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判例解説・最判令和2年9月3日(株主総会の瑕疵連鎖と決議取消訴訟の訴えの利益)

こんにちは、コポローです。

「最近の会社法関係の重要判例について、学習者向けに要点を分かりやすく解説する」記事を連載しています。

最近の予備試験や司法試験では、裁判例を題材(元ネタ)の一部とした出題が散見されます。

そこで、重要判例解説や商事法務掲載の解説などを参考に、各種試験との関係で重要な裁判例をピックアップし、要点を分かりやすく解説していきたいと思います。

「最近の判例」の基準としては、会社法判例百選第3版に掲載されていない判例を念頭においています。

   

 

第9回となる今回の判例は、最判令和2年9月3日民集74巻6号1557頁株主総会の瑕疵連鎖と決議取消訴訟の訴えの利益に関する重要な最高裁判例)です。

 

中小企業等協同組合に関する判例ですが、会社法831条が準用されており、株式会社にも本判決と同様の考え方は及ぶと解されています

 

(事案の概要)

中小企業等協同組合法に基づき設立された事業協同組合であるY組合は、平成28年5月、通常総会を開催し、理事を選出する選挙(以下「本件選挙1」という)および監事を選出する選挙(以下「本件選挙2」という)を行った。

Yの組合員であるXは、同年8月、これらの選挙が定款の定める総会の定足数要件を満たさずに行われたものであるとして、同法54条が準用する会社法831条1項1号に基づき、各取消しを求めた(以下「本件各取消請求」という)。

その後、本件選挙1で選出された理事によって構成された理事会による招集決定に基づき、同理事会で選出された代表理である理事長が招集して、平成30年5月にY組合の通常総会が開催された。当該総会では、本件選挙1および2で選出された理事および監事全員が任期満了により退任したとして、理事を選出する選挙(以下「本件選挙3」という)および監事を選出する選挙(以下「本件選挙4」という)が行われた。

Xは、本件選挙1が取り消されるべきものであることを理由として、本件選挙3および4の各不存在確認請求を追加した。原審は、本件各取消請求に係る訴えの利益が消滅したとして、訴えを却下した。Xが上告受理申立てをした。

 

 

(判旨)原判決破棄・差戻し

 「事業協同組合の理事を選出する選挙の取消しを求める訴えの係属中に、後行の選挙が行われ、新たに理事又は監事が選出された場合であっても、理事を選出する先行の選挙を取り消す旨の判決が確定したときは、先行の選挙は初めから無効であったものとみなされるのであるから、その選挙で選出された理事によって構成される理事会がした招集決定に基づき同理事会で選出された代表理事が招集した総会において行われた新たに理事又は監事を選出する後行の選挙は、いわゆる全員出席総会においてされたなどの特段の事情がない限り、瑕疵があるものといわざるを得ない(最判平成2年4月17日民集44巻3号526頁、最判平成11年3月25日民集53巻3号580頁参照)。そして、上記の取消しを求める訴えのような形成の訴えは、訴え提起後の事情の変化により取消しを求める実益がなくなって訴えの利益が消滅する場合があるものの、上記の取消しを求める訴えと併合された訴えにおいて、後行の選挙について上記の瑕疵が主張されている場合には、理事を選出する先行の選挙が取り消されるべきものであるか否かが後行の選挙の効力の先決問題となり、その判断をすることが不可欠であって、先行の選挙の取消しを求める実益があるというべきである。

「そうすると、事業協同組合の理事を選出する選挙の取消しを求める訴えに、同選挙が取り消されるべきものであることを理由として後任理事又は監事を選出する後行の選挙の効力を争う訴えが併合されている場合には、上記特段の事情がない限り、先行の選挙の取消しを求める訴えの利益は消滅しないものと解するのが相当である。」

   

 

(解説)

本判決との整合性が問題となる判例として、最判昭和45年4月2日民集24巻4号223頁がある。

最判昭和45年は、「役員選任の総会決議取消の訴が係属中、その決議に基づいて選任された取締役ら役員がすべて任期満了により退任し、その後の株主総会の決議によって取締役ら役員が新たに選任され、その結果、取消を求める選任決議に基づく取締役ら役員がもはや現存しなくなったときは、……特別の事情のないかぎり、決議取消の訴は実益なきに帰し、訴の利益を欠くに至る」と判示していた。

最判昭和45年と本判決の相違点として、本判決の事案は、先行決議の取消しの訴えと後行決議の不存在確認の訴えとが併合されており、先行決議の効力が後行決議の効力の先決問題となっている点に特徴がある。その意味で、本判決では最判昭和45年のいう「特別の事情」があるものと整理することができよう(松井・後掲79頁)。

 

本判決の引用する最判平成11年は、取締役選任に係る先行決議について決議不存在確認の訴えが提起され、これに後行決議の決議不存在確認の訴えが併合されている場合に、先行決議の決議不存在確認の訴えに係る訴えの利益を認めたものである。

その前提には、本判決の引用する前掲最判平成2年が示した瑕疵連鎖の考え方(取締役選任に係る先行決議の瑕疵が、適法な取締役会の構成および代表取締役の選定を妨げる結果、後行決議も当然に瑕疵を帯びるという考え方)がある。

 

先行決議に決議取消事由があるにとどまる場合にも、瑕疵連鎖の考え方が妥当するかについては学説上議論があったところ、本判決は、取締役選任に係る先行決議について決議取消しの訴えが提起されている場合においても、瑕疵連鎖の考え方とそれを前提とする前掲最判平成11年の法理が妥当することを示した最初の最高裁判例として重要である。

 

残された問題として、後行決議の決議不存在確認の訴えが併合されていない場合にも、先行決議の取消しの訴えや不存在確認の訴えに係る訴えの利益が認められるか、という問題がある。

学説では、これを肯定するものが有力であり(田中亘『会社法・第3版』211頁)、最近の下級審裁判例(金沢地判平成31年2月19日2019WLJPCA02196007)にも肯定例がある。

 

 (本判例のおすすめ評釈)

 松井秀征「本件判批」ジュリスト1557号(令和2年度重要判例解説・商法5)78頁

 

今回の記事は以上です。

少しでもみなさんの参考になれば幸いです!!

それではまた!!!

  

 

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