本金の額の減少をしても、当該債権者を害するおそれがないときは、この限りではない(同項但書)。本件では、「当該債権者を害するおそれがない」といえるか否かが問題となった。

 

(判旨)

(ⅰ)資本金の額の減少における「債権者を害するおそれ」については、当該資本金の額の減少によって抽象的に将来に向けて剰余金の分配可能性が高まる(会社財産に対する拘束が弱まる)というだけでなく、資本金の額の減少が債権者により具体的な影響を与えるかどうかを検討して判断すべきである

その判断に当たっては、資本金の額の減少の直後に剰余金の配当等が予定されているか否かに加え、当該会社債権者の債権の額、その弁済期、当該会社の行う事業のリスク、従来の資本金および減少する資本金の額等を総合的に勘案し、当該会社債権者に対して不当に付加的なリスクを負わせることがないかという観点から行うべきである。

(ⅱ)確かに、本件においては、Y社の会社財産の分配が直ちに可能となるわけではないとしても、資本金の額が約4億7800万円であったものを、突然2000万円に減少されてしまっては、物的会社である株式会社に対する信用は著しく低下せざるを得ない。このような場合、例えば、会社の規模(資本金の額)を信用して、多額の債権を長期で貸し付けている会社債権者にとっては「債権者を害するおそれ」があるといえる場合もあり得る。しかし、本件においては、X社のY社に対する債権額は400万円程度であり、その請求を認容する原判決には仮執行宣言が付されていて、いつでも強制執行が可能な状態となっている上、Y社は、当審において上記債権を争っていないから、将来におけるY社のリスクを考慮する必要はないといえる

したがって、X社については、本件資本金額減少が現時点においてX社を害するおそれがあるかどうかという観点から検討すれば足り、少なくとも現時点においては、本件資本金額減少によりY社の会社財産が減少することはないのであるから、X社を害するおそれはないというべきである。

 

 

 

(解説)

 

 本判決は、資本金の額の減少に際しての「債権者を害するおそれ」の有無に関して公刊裁判例として初めて判断を下したものであり、重要な意義を有する。

学説では、資本金の額の減少による「債権者を害するおそれ」の有無は債権の額や弁済期等を考慮して判断すべきであるとされており(江頭憲治郎『株式会社法(第7版)』706頁注5)、会社の資産状態がよく、かつ債権の期限が短いときなどは、債権者を害するおそれはないと解されている。また、剰余金の配当等が予定されているか否かも考慮すべき要素であると指摘されている(新基本法コンメ(2)第2版437頁(岸田))。

本判決は、こうした学説に沿ったものといえる。 

本判決の解釈方法(個別の債権者に対する具体的な影響を検討するという方法)は、組織再編などでの債権者異議手続における「債権者を害するおそれ」の解釈にも妥当すると考えられる。

 

 (本判例のおすすめ評釈など)

 

弥永真生・ジュリスト1522号(2018)2頁

柳 明昌・ジュリスト1531号(平成30年度重要判例解説)商法9

 

今回の記事は以上です。

少しでもみなさんの参考になれば幸いです!!

それではまた!!!

 <   /p>

 

本ブログの人気記事です 

kaishahou.hatenablog.jp

kaishahou.hatenablog.jp

kaishahou.hatenablog.jp

kaishahou.hatenablog.jp

kaishahou.hatenablog.jp

 

連載の過去回で解説した判例はこちらです↓

kaishahou.hatenablog.jp

kaishahou.hatenablog.jp

kaishahou.hatenablog.jp

 

kaishahou.hatenablog.jp

 

kaishahou.hatenablog.jp

kaishahou.hatenablog.jp

 

 

令和元年会社法改正に関する知識をアップデートしたい方にはこちらがおすすめです↓