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判例解説・大阪高判平成29年12月21日(設立時における他人名義による株式の引受け)

こんにちは、コポローです。

「最近の会社法関係の重要判例について、学習者向けに要点を分かりやすく解説する」記事を連載しています。

最近の予備試験や司法試験では、裁判例を題材(元ネタ)の一部とした出題が散見されます。

そこで、重要判例解説や商事法務掲載の解説などを参考に、各種試験との関係で重要な裁判例をピックアップし、要点を分かりやすく解説していきたいと思います。

「最近の判例」の基準としては、会社法判例百選第3版に掲載されていない判例を念頭においています。

   

 

第8回となる今回の判例は、阪高判平成29年12月21日金判1549号42頁阪高判平成29年4月27日判タ1446号142頁特例有限会社の設立に際して他人の承諾のもとその名義を用いて出資払込がなされた場合における社員権の所在が問題となった事例)です。

 

下級審判例ですが、従来の通説と異なる判示をした注目すべき判例で、重要判例解説にも掲載されています。

特例有限会社に関する判例ですが、通常の株式会社にも本判決と同様の考え方は及ぶと解されています。

 

(事案の概要)

新たに有限会社の設立を検討していたAは、知人Yに対して新会社の代表者にならないかと誘い、Yは代表者取締役に就任することを承諾した。Aが整えた原始定款にはYが社員である旨が記載され、Yはこれに押印した。Aは出資金である300万円(本件300万円)を払い込み、平成14年5月、新会社(本件会社)が設立された。本件会社は特例有限会社であり、発行済株式総数は60株(本件株式)である。Yは本件会社の設立以降、代表者取締役または代表者代表取締役を務めてきた。XはAの息子であり、本件会社の設立手続には関与していない。

その後、YとAとの関係が悪化し、Aの体調も悪化したことから、XがYとの交渉を行うようになった。その過程でXは本件株式の所有を主張し、Yはこれを自らの所有であると主張した。平成28年4月にAが死亡し、XはYおよび本件会社に対し、Xが本件会社の株式60株を有する株主であることの確認を求める本件訴訟を提起した。本件訴訟において、Xは、本件300万円はAからXに贈与された上で本件会社に出資されたのであって、本件会社の株主は設立時からXであると主張し、他方、Yは、本件300万円はYがAから借り入れて本件会社に出資したのであって本件会社の株主はYであると主張している。原判決はXの請求を認容したところ、Yが控訴した。

 

 

(判旨)

 

 控訴審は、まず、「他人の承諾のもとにその名義を用いて出資払込みをした場合には名義貸与人ではなく実質上の出資払込人が出資払込人としての権利を得、義務を負い社員となるものと解すべきである」と判示した。

その上で、本件事案については、「XがYの承諾のもとにその名義を用いて出資払込みをした事実は認められない。Aにおいて、Yの名義を借りた事実はあるとしても、Xとは別人格であることはいうまでもなく、証拠上YがXに名義を貸していると認識していたとも認められない。AがYからXのために名義の貸与を受け、AがXに出資金を贈与したことも、Xに代わり本件300万円を払い込んだことも認め難い」と認定して、原判決を取り消し、Xの請求を棄却した。

※なお、本判決は、「本訴においては、Xが、Yから名義の貸与を受け、かつ、Xが出資金の贈与を受けて本件300万円を払い込んだといえることについての立証責任を負っているのであるから、上記貸付け〔Yが主張するAからYに対する300万円の貸付け〕についての立証が不十分であることは上記判断を左右するものではない」と判示しており、Yの主張を積極的に認めたわけではない。

 

 

(解説)

 

他人の承諾を得た上で他人名義を用いて引受け・払込みがなされた場合に、誰が株主・社員となるかという問題については、名義人であるとする形式説と、実質上の引受人・払込人であるとする実質説がある。新株や設立時募集株式の引受けの場面について、判例最判昭和42年11月17日民集21巻9号2448頁〔百選3版9事件〕)・通説(神作裕之・百選3版9事件解説、江頭憲治郎『株式会社法〔第7版〕』(有斐閣、2017)96頁注5など)は実質説を採用している

これに対し、株式会社の設立に際して発起人が株式の引受けをする場面や、有限会社の設立に際して原始社員が払込みをする場面については、原始定款への署名(記名押印)で発起人・社員が確定するのみならず、その出資義務も確定するとして、形式説を採用する裁判例や学説が有力であった(江頭・前掲65頁注2。高松高判平成8年5月30日判時1587号142頁、福岡高宮崎支判昭和60年10月31日判タ591号73頁、上柳克郎ほか編『新版注釈会社法(14)』(有斐閣、1990)38頁〔中西正明〕)。

こうした中、本判決は有限会社の設立に際して原始社員が払込みをする場面においても、実質説を採用した点で注目される。本判決と同様の考え方をするのであれば、株式会社の設立に際して発起人が株式の引受けをする場面においても、実質説を採用することになろう。

この場合、発起人は定款への署名で定まると解するのであれば、発起人と引受人とが別人となる可能性を認めることになる(松元暢子「本件判批」ジュリスト1531号(平成30年度重要判例解説)92頁は、この場合、発起人が一株も引き受けなくても、実質的な引受人が引受けを行っていることから、設立を無効とする必要はないと述べる)。

実質説を採用した場合には、誰が実質上の引受人・払込人であるかを判断する必要がある。その際、出捐者は一つの重要な考慮要素となる

判例の中には、同族経営の会社で名義人が事業の後継者として経営に携わっていた事案において、払込みを行った者が名義人に代わって払込義務を履行したと認定して、名義人を実質上の引受人としたものもあるが(神作裕之・百選3版9事件解説参照)、本件では、そのような事情はなく、Xを実質上の払込人でないとしたことは妥当であろう(松元)。

 

 (本判例のおすすめ評釈など)

 松元暢子「本件判批」ジュリスト1531号(平成30年度重要判例解説)92頁

 

 

 なお、本判決後の類似の判例として、東京高判令和元年11月20日金判1584号26頁がある(令和2年度重要判例解説掲載〔松尾健一教授(R3年度予備試験考査委員)による解説も参照〕)。

 

今回の記事は以上です。

少しでもみなさんの参考になれば幸いです!!

それではまた!!!

  

 

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